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ノリとハッタリだけの営業会社に新卒入社した凡庸社会人が、新規事業の企画部マネージャー職と出勤義務なしを手に入れるまで

はじめに

今日は会社に行ってもいいし、行かなくてもいい。厳密に言えば、今日だけじゃない。定例会議を行う毎週月曜日以外、会社に行くか自宅にいるか、僕は自分で選ぶことができる。
もちろん自宅で仕事をする。きょう達成すべき目標は明確だ。その目標だって自分で設定した目標だ。誰に縛られることもない。
そもそも僕がやってる仕事は、誰も踏み出したことがない領域を探検する仕事だ。
そう書くと何か先進的なテクノロジーの研究者などに間違われそうなので、正直に言うと、僕はただのサラリーマンだ。

弱小広告代理店の一社員。役職は係長だけど数十人しかいない社員の中では、下から数えた方がいいくらいに若い。今年で31歳の男だ。
うちの会社は社名を出してもほぼ99%知らないであろうthe中小企業だ。属するのは一応華々しいイメージのある広告代理店業界なんだけど、どの社員も堅苦しいスーツ姿だし、経費は厳しく切り詰められるし、給料だって決して多くはない。

そんな弱小広告代理店に僕は「営業」として新卒で入社した。
学生時代の僕は「文学部日本文学科」という、いかにも就活で苦労しそうな学部で、大好きな小説や文芸について思う存分学んだ。控えめに言ってもかなり根暗で内向的、コミュニケーション能力も極めて低い学生時代の僕は、当然のように就活で苦労した。
まず「学生時代に頑張ったこと」で語れる内容がない。打ち込んだことといえば自己満足の創作活動ばかり。誰にも評価されることのない、作った本人が他人に評価されたいとも思っていないような作品作りは、採用面接の場では何の役にも立たなかった。
そんな僕を採用してくれた広告代理店、つまりいま僕が在籍する会社だが、よっぽど学生が集まらなかったんだと思う。
就活シーズンも終わりかけの頃、売れ残った僕と不人気の会社が幸か不幸かマッチング成立し、僕はその会社に入社した。

同期で入社した社員含めて、関西出身者が多かった。総じて明るく陽気で話し上手な社員たちの中になぜか口ベタな僕が入ってきたのだから、とても苦労した。新卒なのに何故かめちゃくちゃアウェイな環境。(敬意を込めて言うが)関西のノリや文化が全く分からず、理解ができなかった。僕だけが知らない会話のルールが存在するような気がした。さらに僕は社内で浮いてるだけじゃなく、何かと執拗にイジり(なんだそれ?)の標的にされた。今ならそんなことは取るに足らないことだと思えるし、そんなことに悩むのは時間がもったいないと思うが、当時の僕には切実な悩みだった。

その8年半後に、僕は役員相手に会社の進むべき道を堂々と提言し、さらには出勤義務と営業ノルマが無くなり、新規事業開発を担う部署のトップとしての仕事を任されるようになった。

新規事業の開発は、すべての企業にとって必要な活動だ。これはもうほぼ通説になりつつあるので詳しい理由は省略するけど、端的に言うと「すべての商品は意外と早く廃れる」からだ。
企業も含めて、すべての存在は変わり続けなければ生き残れない。世の中に提供する価値、すなわち商材も変わり続ける必要がある。マイナーチェンジやスピンオフのようなレベルではない、新たな市場に挑むトライ&エラーの末の成功が、企業が存続しようとする限り、求められることになる。
つまり何が言いたいかと言うと、新規事業開発は企業にとってメチャクチャ重要な部署だと言うこと。そしてもうひとつ。どう悲観的に考えても、僕は会社の中で役立たずの烙印を押されて左遷された訳ではなさそうだ、ということ。
つまり僕は、メチャクチャ不利でアウェイな状況の中で、本当に死ぬかと思うぐらいの様々な苦労を乗り越えて、社内で最も期待される社員になるに至った。

会社に認められたことよりも、正直言って、出勤義務と営業ノルマから解放されたことの方が何倍もうれしい。この記事を読んでいるあなただって、もし自分の身に同じことが起きれば、きっとそう思うんじゃないだろうか?

この記事には、読んだだけで成功するノウハウが書いてあるわけでもなければ、薄っぺらい人生訓も並んでいない。そこにあるのは、ただの一人の冴えない社会人が、割と満足できるレベルの自由を得るまでの体験談だ。その中で必要に応じて、社会人なら役に立つ立ち回り方やテクニックなども挟んであるので、明日からの仕事を少しずつ変えていくこともできるようになっている。

299円という金額が安いか高いか。その判断は読者であるあなたに委ねられている。あなたがこの記事には0円〜298円の価値しかないと感じたとしたら僕の負けだ。299円〜無限大の価値があると感じたとしたら、勝ち負け云々ではなく、僕は嬉しい。

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