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パンと日用品の店 「わざわざ」の平田さんから学ぶ 「JUST DO IT」と「VISION」のバランスの話

「わざわざ来てくださってありがとうございます。」

ご来店されたお客様にそう言ってしまう程度に、うちのお店は陸の孤島にある。
徒歩5分のところにできるはずだった駅の建設計画は、昨年完成予定から3年延長となってしまい、最寄り駅からは長い上り坂を登るか、バスに乗るかしか選択肢がない。
思わず、たまたま立ち寄ったお店で見かけた「SO FAR(めっちゃ遠い)」とだけ書かれた本の栞を店舗入口に飾るぐらいには、僻地なお店だという自覚はある。

そんなうちのお店だから、長野県にある「パンと日用品の店 わざわざ」さんのことはずっと気になっていた。
クネクネとした山道を登った場所にあり、公共交通機関が通ってない立地にあるにも関わらず、度々お名前を目にするわざわざさんは、うち以上にアクセスが悪いはずなのにたくさんのファンがいらっしゃる。

今回はそんなわざわざの代表取締役である平田はる香さんのお話をきくことができるセミナーがちょうどあるとお聞きして、オンラインで参加させていただいた。

自分自身もお店をはじめて3年。
まだまだ比較するのもおこがましい規模だけど、個人的に勉強になったことについて今回は共有させていただければと思う。

とりあえずやっちゃえばいい

「スモールビジネスで奈良を元気にする!」をビジョンに掲げる中川政七商店さんが、奈良で起業を志す方にヒントや機会を提供することを目指して行ったセミナーなので、お店をこれから始める人に向けてどんなアドバイスがあるか。
そんな質問に対して、平田さんが「やれ」というか「やってみればいい」とおっしゃっていたのがとにかくまず印象的で、そして共感した部分だった。

大きな借金をしてはじめたのではなく、売上規模にあわせて少しずつ事業を拡大して、いまや売上規模が三億円を超えたわざわざさんだけど、はじめからビジョンが言語化されていたわけでなく、実際に販売をしてみてわかってきたことも多いというのは、見様見真似で文具屋をはじめた自分にも少なからず覚えがあることだ。

私の場合、初めは収納用品をメイン商材にして売りたい!と思ったけれど、実際にやってみると収納用品はとにかく「配送料が高く」「倉庫スペースも圧迫するし」「お客様が持って帰るのにも車が必要」などと、商いを行う上で難しい側面がいくらでも出てきた。

そんなこと、ちょっと考えてみればわかったことじゃないの?と思われるかもしれないけれど、収納用品のことに限らず、誰もやっていないことはネットに情報がそもそもない。
もちろん、誰もやっていないからこそチャンスもあるのだけど、うまく行かなければなぜうまく行かないかという問題に向き合わなければいけない。それは、事業をはじめずに想像しているだけの状態と、実際にやってみて、日々発生する家賃やスペースを圧迫する在庫の山を見上げてみないと本当に解決策は浮かばない。

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ひとまずは自己資本でできる範囲で、責任をとれる範囲で小さく試してみる。
メルカリやヤフオクで売ってみてもいいし、BASEやSTORESなどの初期コスト無料のネットストアとインスタグラムだけでも十分だ。
実際に私も上の写真のように、自宅で使わなくなった文房具を試しに販売してみたことからいまのお店がはじまるきっかけをつかんだ。

意外とうまくいくかもしれない。
でもうまくいったその先にも、人件費や事業拡大などいくらでも新たな課題はみえてくる。
そんなとき立ち返る場所として、平田さんは「ビジョン」の話をしてくださった。

最初に設定するべきなのは抽象的なビジョン

「次に進むためのやめる決断 取捨選択はどうやってすべきか?」

そんなセミナーのテーマに対して、平田さんは「人々が心身ともに健康である社会へ」というわざわざのビジョンに常に立ち返っていることを話されていた。

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スライドは許可を得た上で、
イベントで使われていたものを掲載させていただいております)

例えば、パン屋さんを営んでいく上で、長時間働くことが自分の健康に問題を与えるほどになってしまったとしたらどうだろう。
「パン屋を開く」ことをビジョンにしていたとしたら、「パン屋さんはそういうもの!」とか「パン屋さんを続けるために頑張らないと!」といった我慢に陥りがちになってしまう。実際、飲食店が3年程度で廃業をすることが多いのは立ち返るビジョンにも問題があるのかもしれない。

でもわざわざさんのように、「人々が心身ともに健康である社会へ」をビジョンとして考えているとしたらどうだろう。
心身ともに健康である社会を、お店で働く人が享受できないのはおかしいのではないか。人々が心身ともに健康である社会を継続させたいのに、自分が過労で倒れてしまったら続けていけないとも考えられる。

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人員増加、設備投資、パンの種類削減、そしてレシピ変更。
ビジョンをもとにわざわざさんの場合はこれらの選択肢を、事業の成長にあわせて全て取り入れていったという。
それも「働き方を改善する」ことだけを目的にしてしまえば、ただの効率化で場当たり的になってしまうところを、ビジョンがなんのための改善行動なのかを教えてくれるので事業のブレがなく走っていけるということなのだと思う。

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はじめは漠然と「パン屋さんをやってみたい」という思いでとにかくやってみたらいい。
けれど、お店をはじめたのなら、「WHAT=何をしたい」のかよりも踏み込んで「HOW=どうしたい」のかを考えてみる。

経営は決断の連続だ。
お金も、人も、資源も、時間もいくらでもかけようと思えばかけられてしまうが、かけた分だけ成果がでなければ早晩立ち行かなくなる。
だからやるべきことを絞って、時にはやらないことを決める必要が出てくる。

任天堂のマリオの生みの親、宮本茂さんの考え方をあらわした言葉で、「いいアイデアは複数の問題を一気に解決する」というものがあるけれど、そもそもどんな問題に絞って解決を目指すのかという「判断基準」がなければならない。

これは、冒頭の「とりあえずやっちゃえばいい」という話とは相反するように見えるけれど、それは違う。
とりあえずやってみないと、どうしたいのかもわからないのだ。
でも、やってみたことを惰性で続けていたら、両手がいっぱいになって次の扉を開くためにドアノブがつかめない。
その時に何を手放して、どこに向かうのかを決めるために立ち返るものがビジョンなんだなと、今回の平田さんのお話を私はそんなふうに受け取った。

「JUST DO IT」と「VISION」の往復の中で

とりあえずやってみる。
そんな言葉から、NIKEの「JUST DO IT」という言葉を思い出した。
頭でっかちに実践なくビジョンだけを考え続けても事業は走り出さない。

それでも、ビジョンがなければ「やってみた」ことに囲まれて動けなくなるというのも自分自身体験してきた。

今回平田さんのお話をきいて、大切なのはそのバランスのように思えたし、改めてビジョンについて考えてみようとも思えた。

そして、あくまで私の感じた内容の記事だけど、読んでくださった方が一歩踏み出す勇気につながればとても嬉しい。

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