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牡蠣物語(3) アヒージョ編

今日は女子3人で初めてのお店に来た。
ヨウコの結婚が決まったというので、ちょっと奮発してこのオイスターバーを選んだ。
店の奥にある半個室的なテーブル席へと通された。
赤いテーブルクロスが掛けられており、他の席より照明を落としてあるその空間は他の客の目も気にならず、とても快適で煩わしい現実世界を忘れさせてくれるようだ。

ヨウコへのお祝いにシャンパンをオーダーした私たちは、グラスの中ではじける泡のように、お喋りも盛り上がっていた。

高校からの親友のふたり。
「あの頃は見た目重視で男を選んでいたよね」
「今はやさしくてマメな人の方がいいな」
「でも結局は経済力でしょ」
なんて話していると、グツグツと音をたてながらアヒージョが運ばれてきた。
思わずわーっと声をあげると、他のふたりも同じように歓声をあげて、お互いに顔を見合わせて笑った。
美味しそうな物を目の前にするとつい嬉しくなってしまうのは、学校帰りに制服のまま寄り道していたあの頃と何も変わらない。

一緒に運んで来てくれたバゲットの上にアツアツの牡蠣とマッシュルームを乗せる。
メグミが先にかぶりついた。
「あっつーっ」
メグミは口をはふはふさせながら、それでも美味しそうに満足げな笑みを浮かべている。

「本当におめでとう、いい人と出逢えて良かったね」
メグミが涙ぐみながらヨウコを祝福している。
ヨウコもつられて涙ぐむ。
「もう、めでたいんだから泣かないで」
私はハンカチを取り出し、ヨウコに渡す。
するとヨウコはそのハンカチの端をメグミにも持たせて、ふたりで顔を寄せあって涙を拭いている。
そんな様子が尊くて私が笑い始めると、ふたりも一緒に笑い出した。

追加でたのんだバゲットをお店のスタッフが気をきかせて温め直してくれたオリーブオイルに浸して食べる。
ニンニクの風味が口いっぱいに広がる。

氷水で冷やしたシャンパンクーラーからボトルを取り出して、3つのグラスに注ぎ足した。
「次はぜったい私の番だからね」
と言って、ふたりとグラスを合わせる。
心地よい音が響き、また3人で顔を見合わせて微笑んだ。


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