【ウルトラニッチ】 小さな発見よりも、「から始まるモノづくり」の濃さに打ちのめされた話
レ、レベルが違いすぎる……
三角コーンでできたかっこいい看板、A4コピー用紙の予備がピッタリ収まる箱、後付できるチェストストラップ……など、かなりニッチな商品を自主企画して作ってきていることもあって、うちはニッチだなーと漠然と思っていた。
「小さな発見から始まるモノづくりのヒント」という副題につられて手にとった川内イオさんの本「ウルトラニッチ」
この本に出てきた10人の人たちは、うちのニッチなんかとレベルが違った。
そりゃあ本に載るような人たちなので、自分のようなボンクラとはわけが違うのは分かっていたけれど、なんというか格が違う。
それは、この本で描かれている内容が、「小さな発見」そのものというよりも、その発見をどうモノづくりとして成立していったかにこそあるような気がした。
今回はそんな「ウルトラニッチ」を読んで感じたことを備忘録的にまとめておきたい。
小さな発見のあとにあるもの
動物専門の義肢
廃棄野菜でつくるおやさいクレヨン
3Dプリンタで成形する骨格標本
様々な実例を取り上げながら、小さな発見が事業として形になり注目を集める姿を描いているこの本を読むと、勇気が湧いてくる。
勇気が湧いてくる……のだけど、どちらかといえば「小さな発見」を突き詰めていく人たちの旅路にドキドキしてしまう。
それは多分、自分自身が個人事業主としていろんな想像をしてしまうからだと思う。
その商品が5年、10年見向きもされなかった期間。
文字で表してしまえば一文で終わるけれど、ハッピーエンドが確約されていない中でそこで走り続けることの大変さは身に沁みているし、数日間だって辛いものは辛い。
展示会に出る時にかかる費用。
補助金申請にかかる労力や手間。
もし失敗したとしたら在庫を抱える恐怖。
そういった日の目を見ない期間のことも、成功したこと以上にこの本では描かれている。
「小さな発見から始まるモノづくりのヒント」という副題は、それだけ見れば、誰もが見過ごしているお宝のような何かを見つければ、あなたも成功できる!みたいな明るいストーリーを妄想してしまいがちだ。
けど、この本ではそのしんどい日々のことも、もちろん全てではないにしろしっかりと描かれている。
いま、副業をすすめる世の中の流れの中で、たくさんの人が事業を起こすことに興味を持っていると思う。
なにかちょっとした切り口で、世の中を変えるような商品がうまれるかもしれない。
その可能性は限りなくゼロに近くても、ゼロではない。
でも、この本で取り上げられている事例は、成功するかわからないようなことだけど、「どうしても気になる」個人的なひっかかりから打ち込み続け、できた商品もどのように世の中に受け入れるようにしていくのか……といったことまで描かれているのがとてもおもしろいし、参考になった(自分にはこれはできないなという事例も含めて)
とはいえ、ネットストアも無料でとりあえず始められるし、クラウドファンディングを使えばあらかじめ商品の需要も予測しながら、モノづくりがはじめられるという点においては、事例で紹介されてきた人たちよりも、私達は商いをはじめやすい時代に生きていると思える。
ただ、「ウルトラニッチ」と呼べるような「小さな発見」は、そもそも何か自分の気になる分野について何年も何年も手をかえ品をかえて触れ続けていないと、そもそも価値に気づけ無いようにも感じる。
更にせっかく見つけた小さな発見を、モノづくりとして始めるためには「覚悟」も必要なのだと、「ウルトラニッチ」は読者に語りかけてくれるように思える。
会計ソフトのfreeeが初めて出版する本として出したのが、経理入力の方法ではなくこういった本であるというのもとてもおもしろいと思う。
夢だけを見せずに、現実的な苦労も提示して、初めてヒントとして役立てられるということを考えると、こういった切り口での書籍はとても役に立つ。
これから事業を始める人や、既に何かを仕掛けている人にはとてもいい本だと思う。
そして自分もこれからも負けずに、ニッチな道を頑張っていきたいと思う。
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