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天風哲学で学ぶ社長のあるべき姿 17

後継者問題と自主的廃業のすすめ(17)
今、経営上における大きな問題点の一つに「後継者不足」がある。中小企業における社長の平均年齢は60歳後半で70,80歳の社長も多くなってきた。跡を継ぐ後継者が不在なので黒字でも廃業せざるを得ないという議論がある。
 
以前に商店街における跡継ぎ問題が話題になった時期があった。跡継ぎがいないため空き店舗となり商店街の衰退につながるという内容であった。
当時私は商店街活性化の専門家として県内の中心市街地の活性化に取り組んだことがあった。この時もこの問題にぶつかり大いに悩んだものである。
後継者不在という理由は確かにそのうちの一つであると思うが、さらに重要なことは当時の商店の多くが郊外の大型店などの影響で売上低下に陥っていたことである。
 
結局、後継者になるには、跡を継ぐべき自店が繁盛していること、あるいは将来に夢があることなどが前提条件となるのではないのか。もし将来に希望が持てるなら、例え長男が跡を継がなくても、従業員や親戚など他人からでも跡を継ぐ人は現れるのである。
例えば長男が後継者だとしても、年々低迷していく会社、そして苦労しながら働く親の姿や愚痴を聞かされたなら、積極的に跡を継ぐ気持ちが薄れていくのも当然である。
 
2019年の中小企業白書によると、黒字で廃業を決断した社長のアンケートが載っているが、廃業を決断した理由で最も多かったのは「将来に不安がある」からであった。
後継者がいても将来性がないので、今なら廃業できるという思いでの決断であったと思われる。最悪の状態(破産処理)になることを避けるため黒字のうちに見切りをつけるという動きもかなり目立つようになってきた。
 
ここで問題にしたいのは、「黒字での廃業」を少しでも阻止しようというのなら道理にかなうが、赤字会社の撤退は致し方がないと言える。また、現在が黒字でも将来に不安を抱いていれば早めの撤退も意思決定の一つといえよう。
ただ、現在多くの中小企業で後継者がいないという多くの議論は、例え息子などの跡継ぎがいたとしても、跡を継ぐことで将来への不安を感じるからであり、要はその経営に将来性があり希望と夢があると判断すれば積極的に後継者として跡を継ぐのではないだろうか。
 
後継者問題は国などの施策によって対応するのではなく、ある意味で流れに任せていくこも必要であり、新陳代謝も重要な動きの一つである。将来性のない企業を施策等の支援で無理に継続に振り向けても、近いうちに廃業に追い込まれることは明白である。ならば、廃業も正しい導き方によって支援をしていくことが望ましい。
その意味でも企業や会社は将来性のある希望に満ちた事業展開を目指すべきであり、それでこそ後継者は自ら名乗りを上げて跡を継ぐものである。
 
一方、戦後復興の波に乗り高度経済成長時期に相次いで創業した会社は2代目、3代目の社長に移り、多くの会社が岐路に面している。今こそ新陳代謝を活発にし、時代にマッチできない企業は積極的に転出(廃業)し、新たな企業の創出(創業)を期待すべきであろう。
将来に対する判断は社長自らの意思決定が重要であり、他人の意見に左右されるとか、将来への不安が払拭できないなら、潔くし退出するも必要であろう。
 
天風氏は「自分で考えで考え切れないことはするな。経営において右に行くか、左に行くのか重大な岐路に差しかかたとき、他人に聞いて判断するようならやめてしまえ」と。


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