生産性を上げるには「イシューからはじめよ」からはじめよ
「一生懸命努力してるのに、なんか手応えがない」
「こんなに時間かけてるのに、なんで成果が出ないんだろう
「生産性を上げろ!って言われるけど、どうすればいいの…?」
この本「イシューからはじめよ」に、その答えが書いてあります。
生産性の正体はコレだ
「生産性」という言葉は、あらゆる意味で好き勝手に使われてますよね。
そこで、まずは「生産性」の定義から始めましょう。本書でまず述べられるのは以下のような定義です。
生産性=イシュー度×解の質
何のこっちゃ?ですよね。
「イシュー度」も「解の質」も、どちらも初めて聞く言葉です。
まず「イシュー」とは「自分が今置かれている局面で、答えを出す必要性が高い問題」のことで、より必要性が高いと「イシュー度」が高いと言えます。そして「解の質」とは「そのイシューに対して、どこまで明確に答えを出せているかの度合い」を指します。
わかりやすく言うと、生産性を高めるためには、いかになるべく芯を捉えた課題(=イシュー)を設定して、その課題に明確な(=解の質が高い)答えを出せるかがカギ、ということです。
これは私自身はもちろん、みなさんも身に覚えがありますよね。
若い頃なんかは特にそうです。右も左も分からない仕事にひたすら打ち込み、持てる限りの時間と労力を注ぎ込むことで、価値の高い仕事ができる。そう信じていました。
しかし、そんなスタンスは「犬の道」だと本書は言い切り、否定します。
犬の道
多くの人が陥りやすい「道」があります。
それは「とにかく一心不乱に闇雲に時間と労力を注ぎ込むことでアウトプットの価値を高めようとするアプローチ」です。
しかし、限られた時間の中でタイムロス、体力ロスが多すぎることで、どんなにタフな人だって必要以上に疲弊してしまい、その結果、アウトプットの価値は低くなりがち。それでは決して生産性が高いアプローチとは言えません。
では「犬の道」を避けるためにはどうすればいいか?
その結論は「本当に答えを出すべき問題は何か?を見極める」ことです。
ここで言う「問題」こそが「イシュー」であり、生産性を高めるには「イシューについて考えることからはじめよ」と本書は言います。
イシューの見極め方
「そりゃあ、その、イシュー? 本当に大事な問題を見つけた方が効率的だし、生産性も上がるのは分かるけど、それが見つけられないから苦労してんだよ」
私はそう思いました。しかしご安心ください。本書は第1章と第2章で「イシューの見つけ方」を丁寧に解説してくれます。
まず、よいイシューには3つの条件があります。
1つ目は「本質的な選択を生むか」2つ目は「深い仮説があるか」そして3つ目は「答えが出せるか」です。
個人的に重要だと思うのは「深い仮説があるか」で、これが意外と実践するのが難しいのです。
この部分については、本書でも特に詳しく書かれており、深い仮説を立てる方法がさらに3つ挙げられています。
一次情報に触れる。基本情報をスキャン。集めすぎない。
なぜかいつも3つ目の項目だけ逆説的でおもしろいのですが、いずれも芯を突く必要不可欠な要素です。
「解の質」を高める2つの作業
イシューが見つかったら次は「解の質」です。
まず必要な作業は「ストーリーラインを作る」ことです。
いきなり難しそうですが、これをわかりやすく言うと、1つのイシューをいくつかの「サブイシュー」に分解してストーリーを組み立てる、ということです。
すみません、まだ分かりづらいですね。ご安心ください。本書ではその「ストーリーを組み立てやすくなる型」を教えてくれます。
ひとつは「whyの並べ立て」です。
イシューの中に含まれる仮説に対して、なぜそう言えるのかを3つほど用意して並べます。その「why」に丁寧に答えることができれば、仮説が正しいことを裏付けられます。
もうひとつは「空・雨・傘」です。
これは「いま現在、空が曇りだした→現状から察するに、雨が降り出す可能性が高い→雨に濡れないために傘をさすべきだ」という論法です。
このような型を使って、イシューを細かいサブイシューに分解してストーリーを組み立てる。これが「解の質」を高める方法その1です。
その2は「絵コンテ」をつくる、です。
ここで言う「絵コンテ」とはグラフや図のことです。
サブイシューに含まれる仮説を分析し、その結果を客観的かつ分かりやすく表現するために、グラフや図を使うのですが、これが意外と奥が深いのです。
ひとつのグラフを作るにしても、タテ軸とヨコ軸をどう設定するか、どんな数字が入りそうか、どうやってデータを集めるか、などなど、一筋縄にはいきません。詳しいアプローチ方法などは割愛しますが「適切な表現手段としてのグラフの作り方」が本書では明確に解説されています。
やっと「アウトプット」です
ここまで来て、ようやくアウトプットです。ビジネスにおけるプレゼンなら企画書を書き始め、研究なら発表資料を作り始めます。
「え、まだ始まってなかったの?」と驚く人もいるかもしれません。
そうなのです。ここまでの作業はあくまで、解くべき問題を厳選して(イシューを見つけ)、問題の解き方を設計する(ストーリーラインと絵コンテを作る)ところまでです。
「遅い。そんなことじゃ時間がいくらあっても足りないよ」というご意見、わかります。でもその考えはまさしく「犬の道」です。
「まず考えるべきは、アウトプットからではなく、解くべきイシューからはじめよ」と本書は一貫して主張します。
それもあってか、この「アウトプット」に関する章はボリューム短めです。
ポイントをまとめると「特に重要なサブイシューから取り掛かる」「途中で詰まらないように推定など使って軽快に進める」「答えありきの調査は避ける。想定と違う調査結果が出たら、よりイシュー度の高いイシュー発見のチャンス」などなど。
あとは資料にまとめる上で「より本質的でシンプルになるように、改めてストーリーラインと絵コンテを磨いていく」ことで、アウトプットは完了します。
「働いた時間と労力」よりも「価値の高いアウトプット」を目指せ
「一生懸命努力しなくても、アウトプットの質が高ければいい」
「時間は掛けなくても、アウトプットの質が高ければいい」
「生産性を上げるには、イシューからはじめるのがオススメ」
つまりはそういうことです。
しかし、そういうことなのですが。
「そんなに上手くいくかね?」
「それができれば誰も苦労しない」
「どうせ頭のいい人だけの話でしょ」
そう思いますよね。私はそう思いました。
この本を読んでから、イシューからはじめることをしっかり頭に叩き込んで、いざ仕事に取り掛かってみるのですが、私自身、なかなかうまくいきません。生産性が目に見えて上がっている気配もなく、正直ちょっと落ち込みました。。
でも違うのです。
この本に書かれているのは魔法や裏ワザなどではなく、ひとつの有効なアプローチ方法、すなわち「道」なのです。
とにかくがむしゃらに走りまくって、なんとなく進んでる感はあるけど、ヘロヘロに疲弊しまくっていっこう目的地にたどり着かない「犬の道」。
まず目的地とアプローチ方法を定めて、一見遠回りで時間が掛かりそうだけど、最短ルートを一歩一歩進んでいく「イシューからはじめる道」。
どちらも歩み続けなければ進めません。
あなたなら、どちらの「道」をいきますか??
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