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心奪われる大自然と人の生き様にうっとり「パワー・オブ・ザ・ドッグ」見た

The Power of the Dog(2021年製作の映画)
鑑賞:2022.3.11、記事公開:2022.3.21
監督、脚本:ジェーン・カンピオン

※ ※ ※ ネタバレあります ※ ※ ※


アカデミー賞レースにもノミネート中。良い評判を聞いたのでタイミングも良く。

何気なく見たら何とも難解な内容に面食らってしまった。

何の話かと思えば最終的にミステリー?と思いつつ、まあそんな単純な事でも無さそうだし。

もしこれが聖書の引用だったら、そん時は知らない。

映画の見どころは、カンバーバッチの前時代的な強権を振りかざす男性というキャラクターなのに極めて複雑な属性を持つ人物を作りあげていたところと、息子役のコディ君の美しい面影か。

映画が進むほどをいろんな関係性がカンバーバッチとコディ君の間に張り巡らされていき、展開に目が離せなかった。

ふっくらとしていてやけに野暮ったかったので初めは気が付かなかったけど、キルスティン・ダンストが良かった。美しさでやっていたけど体型も崩れストレスから酒に逃げてしまうダメな母親だけど故にどうしても女が漏れ出ている感じも良く出てて良かった。監督が女性なので女性ならではの視線で容赦無く描けていて素晴らしい。今までのベストキルスティン・ダンストは「ドリーム(https://filmarks.com/movies/69664/reviews/43759593)」の嫌な女上司だったけど、今作で更新。

弟役のジェシー・プレモンスさんも強権的な兄に従うしかないけど従いたくないやるせなさが良く出てて素晴らしい。

と、どのキャラクターも彼ら彼女らなりの人生を経た人達がそこにいるようで、お話云々とは別に魅力的な映画だった。

お話の方は、わからないっちゃわからないけど、犬は誰だったのか。少年はどこまで意図的にフィルの殺害を計画していたのか。ミステリーかと思っていたけど、最後に引用された内容次第では、“そういうもの”なのか。

ちょっと考察。

 気になるポイントはフィルがウサギを脅した時にできた傷はピーターがどこまで意図したものなのか。傷が無いと病気は感染しない。だから、ピーターがフィルを病気に感染させるつもりなら、フィルの傷も計画されていなければならないはず。が、うさぎのシーンでピーターが何かした様子はわからなかった。聖書の予言のようなものかとも思ったけど、一つの考えとして、フィルの手に傷が無ければ他の手段で傷を付けていたのかもしれない。「今回ピーターは偶然できた傷を利用した」ということか。

 だとしても母親がなぜあんなに必死に皮を売ってしまったのか。ただのいやがらせ?これも聖書での記述以外理由はわからない。

 犬は誰だったのか。タイトルを「犬の力」か「犬を退ける力」か解釈にもよる。「パワー オブ ザ ドック」は聖書の一節で説明するまでも無い教訓があるかもしれない。(調べる前に考察してみる)

フィルもピーターもインテリなので、犬は無知や野生性を象徴している訳では無い。犬が野蛮な象徴だとしたら、フィルの気に入らない女への圧のかけ方は狡猾で確実に効果をあげており野蛮な感じはするけど、ピーターもウサギの解体や母を守るためには人を殺すあたりに野蛮がする。となると、犬同士の縄張り争いあたりが落ち着きどころとなるがどうだろう。

もう一つ省けない見どころとしては、直接的では無いけどフィルとピーターの恋の行方か。徐々に手玉に取られるようなフィルと、見た目とは裏腹に意思の強さを見せてくるピーターの濃厚な関係性は(おっさんなので、同性愛の部分は理解できないけど)見応えがある。

ビジュアルも綺麗で、どのロケーションもうっとりするような美しさ。リアルっぽい牧場の生活も興味深いが、やはり今作は登場人物たちの有様の魅力が素晴らしかった。

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