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小説「水龍の竪琴」第16話

19.大団円
今日は新しい神殿の落成式である。水龍の顔のレリーフが剥がれた下から、向かい合った2柱の水龍の顔が現れていた。2柱の口元それぞれから水が流れ出し、泉を潤している。それを見た神官たちは、これは、これからは一柱の龍神ではなく、つがいの二柱の龍神の時代だというお告げだとして国中にお振れを出した。
サウラの巫女〜龍神の花嫁としての役目は終わったが、巫女から昇格して、夫を持てる女教皇となった。イノスは女教皇の補佐役の神官として、ドラゴナイトでの生活をスタートさせる。
ディオナは親衛隊の業務を修了し、王太子として国王の身近で勉強する。ドナンはディオナの親衛隊長となり、身分も子爵に昇格した。

神殿前での落成式を終えると、サウラとディオナの昇進祝賀パレードである。これまで滅多に人前に出なかったサウラと、市中で噂のエキゾチックなヒーロー、イノスを一目見ようと市民が目抜き通りを埋め尽くした。
「ヒュ〜!すげぇな!」
通りの様子を見たイノスが素っ頓狂な声を上げる。サウラが笑いながら制止する。
「やめてイノス、笑ってしまうわ。この帽子、とても重いのよ。バランス取るのが大変なんだから。」
ディオナも笑いながら言う。
「お姉様も婚約発表すればよかったのに。心配いらなかったでしょ?イノスはお姉様を救ったヒーローなんだから!」
先程発表されたお振れで、ディオナと親衛隊長ドナンの婚約が発表されていた。ドナンは身分違いだと最後までごねたが、爵位を授けられては断れなかった。
「私などでいいのですか?」
「貴方がいいの!私がどこかの馬鹿な王子と結婚させられてもいいわけ?」
「それは絶対に嫌です。」
微笑ましいやりとりを聞きながら、サウラはイノスを見た。イノスもサウラを見ていた。
「俺がドラゴナイトに馴染むまで、、、待ってくれるな、サウラ。」
イノスは電光石火サウラにキスすると、御者の隣に座り、馬車を発進させた。明るい日差しに恵まれた午後であった。

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