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季節はめぐり、またつくりあげる『日向坂で会いましょう』

今回も『日向坂で会いましょう』おもしろかったですね。

ついにこの時がきた。今回【遅ればせながら上半期の個人的重大ニュースを発表しましょう!2023】企画によってわたしが待ちわびたそれが成就した。季節のうつろいで起こる変化を頭では十分理解しているつもりだけど、初期のひなあいを見て日向坂46に興味を持ったわたしにとって満たされない感情を抱いてしまうのもまた事実だ。ひよこが最初に見たモノを親と思うのと同じ習性である。

ある時期から、いや、正直に白状しよう、4期生加入したあたりの頃からわたしは『日向坂で会いましょう』に張りのなさを感じていた。彼女らに必要不可欠な新人研修を施行するにあたり、『日向坂で会いましょう』は彼女たちに『ひらがな推し』を履修させる手段を選び、リアクションチェックや3分間リレークッキング、がな推しではやらなかった催眠術企画だってやった。シン・『ひらがな推し』とでも呼ぼうか

シン・『ひらがな推し』の施行に伴い、可愛い子の愛くるしい表情たちを愛でるいかにもアイドル番組らしい方向へシフトしていたのは当然の流れだったように思う。ただ、この構造下においてわたしはカゴの中の鳥たちを観察するだけの存在であり、初期のひなあいのように今夜起きる何かを目撃したい、番組視聴に対するある種の積極性はあまり湧いてこなかった。

もうひとつ。王道アイドル番組を征き、アイドルが主軸となって番組がつくられるようになった副作用として日向坂メンバーとオードリーとの関係が希薄になったように感じていた

先日の【運動会】企画がそれを最も感じたのだが、アイドル番組らしい『日向坂で会いましょう』におけるオードリーはアイドル番組のMC然としたアイドルの引き立て役として存在していた。比較対象的な異物としての春日、まだ見ぬポテンシャルの鉱脈を試掘する若林、バラエティの先生役だった彼らは、アイドル番組然としたひなあいにおいても確かな存在感と実力でもって『日向坂で会いましょう』を成立させていた。とはいえ、日向坂46はアイドルらしく、オードリーはMCらしく、この分業にドライさを感じていたのはわたしだけだろうか。君たち昔はもっとやんちゃだったでしょう。大人になっちまったのか。

個人的にはオードリーはオードリーで、東京ドームという大舞台に立つことが決定していることからも、東京ドーム公演という点では先輩である日向坂46と対峙する奮起の意味も込めた分業的振る舞いだったのかなと邪推している。

「ひなあいは今後こういう感じの番組になっていくのだろう、アンガールズ田中にめちゃくちゃにしてたやんちゃな季節はもう終わったんだ。」と、番組の進展を肯定しつつもほんの少し絶望を味わっていた。こうして今わたしなりにあの時期のひなあいを分析をしてみると、このシン・『ひらがな推し』もまた『日向坂で会いましょう』のひとつの到達点であり完成形であることがわかった

そして、4期生メンバーは発表されて1年が経った今回、シン・『ひらがな推し』は端境期を迎え、この【個人的重大ニュース】企画からまた改めて『日向坂で会いましょう』が始まったように思えた。

舞台はエピソードトークオンリーと実にシンプル。アイドルのエピソードトークに左右される番組構成とほぼフルメンバーで収録することへの意気込みの表れか、若林さんが明らかにエンジンをかけて臨んでいた。あんな意気揚々とした若林さんは久しぶりに見た気がする。そのおかげで、アッパーで強めにかけられる圧力をぐっと堪え、個性を出しながら応える石塚瑶季や宮地すみれからはこの1年間の戦いで身体ができあがった4期生のタフネスを感じることができた。

前編では弱いエピソードを如何様にするかが見どころだったのだが、若林さんの見事な手腕によってパッケージとしてきれいに収まっていた。若林さんは方程式化するのが上手いし、ひなあいにおいてはそれを嗅ぎとれるようにしているところが素晴らしい。日向坂メンバーが嗅ぎとればそれを利用してオチをつけやすくできるし、視聴者に嗅ぎとってもらえれば、わるい流れが続くことが予定調和へと目線を滑らせることができる。

ひなあいの核はなんといってもこの方程式にあるのだが、それを瞬時に理解し巧みに使いこなすのが富田鈴花である。家族で海に行ったという明らかに弱い話でわざわざ割り込んで、例に倣って弱いオチへと持っていく鮮やかさはもはや縁起物であるいまの彼女は負けるも勝つも自由自在だろう

忘れてはいけないのは高瀬愛奈の存在だ。前編をざっくりと区分けすると、3部構成となり、高瀬愛奈はこの3部すべてのオチを担当する結果となった。わたしは高瀬愛奈の魅力は巻き込まれることによって発揮されるとふだんから提唱しているのだが、この回は若林さんの方程式に巻き込まれる形でそれが存分に発揮されていた。彼女自身が特別なにか働きかけたわけではないのに、文脈のせいで結果的に3部すべてのオチという大役にふさわしい存在感があった。

後編ではこの方程式をおもちゃにしてみんなで遊ぶ、俗にいう団体芸がよく見られた。個人的にはこの方程式のおもちゃ遊びが『日向坂で会いましょう』らしさをもっとも感じる瞬間であり、二次方程式、三次方程式と次いでく法則の先にある不規則さこそがこの番組を唯一無二たらしめているとおもう。気が付けばわたしも前のめりになって番組の行く末を見届けていた。

そしてその無機質さに加味される日向坂やオードリーの人間的な可愛らしさ、おもしろくないはずがない。後編の後半に発生した「許さん!」「えー!」はまさしく『日向坂で会いましょう』を象徴する構築物であった。

今回の企画は、前編はシン・『ひらがな推し』的で、後編は『日向坂で会いましょう』的な、両者が共存した境界のような様相を生み出していた。個人的には長い準備期間を経て、ひなあいが帰ってきたことへのカタルシスを感じたし、やはりオードリーと日向坂46が絡み合うことこそがこの番組のおもしろさを生みだしていることが再確認できた、とてもうれしい回になった。

おしまい。


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