Mackey fan note018「スポンジ」

2005年発売のシングル「明けない夜が来ることはない」収録。

オリジナルアルバムに収録されていないカップリング曲というのは、デビュー数年と、この2005年辺りに多い。自分の記憶でまとめてみると初期は『勝利の笑顔』『夏のスピード』「CLASS OF 89」『Red Nose Reindeer』 『キミノテノヒラ』『Merry-go-round』、2005年近辺は『Gazer』『お元気で!』そしてこの『スポンジ』ってな感じ。確か本人は、「昔はカップリングは絶対アルバムに入れないって意気込みがあった」的な発言をしていた気がする。実際のところそこまで全く入れてないわけじゃないんだけど、 創作意欲もストックも一番燃えている時代だからこその意気込みなんだろう。おそらく、この曲と『Gazer』が収録されなかったのは、後に発表したアルバム『LIFE IN DOWNTOWN』が他のアルバムに比べコンセプト色が強い作品で、本人的にはそのコンセプトに合わなかったからなんじゃないかと推測している。初期群はおおむねここ数年のストアルバムに収録され、そこにすら収録されていないのは2005年近辺の3作品。

初期のアルバム未収録曲は、入手手段のレアさも相まってか名曲という評価や人気が高い傾向にあるんだけど、どうもこの曲にはそこまでの人気がない。理由を考えるに、歌詞の内容的にはこの頃多用していた「正しさ」というものが使われていて、リアルタイムで追っていた人からするとうんざりしちゃったのかなとは思う。正しさや素直さを洗剤に、自分自身をスポンジに例えて、自分や身の回りにあるものをきれいにしようっていう内容なんだけど、この比喩を中心に進行するので、逆に言えば抽象的すぎて何言ってんのかよく分かりづらいっていうのもある。

ただ、堅苦しい内容とは裏腹に曲調はひたすら軽快。時おり流れるバイオリン(のはず)と、跳ねるようなエレキギターの音が心地いい。槇原敬之にありそうでなかったアレンジで、個人的にはこのサウンド面を堪能するだけでも十分聴く価値はあると思う。サビも大半「Wash away」と連呼する部分が占めるので、ライブでも初見のお客さんと一緒に歌うってこともしやすいだろうし、ライブで盛り上げる向きな曲だと思う。(ただ、1回しか歌われてない)。

あと、注目すべき点はもう一つ歌詞にある。ここまでにこんだけ「正しさ」に重点を置く歌詞が続いた後、最後に「あの子の笑顔がちゃんと映るように」とさらっと歌いのける部分。物凄くぐっとくる。要は、そのために心をきれいにしておこうという着地になる。『本日ハ晴天ナリ』にも同じような手法が使われてるんだけど、濃度の高いライフソングのお時間をお届けしといて最後の結論はそこ、という演出がたまらない。根本的な部分は変わってないじゃんという、全てをチャラにさせるような感覚。全体的にもなかなか味わい深い魅力が詰まった一作なのでぜひ。

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