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2024年J1リーグ第7節 サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレ@エディオンピースウイング広島~マッチレビュー~

おはようございます、こんにちは、こんばんは。
オザッキー・チェーンです。


‣振り返り

湘南は前節、先制しながらも試合をコントロールすることが出来ず、試合終了間際に立て続けに2失点を喫して逆転負け。一方の広島は開幕から未だ負けなし。前節は首位の町田相手に勝利と非常に良い状態。両チームともに中3日でのゲームとなっているが、メンバー変更はともに1人のみ。ホームの広島は前節、負傷により前半での交代を余儀なくされた荒木に代わって、新井が加入後初スタメン。前節の負傷交代の配置と同じ形で臨む。アウェイの湘南は奥野に代わって大岩が入り、田中がアンカーで大岩が左CBという並びになった。昨シーズンまで湘南のエースとして君臨していた大橋は、開幕戦からいきなり広島の勝ちを手繰り寄せるゴールを決めるなどして、広島サポの気持ちをがっしりと掴んでいる。そんな大橋を湘南選手たちはどうやって抑えるのか。はたまた広島の新エースとしての風格を見せつけられてしまうのか。湘南サポとしては昨シーズンまでエースとして活躍してくれた彼にいい意味で後悔させられるような展開になることを期待していたが…

スタータティングラインナップ

・前半~上位相手にも立ち向かえる力~

立ち上がりから目まぐるしく、攻守が変わる展開が繰り広げられる。両者ともに開始からフルスロットルでプレーするシーンが目立つ中、互いにゴール前まで攻め込むも決定的なシュートまでは至らない。ハイプレスを主体とするチーム同士の戦いということもあり、セカンドボールへの反応の速さ、激しさが徐々に増していく。

14分、大岩から受けた畑が裏への抜け出しを図ったルキアンにダイレクトでロングボールを放り込む。そのボールに対して、開始からルキアンを警戒して、対応にあたっていた中野が先に反応する。しかし、そのボールの落下地点を見誤ったのか、中野の頭上を越えてルキアンに渡る。粘り、ペナルティエリアに侵入し、ゴールに向かったルキアンに対して、負けじと中野も追いかける。ボックス内でルキアンが接触して倒れたことをアピールするも、ノーファールの判定。接触した際のルキアンの右足の動きがイニシエートに該当したのだと思う。

前節の戦い方を振り返って見れば、この試合も同様、保持をしたかったはずの湘南であったが、広島のハイプレスに苦しむ時間が増える。前線のルキアン目掛けてロングボールを送っても、中野の厳しいチャージに合い、ルキアンは良い状態でなかなか前が向けない。一方の広島も湘南同様、ビルドアップで苦戦しているように見えた。19分の満田のクロスボールから大橋がシュートを放った場面を振り返って見ると、ペナルティエリアに湘南の選手は5人いるのに対して広島は前線の2枚しか入っていけていない。なぜ入っていけなかったのか。自陣でボールを奪う前のシーンまで遡って見て欲しい。

上位チームも苦戦した湘南のプレス隊

広島サイドとしては松本や川村を経由して前進したかったが、田中とルキアンにマークをつかれてしまっていたため外に逃げるしかなかった。しかし、外に逃げるというのはそもそも、湘南が狙っている奪い方であり、そこにはしっかりと畑や大岩が待ち構えている形に。前向きで狙い通り、奪取出来たものの、結果的には加藤のプレスバックにより湘南はボールを奪われ、ロングカウンターを受ける形になった。ただ、上記の画像を見てもらえば分かる通り、広島の組み立て人数は7人であるのに対して湘南は5人でブロックを作っている。これが先程述べた、広島のペナルティエリアに侵入している選手が少なかった理由に繋がるのだ。野球で例えると、打たせて取るピッチングに近い。シュートがいくら上手い選手でも、あのような状況で決めるのは難しいでしょう。湘南が広島の前線の3枚を孤立させるような守備、もしくは前線と後ろで繋がっていないいないことに気づいて行った、見事な守備と言える。

広島のハイプレスに苦戦していた湘南であったが27分に広島のゴール前まで迫る攻撃を見せる。岡本の広島DF陣の背後を狙うボールに福田が反応。1度は奪われるも、セカンドボールをしっかり拾い、田中のパスから最後は鈴木雄斗がフリーでクロスを上げるも味方には合わなかった。シュートまでは運べなかったものの、どのようにすればこのプレス網をはがせるのか、意図が見られる攻撃であった。

33分、広島にチャンスが訪れる。自陣で奪い、素早く前進。湘南陣内の左サイドで東、松本と繋ぎ、良い位置で呼び込んでいた川村にボールが送られる。川村は右サイドでフリーの新井へ。新井はゴール前へクロスを上げ、大橋が厳しい体勢ながらも満田へ上手く落とす。満田が放ったシュートはボムグンに防がれ、東が詰めようとするが、鈴木雄斗の見事なカバーで湘南としては事なきを得た。

ハイプレスを90分続けることはなかなか難しい。何としてでも前半のうちに得点を取っておきたい湘南であったが、この33分の攻撃を機に試合の主導権は広島に流れて行く。36分には、湘南としては人数は揃っていたが、プレスの遅れが仇となり、東と松本の2人で完全にサイドを崩されて、広島にコーナーを与えてしまう。39分には、前線からの限定が出来ず、中野に簡単に中央の満谷対して縦パスをつけられてまう。チャンスには至らなかったものの、湘南の守備(特に湘南の右サイドで)が後手に回るシーンが増えてきた。続く41分のシーン、池田が佐々木へプレスをかけに行くも、降りてきた加藤に簡単に通され、前を向かれて前進を許す(鈴木雄斗が何か言っている?)。

42分、湘南がこの時間の中で1番の決定機を迎える。畑が左サイドから突破を図り、奪われるも、セカンドボールをしっかり平岡が拾い、ペナルティエリアに侵入し、DFとGKの間に素早いグラウンダーのボールを送る。ルキアンがそのボールに反応するもタイミングがずれてミートすることが出来なかった。

43分、またしても広島の決定機。自陣でのボール奪取から前線の大橋へ。大橋の鬼のキープ力で一気にペナルティエリアまで迫り、満田へラストパス。切り返して、切り返してシュートを放つもソンボムグンのセーブで湘南は救われる。このシーンで少し言及したいのが大岩の守備について。スライディングというのはあくまで最終手段。このシーンでのスライディングなんてもってのほか。湘南の守備の人数も揃っている上、あの位置からのシュートはなかなか難しい(満田なら決めてもおかしくはないが…)。大岩の満田への対応が遅れているわけでもないのでもっと落ち着いた対応をしてほしかった。ベストな対応としては、シュートコースを切りながら、満田へアクションを起こし、縦に行かせてクロスないし無茶なシュートを誘う。あの場面でまずやることは簡単に中へ侵入させず、シュートを打たせないこと。ボムグンの素晴らしいセーブで何とかなったから良かった…

前半終了間際の48分、左からのコーナーキック。キッカーは満田。中央の位置からニアに走り込んできた佐々木がピンポイントで合わせるも、田中がゴールラインギリギリで何とか跳ね返して、前半終了。一体、どんな感覚が田中に働いたのか…

1点が遠かった広島、何とか0に抑えた湘南という構図でハーフタイムを迎える。

・後半〜紫の新エースのエースたる風格〜

両チーム、後半の頭から早速動いてくる。広島は新井に代わって、越道を、湘南は池田に代わって鈴木章斗をそれぞれ投入。池田の交代に関しては、前半の終わりにかけて疲れがみえていたためのものだと思ったが、広島のこの交代カードの切り方には少し驚いた。この交代の意図についてスキッペ監督は「もっと攻撃的に行きたかった場面があったため、スピードのある越道を入れた」と述べていた。

開始早々の48分、湘南はピンチを迎える。前線のルキアンへのボールは中野と川村の2人に囲われ簡単に奪われ、前線の満田にボールが送られる。大橋から加藤へと繋ぎ、加藤はそのままボールを持ち運び、キムミンテと鈴木雄斗の間へスルーパス。ソンボムグンがキャッチするだろうと思われたボールは、スピードが緩かったのか、上手く処理することが出来ず、そのチャンスを見逃さなかった大橋が即座に反応。ソンボムグンは大橋を抱きかかえる形で倒してしまい、PKを献上。この判定を受けて、ソンボムグンは一発退場となる(2年連続アウェイ広島で退場者が出るとは…)。この間に湘南は平岡に代わって奥野、岡本に代わって馬渡が入る。どうしてこんなにも厳しい状況で回ってくるのが馬渡なのか…広島のキッカーはもちろん大橋。大橋はど真ん中に冷静に蹴りこみ、広島が立ち上がりの良い時間帯に先制に成功する。湘南にとっては痛すぎる先制点だ。
この失点に関しては冷静に対応していれば防げただけに悔しい。後ろから1番良い状態で試合を見ているGKとして、このような対応は非常に勿体ない。加藤からスルーパスが時点で、ソンボムグンがDF陣に一言、声をかけていれば生まれなかった失点であったのかもしれない。

1人少なくなった湘南は4-4-1にフォーメーションを変更。頂点にルキアン、2列目左から福田、田中、奥野、鈴木章斗、最終ラインには左から畑、キムミンテ、大岩、鈴木雄斗、そしてGKは馬渡という並びになった。

1人少なくなった湘南は広島に再三、決定機を作られるもスクランブルでの出場となった馬渡を中心に、ピッチにいる10人全員で体を張るなど集中して、ゴールを割らせない。攻撃になかなか移ることは出来ないまでも、守備では絶対に決めさせないという気概は凄く感じた。

湘南にとっては大きすぎるハンデとなっていたが、徐々に広島陣内に侵入し、押し込む姿勢を見せる。しかし、シュートへのラストパスが繋がらない。後半開始して30分、湘南はシュート1本に抑えられてしまう。一方の広島は8本シュートを放つもゴールネットを揺らすことは出来ず。

81分に入り、湘南は最後の2枚の交代カードを切る。畑に代わって杉岡、福田に代わって石井を投入。2人とも同じポジションに入る。

84分には交代で入ったこの2人が起点となり、早速チャンスを作る。キムミンテからの横パスを受けた杉岡は右足で前線にフィード。ルキアンがマークに付かれながらも体を張ってキープし、追い越しを待つ。杉岡と石井のユニットで広島のラインを押し下げることに成功し、最後は石井がペナルティエリアの外から右足でクロスを上げる。味方には惜しくも合わなかったが、触ればゴールというシーンまで迫った。

試合終了も迫ってくる中、1点差ということもあり湘南は前がかりになる。前がかりになった影響か、86分には完全に崩され、揺さぶられ、東のクロスに反応した満田がヘディングでシュートを放つも馬渡が素晴らしいセーブでチームを救う。
87分、馬渡のパントキックに反応したルキアンが単独で突破を図り、シュートを放つも大迫に阻まれる。続く88分にもコーナーキックの流れから石井が左サイドで仕掛けて、カットインしてシュートを放つも枠を捉えることは出来ず。交代で入った選手が中心となり、10人となっても決して諦めない姿勢を見せる。

ギアを上げて、広島ゴールを脅かし続けた湘南であったが、前線へ放り込んだボールを跳ね返されて広島のカウンターへ。加藤からのフリックを受けた大橋が一気に前線へ持ち運び、最後は落ち着いてDFの動きを見て、右足でゴール左隅に流し込む。96分に決定的ともなる2失点目を喫し、ここで湘南は万事休す。(ってか大橋、何であんなに落ち着いてシュート打てんねん。打てるなら教えてくれよ…)

やられたくない相手に2得点ぶち込まれ、湘南としては厳しい敗戦、リーグ戦3連敗となってしまった。

‣あとがき

上位チームと考えれば悪くない内容、いや、相手のビックチャンスを考慮すれば非常にラッキーな形でハーフタイムを迎えただけに、後半開始早々から自分たちのミスから退場者を出して、失点してしまい結果、敗戦してしまったのは非常に悔やまれる。ただ、調子の良い広島相手にキックオフから自分たちの守備の形をぶつけて、広島の攻撃を45分もの間、封じ込めることが出来たのはプラスに捉えて、今後も戦って行って欲しいと私は思う(10人になり、1失点を喫しても、終了間際のカウンターの1点のみに凌いだのだから実質、0-1みたいなところはあります笑)。攻撃に関しては前節のような戦い方は出来なかったものの、ピッチの選手たちが自分たちで判断して、この状況で何をするのがベストなのかは見せてくれていた。退場者を出してしまって以降は守ることで手一杯になり、チャンスを作ることが出来ず、苦しんでいた印象。そんな中で、差し込んできた唯一の希望の光が〝ミライモンスター〟こと石井久継だった。前節、今季初出場を果たした湘南の未来&希望の久継は10人というハンデを抱えた状況かつ短い時間の中で、一際目立つ輝きを見せてくれた。前節とは違い、左サイドでの出場となった彼は得意のドリブルで広島のDFラインを下げさせるプレーを見せてくれた。これまでの湘南にはいない、ドリブラーのタイプである。サイドの系譜を振り返ってみると、自力での縦突破型や精度の高いクロッサーが多かった湘南にとって貴重な存在である。近年の日本人No. 1ドリブラーといえば三笘薫であることは言うまでない。三笘を見てみれば分かる通り、ドリブラーに対して求められてることは変わってきている。ただ、スピードに乗って突破して、クロスを上げるだけではない。相手に対して仕掛けること。そして、相手をどれだけ引きつけて、相手のDFラインを押し下げて、ゴールまで近くづき、得点の確率を上げる。たったの数分ではあるそんな選手になれる片鱗を久継には感じた。前節は雨で右サイドでの出場となったからなのか、得意のドリブルでチャンスを見出すことは出来なかったが、今節はこのようにチャンスを作るまでの活躍を見せてくれた。
試合には負けてはしまったものの、これからの湘南の象徴的な選手になるであろう久継の素晴らしい活躍を見れたことをポジティブに捉えて。

切り替えて神戸戦。

(この久継の活躍を見て2ndユニを買いました)

‣試合情報

・結果

J1 第7節 4/7(日)14:00 エディオンピースウイング広島 観客数:25,515人
サンフレッチェ広島vs湘南ベルマーレ
                              2-0
52分大橋 祐紀(広島)
96分大橋 祐紀(広島)

主審:上田益也 副審:梅田智起、植田文平 第4審判:石丸秀平
VAR:西村雄一 AVAR:村井良輔

・試合のスタッツ

・試合後の両チームのコメント

広島:https://www.sanfrecce.co.jp/matches/20240407/report

湘南:https://www.bellmare.co.jp/336598


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