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相談事例と天風哲学(事例13) 18

(洋菓子製造・小売・卸業の例-13)
  当社長は結婚式場や洋菓子製造販売、大型店内へのテナント出店など過去に3回会社を設立してきたが、業績悪化に伴い、いずれも廃業を余儀なくされた。
 現在、社長の年齢は72歳であるが、新たに洋菓子店を開業したいという相談が1年前にあった。商売に対する意欲は旺盛で前向きであることに感服である。
 
 社長の性格や新たな借入金負担などを考慮して新規開業をやめるようにアドバイスしたが強硬出店となった。案の定、店売りだけでは採算が合わない。仕方なく東京の卸業者を経由して大口販売店の納品を開始した。毎月相当額の納品を行っているが、儲けも少なく、やればやるほど赤字が出ている状態となった。
 
 今回の相談は廃業も含めての対応方法である。同じような過ちを何回も繰り返しているこの社長の動きを振り返ると、何が問題だったのか。
 第一に言えることは、社長の経営に対する考え方が自分本位、自分の趣味の延長、常に経営に携わっていたいという自分だけの強い願望、そして思いつきで行動してしまう性格等が挙げられる。すなわち、社長たる自覚や信念、そして経営哲学や資質がないことである。
 
 天風哲学がいうところの「積極的」とは、ただがむしゃらに前に進むことをだけではない。自分の利益を獲得することも重要であるが、「他人のため、社会のため」の事業が前提でなければならない。
 経営的にみれば、企業存在の意義は、社会への貢献を行うからこそ、自社の存在と維持発展があるということを忘れてはならない。自分本位や自社のみの欲望を満たすことを最大の目標にしてしまうと、安定的経営を維持することは不可能となる。
 
 京セラの故稲盛和夫元社長が常に「利他のこころ」を挙げ、その気持ちで経営を行ってきた結果が現在の京セラや日本航空であり、名実ともに日本代表する会社となっている。ここでもわかるように、立派な会社にはそれなりの考え方や理念というものがしっかりと確立されているのである。

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