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永遠に続く午後のスローモーション

露つゆをのせたルドベキアが綺麗だった

思えば12月

教室から出た私は水を探していた

喉が乾いたのかもわからない

頭はぼーっとして

伸びた影はラクダになっていた

窓ガラスは結露して

描いた真円から

雫が垂れていた


交通安全教室が始まった

校庭の真ん中にサボテンがひとつ咲いていた

明らかにおかしい

不自然だった

昨日までなかったはずのサボテンがひとつ

等身大ぐらいの大きさで

地面から力強く生えていた


「なにが浮世絵」と

廊下の浮世絵ポスターに

睨みをきかす兄がいた

空を見るとカラスが

ちぎれんばかりに鳴いていた

あの世とこの世が繋がっちまったらしい


スタントマンの人がぶつかった

何にぶつかったか分からなかった

熟れたトマトが地面に落ちて

ぐしゃりと潰れた

となりの子の足が逆の方に曲がっていた

ずっと遠くの方で

パトカーのサイレン音がしていた

たくさんの血だらけの馬が通り過ぎた

私は光につつまれた


机にはヨダレの跡があった

外を見ると日が落ちかけていた

「みんな帰ったのか」

誰もいなくなった教室を出て

校庭を眺めた

サボテンに花が咲いていた

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