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ズッペ

■人からの視線を内面化せずに、かつそれはそれとして受け入れつつ自分の立ち位置を確立するのは至難の技だ。かつ消えかつ結びて浮かぶ泡沫の自意識が羞恥心となって私から冷静さを失わせる。一発当てた後の次のもう一発が本当の勝負所なのだ。他人からの期待に応えようとしないことだ。

 今日は妻が体調を崩しており風邪気味だったので、栄養満点の晩御飯を作ったろうとあれこれやっていたら段々取り返しがつかなくなり正体不明の闇のズッペが出来上がってしまった。大体僕の料理はレシピ化不能の場当たり調理なので、まぁ最悪しょっぱ過ぎない程度に塩コショウふっとけば米食う分には困らないでしょうというスタンスでやらせてもらっている。ところで今日のトマトスープにはそれはもう色々なものを入れた。主な具材としては鶏胸1kgになす、人参、ネギ、舞茸である。最初は無水調理でやろうと思っていたのだが、思ってたよりナスから水が出てこなかったようでこのままだと火が通る前に焦げてしまうと思ったので作戦変更し、様子を見つつ少しずつ水を足していき全体に蒸気が回って野菜がややしんなりしてきたところでトマト缶×2を投入。当然全体の分量が増えるので火力を上げようと思ったが、水分量が足りずにまだ焦げそうな感じがしたので様子を見つつさらに水を増やす。この辺りで「まぁグツグツやって煮詰めるくらいがちょうどいいか」と思い始め、となると今度は味の調整が大事になってくるので、とりあえず一口味見。味が薄い。薄いというか、ストレートにトマトの味しかしない。姫は喉を痛そうにしておられたのでトマトの酸味がキツいとよろしくないかと思ったので少し牛乳で伸ばした。それから使いかけのAJINOMOTO コンソメをひとかけら投入。別皿で少しずつ伸ばしながら混ぜていく。コンソメを投入し終わり、味見。変化なし。次に、風邪引き用のスープなので当然生姜を大量に投入しなければならない。なので、これも別皿で伸ばしながら全体に味ムラのないように混ぜていく。味ムラといえば、料理は味ムラが醍醐味という勢力が存在しているのは知っている。例えばカレーライスやパスタなど。「金太郎飴を食べさせられてるみたいでつまらない」というのが彼らの主張の要旨なのだが、それとこれとは全然別物じゃないか?と僕は思う。個人の感想です。そうこうしている間に大体チューブ半分量の生姜が投入された。うまいが、生姜が浮き過ぎている。これをなじませなければならない。かなり考えたが、1分後、そこには「賭けだな…」とつぶやきながら鰹粉をわさわさとふりかける男の姿があった。味見をする。意外と悪くない。ちなみに鶏胸肉にはそこそこの量のクレイジーソルトが振り掛けてあったがこの時点では何も感じられなかった。迷ったが、醤油を投入。なんか味が薄くなった気がする。ついでにソースも投入。…いや、悪くないんじゃないか?最後にもう一度クレイジーソルトとコショウ、オリーブオイル、そして食べる直前にオレガノを振り完成。ジャガイモが溶けたようなとろみが欲しかったのだがジャガイモの用意がなく、ただあれこれしている間になぜかとろみがついたので良しとしたい。味は不思議と悪くなかった。というか、どちらかというとうまかった。家で食べるご飯は、味付けは濃過ぎないくらいがちょうどよく美味しく感じるのだ。酒ありきの味付けとは違う。そういえば昔、「俺、創作料理って嫌いなんだよね」という料理人の知り合いがいたが、君の大好きな伝統的レシピもきっと誰かの創作の積み重ねでできあがったものなんじゃあないかな。僕はこれからもどんどん創作で料理をするつもりだ。失敗は成功の母だから。

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