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フリーライターはビジネス書を読まない(62)

ライターの仕事ではありません

〔2回ほど行った風俗店の子が好きになりました。必ず口説ける方法を知りませんか〕

田山から届いたメールに全身の力が抜けて、大きなため息が出た。
知らんがな……。

必ず口説ける方法があったら、すでに誰もが知ってるはずだし、失敗する人もいないでしょう。
あなたが頑張るしかないですよ。

さて、分かってくれるかな。

今度は30分で返信がきた。
〔報酬を払います。教えてほしい〕

いや、そういう問題ではなくて。
〔いくらですか〕

必死やな(笑)
本人は真剣だから笑ってはいけないけど、聞けば田山は44歳、相手の風俗嬢は21歳。嬢からすれば、いいお客さんだと思った。

申し訳ないけど、仕事として受けられません。ライターの仕事ではありません。
〔なんとか頑張る〕

まだいうか。
本人が頑張るといってる以上、どうぞご自由にとしかいいようがない。

田山と不毛なやり取りをする傍らで、自分の仕事も進めていた。戦争体験のリライトが佳境を迎えていた。
過去にも何件か、実際に戦場で戦った人の体験記を手掛ける中で、ひとつの傾向があることが分かってきた。

南方へ行った人には、飢えと病気がとにかく辛くて悲惨で、もう懲り懲りだという話が多い。それに対して、大陸へ行った人の話に悲惨さは無いとはいわないまでも南方ほど深刻ではなく、懐かしんでいる様子さえ伺えることだ。赴任した地域の特性とか気候風土の差によるのだろうと思うが、興味深い傾向だと思った。

数日後、また田山からメールが届いた。
〔お店の子が辞めていた。どこへ行ったんだろう。探す方法しりませんか〕

知らん!
返信しなかった。

同じ日に、もう1通のメールが届いていた。

初恋相手で今は京大の大学院に通う小学校時代の先輩に会うため、わざわざ宮城から京都へやってきた柳本聡美からだった。
いまの夫と離婚して3日後には再び京都に来て、その先輩と一緒になるといっていたが……。

〔離婚はまだですが、京都で暮らすことは許してもらいました。住むところを探さないといけないのですが、関西の情報がまったくなくて……。京都の仲介業者を直接まわりたいので、2~3日だけでいいです、泊めてもらえませんか〕

(つづく)

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ガードマンあるある日記

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