アングリマーラ街コンへ行く

2018年夏。小さな偶然が重なって私は街コンにいた。

偶然その1
30代にして婚約破棄を喰らった私(詳細割愛)が10ヶ月の間毎日泣いて泣いてやっと涙が止まったのが2018年夏だった。
涙が止まった理由は特にないけれど、多分枯れ果てたんだろう。そろそろ前を向いてもいいのかなと思い始めた。

偶然その2
そんな前を向き始めた頃、
「結婚なんて興味ない。」と長年豪語していた友人が「明日街コンに行く。」と言う。
話を聞くと彼女の高校時代の同級生が
そろそろ同棲を始める、しかしその前に本当にこの人でいいのか確かめるために、他の人をみてみたいと言い出し、周りに既婚者が多くなり”合コン”も組める人がいなくなった昨今、じゃあ”街コン”に行こう。で、多分ピンとこないから、そうしたら彼を大事に大事にずっと幸せに暮せば良い。で、ついでに私も恋愛出来たらいいかもって。ということらしい。
それが正解の行動かどうかはわからないけれど(ピンときちゃったらどうするんだろう?笑)、それでも動かざること山の如し、恋愛無精の彼女が動いたのが私にとって衝撃だった。

偶然その3
映画が趣味の私、リアルで映画について語れる友人がいなかったため、数年前から始めた映画を語るためだけのTwitterアカウントを作った所、そこで同じ年のとても気の合う友達が出来た。
基本的に学校や職場など限られた環境で、限られた友人としか付き合ってこなかった私にとって、誰かとネットで出会って実際に会って仲良くなるなんて思いもよらなかったけれど、
彼女とは昨日観た映画の話から、そこから派生した社会問題の話まで、何時間も語り合える。
意見が違う事も言えるし、お互いを尊重して話し合える。そんな貴重な人だ。
街コンに行ってみようかなと興味が出た時、どうせ街コンに行くなら「映画好き限定街コン」に行ってみたいなと思った。
リアルの友人は「趣味限定コンは気が引ける」と言うので、迷うことなく彼女に「映画街コンに一緒に行かないか」と打診した。
彼女は快く賛同してくれて、冒頭の街コンへと向かう。

初めての街コン。私はどの殿方とデートしてやろうかと狩人の目つきで意気込んでいた。

というのも、今度街コン行くんだ!と意気揚々と婚活フロンティアの友人たちに報告すると。
「100人と会って1人にピンと来れば良い方」
「私は100人会ってもまだピンと来ない」
「ピンと来ても相手は私にピンと来ない」
(「うーん。モンスター・ホテルでいうところのZing!ね。」と言っても無視されるけどそれはまた別の話。モンスター・ホテル観て。面白いよ。)

とのこと。
ふむ。ではとりあえず100人と出会う事を目標としよう。

100人、100人。ただ漫然と数を数えてもつまらないので、
”アングリマーラの小指狩りプロジェクト”と銘打ち、これから出会い、デートした人の小指の写真を撮らせてもらい、釈迦(私を導く人)に出会ったらこの小指狩りをやめようと決めた。
※アングリマーラとは師匠の怒りを買い、100人(1000人説もあるらしい)を殺し小指を切るように術をかけられた僧侶。99人の小指を集め、さあ100人目のターゲットはお前だ!と目を付けたのが釈迦だった。どうしても釈迦の指を切ることが出来ずそのまま弟子入りしたという逸話がある。

いざ!!回転寿司方式の街コンはスタート。
胸に番号をつけて、お話して、LINEを交換して、次の方とお話。というやつ。
挨拶して、好きな映画の話をして、好きなジャンル、苦手なジャンルを話して、好きな映画の座席配置の話をして、好きなシアターのスクリーンサイズプレゼンをして、大手シネコンどこがお得かポイントカード比べをして……あれ?これただのオフ会やん!?と気づいた。
恋愛しに来たっていうか男女に分かれて趣味の話しにきたオタク会やん?!ひゃだもう会話弾む弾む!
皆(オタク)が話したいことを話尽くしてふうっと息を吐いた頃、会は終わりに近づいた。
司会の方が「全員とお話出来ましたかね?それでは気になった方の番号をスマホで投票して下さい!」と言う。

そこで気づく。皆同じ気持ちだったと思う。
(映画オタクあるある話すことに夢中で誰の番号も控えてね~~~)

慌てて交換したLINEをざざざーっとみてみる。
よろしくね!とかありがとう!の一言やスタンプが並んでいる。連絡先を交換した時は一言送るのが慣例?のようだ。
(誰が誰だかわかんね~~~~~)

そんな中1人だけ
「○○番 コウジ(仮)」とだけメッセージを送ってくれていた人がいた。

お、この人頭いいな。と思った。
この場所のルールを把握していて、必要最低限のコミュニケーションで解を導いてくれる。(あとからUIデザイナーだと聞いて納得)

超スマート!この人だな!と思い投票。
相手からもお誘いを頂き、とんとんとんっとご飯へ行くことに。

美味しいイタリアンで美味しいワインを飲みながら、アングリマーラの小指狩りの話をして、小指の写真を撮らせてと言おうと思ったけれど、小指狩りの話だけして、写真は撮らなかった。
彼が私の釈迦であるとZing!したからだ。(モンスター・ホテル観てよ。子供向けだと思わずさ、おすすめだよ)

とんとんとんっと事が進み
その彼が今の夫である。

こうしてアングリマーラの小指狩りプロジェクトは発足のみで幕を閉じたのであった。
もし婚活を始める人がいたらぜひこのプロジェクトのスピリットを受け継いで貰いたい。(うそ)

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