自転車を買った話2

スポーツバイクの新調をしたい母と翌日また別の自転車屋へと向かった。
距離は短いが斜度13度を超える坂が道中待ち構えているため非難を受けながら母は年季の入ったMTBで、私はクロモリロードで向かった。

フロントギアを軽くするように指示をすると、「ギアが変えられない」というのだ。様子を見てみるとガチガチに張られたワイヤーに、破損しているアジャスターボルト。ここから先はもはやインナー縛りで問題ないと判断できる上り坂と駅前の混雑した道のみ。自転車屋にたどり着いて修理をお願いするしかあるまい。破損しているアジャスターボルトをごまかしてワイヤーにゆとりを持たせなんとかインナーに落とすことができた。

道中はゆっくりと進み、何とか自転車屋にたどり着いたのだが、とてつもなく混んでいる。

そう12月である。世間様はクリスマスなのだ。
子供用の自転車を買いに来たのに本気のMTBをねだられ予算オーバーに青ざめる両親と、全力で子供の後押しをすべくスポーツバイクの良さをPRする店員の生き生きとしたやり取り、買ったはいいものの隠し場所に苦心するサンタさんであふれていた。

そして母は迷わずロードバイク売り場へと向かった。
え?
あれ??
MTBやクロスは??

すでに彼女の心の中では「グラベルロード」を買うと決め込んでいたのだ。

確かにそうだ。彼女は「ディスクブレーキ」と「タイヤが太い」「フロントシングル」以外の条件についてはほとんど何も触れていなかった。
MTBよりもう少し遠くまでサイクリングしたいと考えていたらしかった。

そして店に入って10分ほど回ってみて、「この自転車のサイズは乗れそう?」と確認してきた。
サイズは470。少し小さく感じても大きすぎることはない、むしろベストなサイズ感だと思うと話をし、試乗するように勧めた。

母が気に入ったようだったマジィのグラベルロードは、フレームカラーはライトグレーでサドルやバーテープは皮やコルクをイメージしているようなレトロなカラーリング。さらに機械式ディスクブレーキと700 x 35Cのタイヤは希望通りのレトロなデザインに機能を兼ね備えていた。

1点、眺めながら心配だったのはフロントが2枚であること。リアはかなりワイド目の11-34Tなのでそれほどフロントのギアチェンジを積極的にする必要はないかもしれないが、懸念点である。

そんなことを考えていると店員さんが自転車の用意をしてくれた。サイズ感はやはりばっちり。
フロントシングルのモデルもあるらしいが、納期未定の上、カラーが違うとのこと。

もう少し悩むのかなと考えていたところで、「乗ってきた自転車は引き取ってもらえるんですか」と話し始めた。
店員さんは「買取はやってないけど処分はできるよ」といった内容で返答をし、しばらく母は考えたのち「乗って帰る」という決断をした。

びっくり。おう。かうのな。私のロードで少し練習すればいいのにと思いながら、MTBを乗り捨て、グラベルで帰ってきました。


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