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漫画レビュー:チ。-地球の運動について-の感想。(ネガティブレビュー)

いまさらながらチ。-地球の運動について-を読んだが、全然面白くなかったのでまとめておきたい。ネタバレあり。
別にまとめなくてもいいのだが、世間では絶賛ばかりされてるように感じるので、そうでない意見もあるよ。ということを残しておきたい。


物語の構成とキャラクターの作り方の二点に不満がある。

特に前者に関しては、ずるいというか、卑怯というか、実際の史実や科学への敬意に欠けていて、自分の書きたいテーマを全てにおいて優先していると感じてとても嫌。

じゃあ簡単に書いていく。殴り書き失礼。


■物語の構成

チ。で描きたかったテーマが「知性と暴力」「人生を懸ける好奇心」みたいなことであることは作者もいろんなインタビューで言っている。

それを描きたかったんなら、なぜ完全なフィクションでやらなかったんだ!という気持ちが強い。
というか、手抜きだろ!と思う。

そのテーマを書くために、一般に認識されてる「地動説」「宗教対立」「迫害」要素を、誇張・創作して「歴史のifとしてお楽しみあれ!」はちょっと雑じゃあないっすか。

話は飛ぶけれど、映画ドラえもん。
映画ドラえもんの強みとしては、背景の説明時間がいらないんですよね。
登場人物、設定を全て観客は知っているからこそ、開始二分でのび太が泣きながら「ドラえもーん!!」の導入からテンポ良く始められる。

言ったらチ。は「地動説を扱うよ」ということでそれをやったわけです。

厳密には背景の説明は入るんだけれど、多くの人がうっすら考えてる歴史背景を意図的に誇張・創作して、当時はこんな地動説に対して迫害があった、文化背景だった、と刷り込んだわけ。

そしていきなり知的好奇心VS厳密な宗教の導入から入る。
これは不誠実だと思う。


この辺りの違和感は歴史モノとか大河ドラマの時代考証と近いものがあるかもしれないが、個人的にはちょっと違うと考えている。

あまり上手くまとまっていないけれど、例えば義経チンギスハン説を元にした物語なら、それを前提に楽しむじゃないですか。
大河ドラマも時代考証がちょっとおかしいかもしれないけど、大河ドラマだから許容されるわけじゃないですか。
どちらも史実を元にしたフィクションだとわかって接種するフィクションじゃない。

でもね、チ。は、地動説を元にしたフィクションだと思って読んだらマジで完全にフィクションだったの。

わかる??史実を元にしたフィクションだと思ったら、全部がフィクションだったわけ。義経チンギスハン説だと思ってたら、全然知らんおっさんの話だったわけ。地動説関係ないの。
この違いよ。

違うなら違うって最初に言って欲しいし、逆にこのテーマならイチから創作するべきだよ。
だって、あんな迫害も命よりも重要視した好奇心の受け渡しも、本当は何もないんだもん。

それを読者の曖昧な知識を元に背景組み立てて物語にするのずるくない。
華氏451みたいにいちから作れよ。

チ。は一話からフルスロットル。それは今の時代風でもあるし、連載漫画という媒体では「引き」は当然だからやりたいのはわかる。
でもさ、それをやるために現実の地動説や本来の科学と宗教の在り方をないがしろにするのは不誠実だろ。

という主張。

おれは、サイモン・シンが読みたかったんだよ。

■キャラクターの作り方

キャラクターが一緒すぎる。
言ってしまえば、好奇心のために知を繋ぐために、命を賭して行動する人間でしかないじゃん。全員。

その背景が弱いから感情移入できない。
えっ、そんなに人生全部投げ打っちゃうの???ってずっとなる。

喧嘩稼業を見習ってほしい。
たった2話、数コマの出番なのに死んだらめちゃくちゃ悲しくなったH×Hのサラサを見習ってほしい。
からくりサーカスのサハラ編も結構ギリギリだったと個人的には思っている(信者補正入っている)が、あれより背景が不足しているキャラたちだったなぁと思う。

ということで、作者の書きたいテーマはよくわかるものの、それを地動説のガワ使って、キャラクタ深堀もせず、インパクト重視で進めたんちゃうんか!というのが俺の面白くなさポイントでした。

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