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週刊 視点旅行 第2号 、スーパー雑誌デーのススメ、アクティビストのオアシスが花王に改善提案、生成AIで変わるデザイン・ワークエクスペリエンス、オッペンハイマー、他、2024/4/6

今週の格言

経営者に固有の役割は、将来に向けての決断をすることにある。そこに外在的・客観的な基準はない。決断に外在的な基準がないからこそ、教養が経営者の資質として不可欠になる。教養とは知識の量や範囲ではない。広範な知識を持っていても、教養のない人は少なくない。自分の視点で対象をつかみ、自分の頭で評価と判断を加え、自分の言葉で伝えることができなくては教養があるとは言えない。その人に固有の価値基準を形成する知的基盤――これが教養のもっとも正確な定義だと思う。/ 楠木建(経営学者)

文芸春秋 「経営者は古典に学べ」より

Executive Summary

スーパー雑誌デーのススメ:月に1度くらいの頻度で、10冊くらいの多様な分野の雑誌にイッキに目を通す日を作ってみませんか?(日経ビジネスから「トマトvsナス」まで)
A Better Kao :アクティビストファンド・オアシスが花王に対し”キャンペーン”を展開、ボロカスに言いつつもアップサイドがあると考え、マーケティング・ガバナンスなどに関して具体的に改善提案
生成AIで変わるデザイン・ワークエクスペリエンス:生成AIは叩き台量産装置、評価にもAIを使うことで高速でフィードバックループを回せる点も魅力的(伊藤園・ヤマハ発動機の事例を添えて)
オッペンハイマー:オッペンハイマーの人生を追体験することを通じて、”私たちの問題”を追体験し、考え・悩む映画体験を


今週読んだ本

書籍
左遷社長の逆襲 酒巻久著
ハーバード式不動産投資術 上田真路著 
愛とラブソングの哲学 源河亨著
なにものにもこだわらない 森博嗣著 (小説家、「全てがFになる」の著者)
たった一人の熱狂 見城徹著

雑誌
+DESIGNING Volume 57 AIのあるデザイン
AXIS Product Design 2024
Casa Brutus ガウディと井上雄彦
やさいの時間 2024年4・5月号 トマトvsナス
日経ウーマン 1日1分 私を変える最高の習慣
FLIX Plus vol. 52 (2024年4月号増刊)
日経ビジネス 採用イノベーション 経営の意志が人を呼ぶ
呪術の日本史
SPUR 2024年5月号
Discover Japan 進化するホテル

スーパー雑誌デーのススメ

/月一で知識の幅を拡げるために多様なジャンルの雑誌を10冊イッキに読む日「スーパー雑誌デー」はいかがですか?/
/日経ビジネスから「トマトvsナス」まで/

 皆さんのような知的生産に関わる全ての人たちにとって「アイデアを出す」ことは日常であり死活問題だろう。今回はアイデアを呼び込むためのある具体的な習慣について紹介したい。

 アイデアの源泉は多様な領域にまたがる知識の断片がいかに頭の中に転がっているかにかかっている気がする。もちろんアイデア出しにおいて、知識量が全てではないが、シュンペーターよろしく「イノベーションは掛け合わせ」だとすると掛け合わせる元手が必要であり、それはやはりまず知識だ。 
 また「知識の幅」の重要性について説いた世界的ベストセラー「RANGE」*でも紹介されているように、その知識も単一分野で集めるよりも多様な分野で集める方がアイデア出しに始まる知的パフォーマンスに対する寄与度は大きいだろう。

*RANGE:知識・経験の幅の重要性を説いた名著
/ゴルフや将棋などのありうる状況のオプションが限定されるゲームは早期の専門特化と相性が良いが、サッカーやビジネスなどの多変数関数のゲームや不確実性の高い状況・急速に変化する環境においては、広範な知識と経験が有利にはたらく/

 では「幅広い分野の知識」を得るにはどうすればいいのだろうか?それを手軽に実現するのが「雑誌の濫読」である。興味あるものから興味ないものまで手あたり次第読む。私で言えば、日経ビジネスやHarvard Business Reviewなどの経営系はもちろんだが、正直に言うと幅出しのために「美的」とかのファッション誌を読んでいるときもある^^。(今週の読んだ本リストでもカッコつけずに読んだものを正直に書いている笑)
 もうお気づきだろうがタイトルにもある「スーパー雑誌デー」とは「10冊ほどの多様な分野の雑誌にイッキに目を通す日」である。頻度は月に1度、四半期に一度でもいいだろう。「定期的に」というのがポイントだ。ちなみに1つ補足すると、個々の雑誌を隅々まで読む必要はない、流し読みでペラペラめくって興味が湧いたところだけ拾い読みすればよい。私もいつも「とりあえず全ページペラペラして"読んだフリ"するか」くらいにハードルを低くしてはじめる。ただそうすると意外と乗ってきたり、見出しが目に飛び込んだりするのだから人間は不思議だ。
 雑誌を用意する方法だが、私のオススメは2つある。ブックカフェとKindle Unlimitedだ。これらを上手く活用することで使うお金を抑えつつ、いろいろな雑誌が読める。私は「スーパー雑誌デー」にはたいてい蔦屋書店に行って、うろうろして目に付いた雑誌を手にとってカフェに入る。実空間の本屋さんは異分野の本との偶発的な出会いの宝庫なので、この目的以外にもオススメする。また、Kindle Unlimitedでは数百種類の雑誌を月1000円ほどで読むことができるのでとても「スーパー雑誌デー」向き。(Amazonの回し者感😂)

行きつけ 蔦屋書店 湘南T-SITE( HPより)

 私は比較的本を読むのは好きな方だが、それでも正直めんどくさくなることはあるし、あまり興味がないものならなおさらだ。そのめんどくささを超えるためにも「スーパー雑誌デー」を設定・習慣化し、やるかやらないかという思考を介在させる余地を削っている。(人は現状維持したい生き物であり、コンフォートゾーンを出ない理由付けに関しては皆一流だ笑、興味ある方は行動経済学を調べてみてください)
 ちなみに私がめんどくさいと言いつつそれでもやるのは、その価値を実感した経験があったからだ。自分が全然興味ないと思って目を通した雑誌にとても興味深いコラムを見つけたり、そこからの洞察をもとに新しい学びのキッカケを得たりした経験があるからだ。例えば女性誌のZenly特集を通じて「位置情報の共有によって通常難しい混雑した都会の駅(渋谷とか)での待ち合わせがスムーズになる」ことを知ったり、メルカリの特集を通じて「買って試してみたけど色が合わなかった口紅を使った部分だけナイフで切り落としてメルカリに出品する」といった消費者行動があることを知った。

 自分が思いもよらなかった事柄に偶発的に触れる機会を提供してくれるメディアとして雑誌は2024年現在も価値があると思う。またこのメルマガも、良い雑誌がそうであるように、普段触れない分野・領域の情報・新しい物の見方を皆さんに提供できるものにしていきたい。

余談:私自身「こういうパターンのうれしい誤算もあるのか」とまた気付かされたところ^^ 
(「日経ウーマン 1日1分 私を変える最高の習慣」より)

今週の企業分析:オアシスが花王に改善提案

/香港系アクティビストファンド・オアシスが花王に対してマーケティング・ガバナンスなどに関するアクションプランを提案/

 香港系アクティビストファンド(*1)であるオアシス(*2)が、日本の大手消費財メーカーである花王に対してエンゲージメント(投資家としての経営改善要求)を行った。
 笑っちゃうくらいストレートな表現でダメ出ししていたりするが、丁寧に課題を洗い出し、エクイティストーリー・具体的な改善施策につなげている。正直けっこう説得力がある。

*1 アクティビストファンド:株主価値向上を目的に、株式を保有した上で積極的に企業に対するエンゲージメント(提案)を行う投資ファンドのこと
*2 オアシス:香港を拠点とするアクティビストファンド、日本市場においてはフジテック・東芝・東京ドームなどへの投資で有名

なんとオアシスは今回の提案に関する特設サイトまで作っている!!

オアシスの花王に対する提案資料「A Better Kao」

アクティビストの視点としてはもちろん、提案資料としても普通に勉強になるので、一部を紹介していく(以下、オアシスの提案資料「A Better Kao」より抜粋)

花王は眠れる巨人だと思うよ!
(褒めているかと思いきや…)
すべての消費財のセグメントでパフォーマンスが悪いよね、営業利益ベースで
(こっちではなかなか手厳しい…笑笑)


花王の経営陣は成長に対してアレルギーがあるでしょ
上位1割のブランド価値、下位1割の経営
(めっちゃストレート笑笑)
花王の再生は可能、競合のBeiersdorfの社長は以下の4つをやって株価を上げたよ!
1.高級路線で粗利を伸ばすことに集中
2.ブランド構築に再投資(特にデジタル)
3.俊敏で果断な企業文化への変革
4.国際的な成長戦略を描く
花王にはこれだけの企業価値向上の余地(アップサイド)があるよ!各分野での経営改善を積み上げていくと達成できるよ!
(アップサイドの説明でのウォーターフローチャートの使い方、明快でとても好き)
そのためにこれやろう!これやったら消費財メーカーとしてワールドクラスになれるよ!
1世界への挑戦、もっと新しい市場を獲りにいけることを認識しよう
2ブランドポートフォリオの再構築、成長可能性が高いブランドに集中しよう
3マーケティング戦略、一流のCMOを雇って、デジタルチャネルを強化しよう
4ガバナンス、透明性と開示を強化するためにもブランディングやマーケティングに知見のある社外取締役を雇おう
マーケティング施策をBefore-After形式で提案(しかもイメージ図まで作成)
同業他社と比較して、取締役会の多様性に欠けることを表を用いて指摘
PPM分析もやってた

企業情報:花王

株価:オアシスの主張通り、コロナ前の水準には戻っていない

過去10年の花王の株価のチャート(みんかぶより)

財務情報:時価総額は2.86兆円、マルチプル的には割と期待されている

花王の財務情報(バフェットコードより)

ROEデュポン分解:ここ数年で利益率・資本回転率ともに低下、それに伴いROEも低迷

バフェットコードより)
※ROEデュポン分解の補足:ROE=利益率×総資産回転率×財務レバレッジ

余談:花王は2024年2月にヘルシアを事業売却(toキリン)


生成AIで変わるデザイン・ワークエクスペリエンス

/生成AIは叩き台量産において極めて優秀であり、デザインのワークフローの前提を変えている/

 生成AIの登場以前と以後で様々な領域でワークフローが決定的に変わってしまったor変わってしまうだろう。その典型がデザインだろう。ちなみに私は「デザインの仕事はなくなる!」みたいなベタな未来予測本みたいなことは言わないのでご安心を。ツールの変化によって変わるものがある一方で変わらない仕事もたしかに存在する。私はそれは「意志と美学」転じて「コンセプト作りと評価軸作り」だと考えているが、そこについて詳しくは尊敬するレジェンドデザイナーに託したい。

企業から地域産業、そして伝統芸能まで。多様な分野で佐藤がアイコニック・ブランディングを成功させたのは、クライアントと徹底的に向き合うことで核となる本質的価値を的確に捉え、それをアイコンとして明快にデザインしたからだ。

Pen Onlineより

 ただ”変わるもの”の側はかなり変わるとも考えている。例えば、Mid JourneyやStable Diffusionなどのツールを使い、以下のような流れを踏むことで生成AIの登場以前には考えられなかったスピードで試行錯誤の量が踏めるようになった!

生成AIを用いたワークフローの例
①コンセプトを決める
②プロンプトを打って、叩き台を量産
③生成物をベースに、仮完成版を作成
④評価AIを作って、それに評価させるorアンケートとる

さっそく実際の事例を見ていこう

(1)プラグ社が自社開発の生成AIツール(パッケージの作成・評価)を用いて、伊藤園の「お~いお茶」のパッケージを作成

①叩き台となるパッケージを大量に生成
②デザイナーが叩き台をもとに仮完成品として形にする
③好意度予測などの評価にもAIを用いる
(この事例ではこの会社独自のツールを使用、ただベースはMid Journey・Stable Diffusion・DALL-E 3 などの既存モデルのAPIを使用していると考えられる)

①叩き台を生成(プラグ社HPより)
②叩き台をもとに仮完成品として形にする(プラグ社HPより)
③好意度予測など評価にも生成AIを用いる(プラグ社HPより)
(教師データにはプラグ社の収集した過去の消費者データが使われているらしい)

・評価側の確からしさをいかに担保していくかが課題(お客様にどうやって納得感を提供するか)
・近い将来、エージェントをつなげてループを作り「勝手にパッケージが改善されていく」状態が作れる可能性がある

(2)Concept 451:ヤマハ発動機は新しいコンセプトカーのデザインに生成AIを活用、2400パターンを生成しそこからの試行錯誤を経て実際のプロダクトに

Final Aim・ヤマハ発動機の発表より


今週の生成AI:宣材写真を作ってみよう

 なるほど、では俺もやってみよう。これができるのがこの時代(2024年)の素晴らしいところだ。早速行ってみよう。今回のテーマは先ほどの「スーパー雑誌デー(SUPER MAGAZINE DAY)」の宣材写真!

①コンセプトは決まっているので、プロンプトに落とし込む!

「スーパー雑誌デー」の宣材写真を生成してください。「スーパー雑誌デー」とは知識の幅を拡げるために多様なジャンルの雑誌を10冊一気に読む日のことです。

筆者作成

②叩き台を量産!いい感じ

DALL-E 3 良いよな~、ホント使いやすい
(GPT-4を用いて筆者作成)

③生成物をベースに、仮完成版を作成

・タイトルを明確に伝えている左下をチョイス!
・本当ならPhoto Shop等で丁寧に作り込むのもアリだが、今回は加工も生成AIで行ってみよう

最近のアップデートで、生成した画像の一部分をさらに生成し編集できるようになった
MAGAAZ→MAGAZINEに!誤字を修正
(GPT-4を用いて筆者作成)
良い感じ!仮完成品
(GPT-4を用いて筆者作成)

④評価にもトライしてみた

/まず広告の評価基準を作成、それに基づいて画像を評価し点数をつけ、講評レポートとして出力する/

プロンプト

あなたは広告分野に知見をもつコンサルタントです。以下の画像は「スーパー雑誌デー」という知識の幅を拡げるために多様なジャンルの雑誌を10冊一気に読む日のキャンペーン画像です。最初に広告の評価基準を策定した上で、この画像の広告としての点数をつけてください。

筆者作成
GPTが提案してくれた評価基準

広告の評価基準を設定し、その基準に基づいて画像の広告効果を評価します。以下は一般的な広告評価の基準です:
1.目を引く度合い: 色彩、レイアウト、イメージなどで、視覚的に注目を集めるか。
2.内容の明確性: 広告の目的やメッセージが一目で理解できるか。
3.ターゲットへの訴求力: 想定されるターゲットオーディエンスに適切にアプローチしているか。
4.創造性とオリジナリティ: 独創性や新しさがあり、他の広告と区別できるか。
5.行動喚起の明確性: 見た人がどのようなアクションを起こすべきかが明確か。

GPT-4を用いて筆者作成

以下がGPTによる宣材写真の評価

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広告講評レポート: 「スーパー雑誌デー」

講評概要:
「スーパー雑誌デー」と題された本キャンペーンは、読者に多様なジャンルの雑誌を通じて知識を広げることを奨励するものです。本キャンペーンの広告は視覚的魅力と明確なメッセージを前面に出しています。

評価基準と得点:

  • 目を引く度合い: 8/10

    • 豊かな色使いと雑誌の表紙が配置されたデザインが視覚を引き付ける。

  • 内容の明確性: 9/10

    • キャンペーン名が大きく目立ち、内容の理解につながる。

  • ターゲットへの訴求力: 7/10

    • 読書を好むオーディエンスには魅力的だが、幅広い趣味に訴求しているとは限らない。

  • 創造性とオリジナリティ: 7/10

    • 複数の雑誌を使用した創造的なアプローチが見られるが、独自性には多少欠ける。

  • 行動喚起の明確性: 6/10

    • 読者に何かをするよう促しているが、具体的な行動指針が明確ではない。

総合評価:
37/50点

この広告は強い視覚的魅力を持ち、その明確なメッセージで知識欲のあるオーディエンスに対して効果的に訴求しています。しかし、視聴者に具体的な行動を促す要素がさらに強化されれば、より高い成果が期待できるでしょう。読者が何をすべきか、どのように参加できるかを明確に示し、キャンペーンの目的を達成するための行動へとつなげることが重要です。

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今週の映画:オッペンハイマー

/オッペンハイマーの人生を追体験することを通じて、”私たちの問題”を追体験し、考え・悩む映画体験を/

 今週の映画はあの話題作「オッペンハイマー」だ。アカデミー賞作品賞、原子爆弾の開発というテーマ、クリストファー・ノーラン監督作品、豪華な俳優陣、など観る理由はいくらでもある。キッカケはなんでもいい。”私たちの問題”について考え・悩むために皆さんにこの映画を観てほしいと思う。

 今週読んだ雑誌 FLIX Plus vol.52 にこの映画の特集があり、主演のキリアン・マーフィー(オッペンハイマー役)によるクリストファー・ノーラン評・映画評がとても印象的だったので紹介したい。

彼は観客に十分なレベルの知性があると考え、決して見下したりしません。そういうところがずっと彼を好きな点です。彼は決して映画で人に指図したり、説教したりはしないです。彼の映画は観客に対する一種の挑戦で、それに立ち向かう必要があります。しかしその報酬は莫大なものです。

キリアン・マーフィー(FLIX Plus vol.52より)

これは歴史の教訓ではない。説教でも治療でもない。『これが、あなたがこの映画から学ぶべきことです』なんて言い方はしない。でもこの映画を観て、今日の世界で起きていることの中に同じようなことを見つけ、それを考え、警戒の目で見ることができるようになるというのは間違いありません。思考を刺激し、あなたを試すというのは映画作りの最も重要な役割だし、僕が思うにクリスは、それを興味深い、そして挑発的なやり方でもってやり続けているのです。

キリアン・マーフィー(FLIX Plus vol.52より)

 この映画は、他のクリストファー・ノーラン監督作品がそうであるように、決して簡単に理解できスカッとする映画ではない。観るものに、答えのない問いと矛盾をつきつけ「あなたはどう考えるか」と問う。一般解が存在しないのはもちろん、複雑という言葉では不十分なほど複雑で、問題が整理できるかすら怪しい。映画を見終わった後もその明確な答えは得られないし、モヤモヤして頭の片隅に残ってふとした瞬間に考えてしまう。そんな映画だ。(今週の格言で扱った楠木先生の文脈で言えば、この映画を観て考え・悩むことは、自らの固有の価値基準を形成するための最高のトレーニングとなるだろう)

 内容について考えたことをネタバレしない程度にお伝えすると「巨悪っぽいことは、やはり、正しいと盲信してるやつが正しいと思ってやるもんだよな」「正義はほぼ主観だし、善悪は相対的で局面や時間軸によっても変わる」「気がついたときにはPoint of no returnを超えていることってあるよね」といったところだろうか。
 先ほどの引用にもあるように「歴史の教訓ではない」点も興味深い。原爆の問題は「オッペンハイマー」の時代から80年近く経ったこの時代でも、現在進行形で世の中に潜在しており、答えは出ていない。出る見込みもない。     
 このままだと人類は再びAGI(汎用人工知能)ないしCRISPER-Cas9(遺伝子編集技術)で”オッペンハイマーする”確率が高いとも感じる。どこかの誰かが勝手に開発を続けて、人はマクロでは便益(メリット・ラクさ)に勝てない以上、テクノロジーの進歩を止めるのは基本ムリな話だ。
 ①原爆の問題も現在進行形である、②新技術においても同系統のリスクがある、③望む望まざるに関わらず影響を受けることを避けられない。この3点においてこれは”私たちの問題”であり、映画「オッペンハイマー」はそのことを改めて突きつけてくれる。

余談:かつて物理学者を志していた者としては、序盤の物理界のレジェンド・ラッシュはテンションが上がった。ローレンス(サイクロトロン、粒子加速器を発明)、ハイゼンベルク(不確定性原理で有名)、ボーア(原子模型で有名)、など超大物が勢ぞろい。もちろんアインシュタインも。(一人称がオッペンハイマーなので当然なのだが笑)

アインシュタインとの会話、実に味わい深かった(Yahoo Newsより)

質問コーナー

今後に乞うご期待!

今週もありがとうございました!


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