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なので違くないですか

「なので」

「明日は早朝に出発します。なので今夜は早く寝ます」
こんなLINEがきた。

最近よく耳にするいい回しだ。世代や人によっては気にならないかもしれないが、私には違和感がある。

結論からいうと、この「なので」は適切な使い方ではない。少なくともいまの日本語の文法では。

「なので」は「連語」といって、断定の助動詞「だ」の連体形である「な」や形容動詞の連体形活用語尾「な」に、接続助詞の「ので」がついた形。
意味は「~だから」「~であるから」というもので、文が「理由⇒結論」と流れる際に使われる。
たとえば「風邪なので会社を休んだ」「問題が明らかなので解決は早い」というのが本来の使い方とされている。

冒頭の、
「明日は早朝に出発します。なので今夜は早く寝ます」
のように、あたかも接続詞の如く文の頭に「なので」をもってくる使い方は、日本語の文法に照らせば適切ではない。
敢えて「間違い」といわず「適切ではない」という表現をしたのは、言葉は生き物であり、その意味は時代の多数決で決まるからだ。そういう意味で「正しい」というワードも使わない。

では「明日は早朝に出発します。なので今夜は早く寝ます」を、現在の文法で適切ないい回しに換えたらどうなるか。

「明日は早朝に出発するので、今夜は早く寝ます」
または
「明日は早朝に出発しますから、今夜は早く寝ます」

文節を2つに分けたいなら、こんないい回しもできる。

「明日は早朝に出発します。だから今夜は早く寝ます」
「明日は早朝に出発します。ですから今夜は早く寝ます」

「違くて」「違うくて」

これも気になるいい回しだ。最近では若い編集者までが使っていて、これじゃ出版界が衰退するはずだわなと、暗澹たる気分になる。

「違くて」と「違うくて」は発生のメカニズムが違うそうだ。

まずは「違くて」から。
たとえ適切ではない使われ方でもデタラメに発生するわけではなく、あるていど法則性があるらしい。

「違くて」と同じパターンで「違かった」「違くない」も発生したといわれている。つまり「違い」を形容詞と誤解しているのだ。

「違う」は動詞である。

たとえば形容詞の「美しい」は「美しかった」「美しくない」と変化させることができる。だから「違い」を形容詞と間違えて「違かった」「違くない」といういい回しが生まれたのだろう。

「違うくて」はどうだろう。気になるのは「く」である。「違う」という動詞に「く」がついている。「動詞」+「く」という用法は一部の方言にあるそうだが、共通語には存在しない。だから一般的な用法としては、適切ではない。

まとめ

「なので」も「違くて」「違うくて」も、まだまだ違和感は小さくないものの、いずれは受け入れざるを得ないときが来ると思っている。だが現状では「適切ではない」とされている以上「言葉はいきものだ」と開き直っていたら、教養を疑われて損をするのは自分である。
相手や状況に応じて、上手に使い分けるのが賢明だろう。

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