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フォント「海と山のろごごち」を作ってみた

こんにちは、Typingart & Co. の中井といいます。普段は電車の運転と事務方の作業をして、たまにフォントの制作をしています。

2021年1月に和文フォント「海と山のろごごち」をリリースしました。以前作った「森と湖の丸明朝」と同じく、制作過程を少し書いてみようと思います。

気軽に使って欲しい―コンセプトを考える

Typingart & Co. は本文用ではなく、ちょっとしたコピーやフレーズ、ロゴタイプに使って欲しいフォントを作っています。プロデザイナー向けというよりは、個人で気軽に使って欲しいフォントを作っているインディーズメーカーです。

気軽さの背景には可愛さが大きく影響するんじゃないか、興味の入り口なんじゃないかと思っていまして、それをフォントにどうやって落とし込めばいいか、日々ぼんやり考えています。「海と山のろごごち」も可愛いをベースに、フォントとしての汎用性と普遍性を持たせたいと考えていました。まずは気軽にフォントを使ってもらって、そこからタイピングしている人の自己が投影され、それぞれの物語や想いが構成されると嬉しいなと考えています。

可愛いというのは分かりやすいようで、人それぞれだし、制作側としては実体がなくすごく難しい感覚です。手探りでワードを出し、組み合わせていきます。頭が大きくてアンバランス、ベタ率高めの太い曲線、とめ・はね・はらいが途中で切れていて未完成、要素の一部が省略されていてあどけない…いろいろ出して、字形にしてみます。まずはひらがなの「あ、お、ぬ、め」。

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なんかいい感じ。ロゴタイプに使えそうです。ここで「ロゴタイプ用の可愛いフォント」と着地点を定めました。

漢字をつくる―作字をしてみた

ひらがなとカタカナの雰囲気は決まったんですが、漢字に悩みました。紆余曲折して、ひそかに再ブームとなっている作字に活路を見出します。

さく‐じ【作字】
[名](スル)印刷で、必要とする活字がないときに、既存の活字の部分を合成したり削ったりして新しい活字を作ること。 また、その作った活字。 パソコンなどで、内蔵・登録されていない字体を作ることにもいう。(デジタル大辞泉より)

作字については素人ですが、鉄道運転士の経験を活かし、鉄道用語に当てはめて何個か作ってみました。

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「出発進行」

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「抑止」「線路沿いのパン屋の匂いを入れたくて窓全開」「仮眠3h」

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作字は Instagram @作字鉄道 にアップされています。

漢字を構成する要素を少し抜いて、視覚で補完する作字。稚拙で少しあどけない感じを演出しているので、この雰囲気をフォントに入れてみました。先に作っているひらがなに合わせ、模索を重ねた「都、雲、風、群」。

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いい感じ。

ひたすら作る―

ひらがなとカタカナ、それと教育漢字1,026字を仕事終わりにコツコツと作りました。最初に作った漢字と終わりの方では文字要素にばらつきが出てしまうので、全体を眺めながら調整を重ねて、できました。

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いい感じ。

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そして、ロゴタイプで使用した見本です。いかがでしょうか。ロゴタイプみたいな作字風のゴシック体。略して「ろごごち」。フリー版もご用意していますので、どうぞお試しください。


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