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ビジョン作りは激流下りのあとに 「ビジョンとともに働くということ」を読んだら、小さなボトムアップの大切さを痛感した話

「山下さんは、どこに向かっているんですか?」

そんなことを言われることがよくある。

文具屋さんとしての営業。
三角コーンをオリジナル商品として販売する。
クラウドファンディングで商品を販売してみる。
商工会議所で教わった補助金の情報をnoteで共有する。

お店を初めて4年目。
ただでさえ手探りでお店を始めたのに、新型コロナウイルスの影響も合わさって、どこに進めばいいのかがわからない時代。
できることは全部やってきたし、失敗することもたくさんあった。

でも、そろそろ「うちのお店はどこに向かうんだろうか」ということを改めて考えてみたくなってきた。
今回はそんなきっかけをくれた「ビジョンとともに働くということ」という本で個人的に学んだ内容を踏まえて、うちのお店のこれからを考えてみようと思う。

困ってない人は問題を見つけられない

ビジョンを思い描くにあたって、現状に困ってない人は、そもそもビジネスをして解決するべき「問題」を見つけられない。
そんな話が冒頭から出てきて、たしかに……となった。

冷蔵庫も洗濯機もテレビもなかった時代とは違って、それらの道具が当たり前のように手に入る時代。
そう遠くない過去の人から見ても、現代人の生活は一種の理想郷に見えてもおかしくない。
こんなに便利になったのに、何に文句があるの!?と叱られてしまえば、おっしゃるとおりだなと説得されてしまいそうな気もする。

しかし、便利な道具をたくさんの人が持つ時代にも、目を向ければ新しい問題は生まれている。
石油などのエネルギーが枯渇していくことや、排気ガスなどによる環境問題なんかは誰もが問題として認識していると思う。

でも、恐らくそれらの問題はとっても規模がでかい。
イーロン・マスクよろしく「クリーンエネルギーのエコシステムを構築する」なんてことを言える人がどれだけいるだろうか。

だから、うちのお店もビジョンを掲げるとすればもっと小さな問題から想起されるものな気がする。
私は自他共認める「不器用な」人間なので、困るということには正直事欠かない。

世の中がどんどん便利になって、道具を使ってできることが増えたのはいいけれど、その一方で人間の仕事をする効率の平均値は上がりすぎている。
最先端の技術を使い、見たこともないような新しい発明をするという問題解決はこれまでもこれからも錚々たる企業が研究開発費を投じて行っていくことだと思う。
でも、自分はそのトップどころか平均スピードについていくので必死なのだ。
それならば、その平均スピードについていくための道具や方法をビジネスにしていく……というのがまだ現実的と言えそうだ。

こんな風に、問題は困っていないと見つけられないという時代は、逆手に取れば困りごとが多い不器用な人間にこそ価値をもたらしてくれるかもしれない。

自分に背負える問題を見つけるその日まで

日本のサラリーマンの仕事効率を3倍にする!

そんなビジョンは当然のごとく背負えない。
本を読んでいても、自分がギリギリ背負える範囲でビジョンを作る……というようなお話があり、設定方法は身の丈にあった言葉を選ぶ必要があるなと感じた。

でも、考えても考えてもこれといった言葉がするっと出てこない。
めんどくさい事務作業を助けてくれるみんなの用務員さんとかが自分の中のイメージとしては存在するけれど、ビジョンとするにはちょっとぼやけてる。

そんな中、この本を作られた中川政七商店の中川淳さんともうひとりの著者である、山口周さんのツイートが流れてきた

かっこよく大風呂敷を広げるのではなく、目の前の問題に取り組んでいくことの大切さに触れられていて、とても勇気をもらえる言葉だった。

以前、リクルートワークス研究所の大久保幸夫さんが「キャリアは前半と後半でまったく種目が変わる。前半は激流下り、後半は山登り」とおっしゃっていて、とても良い表現だと思ったんですよ。前半は自分でコントロールできない激流下りみたいな日々だから、岩にぶつかったり転覆したりしないようにしながら、とにかく生き残らなくちゃいけない。それをやっているうちに、いろんなスキルが身についたり、仲間ができたり、信用ができたりしていくわけです。
 その激流を下っていくと、いずれはなだらかな流れになる。そのまま海に出ちゃう人も多いんですが、なだらかな川面から周囲を見渡すと、いろんな山があることがわかるんですよ。だらだらとそのまま海に出ていかない人は、そこで「俺はあの山に登ろう」と自分で決める。たとえばファイナンスの専門家になって経営をサポートする立場になろうとか、もちろんなかには経営者になろうとする人もいるでしょう。何であれ、登る山を決めればそのために何をすべきかがわかりますよね。

ビジョンとともに働くということ 「こうありたい」が人と自分を動かす
山口 周 (著), 中川 淳 (著)
p263より

実際に本の中でも、こんな話が出てきて、たしかにうちも生き残るためにできることは全部試している。「どこに向かっているんですか?」と言われるのも、社会や時代という激流の中で必死に飲まれないように試行錯誤をしているからに他ならない。

そんな状態ではじめから「こうしたい!」という気持ちを持ちすぎると、実際の現実とのギャップが深すぎて、事業自体が成り立たないことも起こりうる。
自分で背負えるギリギリのビジョンをつくるというのは、そもそも事業を営む中で、その範囲を客観的に理解しなければ無理なことでもある。
そういった意味では、時折どこに向かおうかという「仮説」を自分のなかに設けて、だめだったら変えながら少しずつ行きたい場所に向かっていくというのも、うちのお店には合っているようにも思う。

激流の中だから、なんでもかんでもやるというのも一つの手段だけど、ものに溢れ、無料でもいらないものはいらないと言われる現代においては、自分の中で熱をもてるなにかがないと、そもそも問題をキャッチできない。
けれど、それはビジョンと呼ぶほど大げさなものじゃなくて、北か南かぐらいのゆるやかなコンパスに従っていくといったものでいいのだろう。

そういう意味では、三角コーンで公共空間においてもかっこいい看板を作ったり、

薄型のノートに付け替えできるハードカバーを作ってみたり、

自分の好きなリュックに後付けできるチェストストラップを作ったりしているうちのお店のあり方は「常に小さなボトムアップ」としてのアプローチだし、おかげさまでオリジナル商品としてご好評をいただいている。

大きな視点と小さなボトムアップを行き来しながら、少しずつ事業が大きくなっていったとき、ビジョンはより明確に必要になっていくのだと、本を読んだ今ならより理解することができる。

焦らずに思考と試行を繰り返しながら、どこへ向かっていくのかを決める日まで、この本は大切に読み直していきたいなと思った。

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