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海カヤックはけっこう大変(でも楽しい)

「がんばろー!」
「がんばろー!」
細いカヤックの下では大海がうねっていた。
強い日差しを遮るものもない、大自然の外縁に身を投げ出し、
二人は声をかけあい、勇ましくパドルを動かし始めた――
 
 
My better halfのRとともに人生初の屋久島旅行、3泊4日を楽しみまくってきた。
その最終日の午後に、冒険心にあふれる茶ぶどう(旅行プラン担当)が選んだのは、シーカヤック。
海でのカヤック遊びであった。
 
私はカヤック・カヌーは何度か経験しており、楽しい思い出がたくさんある。
(参考:板室ダム湖)

Rはまるきり初めてだった。
(今思えば 初心者をいきなり「海」に連れ出すという 鬼畜の所業……)
 
集合場所からガイドさんの車に導かれ、車担当のRの運転で海へ向かった。
屋久島の南部。バリバリの外洋が広がっていた。
 
今回私たちのほかに、一人旅の若い女性が参加。
私もあんな感じで一人参加なんだよないつもは、と思って眺める。
屋久島は女性一人旅も多い。治安がいいし、観光しやすいのだ。
 
さて、目の前には細い二人乗りカヤック。これは私も初めて。いつもは一人乗りでもっと安定感がある。
こんな細長いので海に出ちゃうのか。大丈夫なのか。
 
パドルの動かし方を陸で習う。これはSUPなど少しやっていれば要領がわかる。(RもSUP経験あり)
特殊なのは、二人乗りの後部座席に乗る人が足を使って船の尾びれを操り、方向づけをすること。車のペダルと同じらしい。後ろに座るのが「船長」である。ここは車が運転できるRにお願いする。(初心者に大変な方を任せるという またしても鬼畜の所業)
 
救命胴衣、岩場で滑らない靴、カヤック内部に水を入れないためのスカート(便利!)も装着し、いよいよ乗船。
乗る時は尻からいけ。OKOK。

わーい 海きれい

「がんばろー!」
「がんばろー!」
Rと私は元気にこぎだしていった。
が。
ものの数秒でわかった。これは大変だ。

船長R撮影 茶ぶどうの後ろ姿

私が今まで体験してきたカヤック・カヌーは全て、湖だった。
波なんか立たない、ただただ穏やかな湖面。パドルを動かせばすうっ……と船は思い通りに動いた。
それが、どうだ。
ぶぅおん、ぶぅおん、と波が大きくうねり、カヤックを持ち上げては下ろす。
もちろん晴天で風も穏やか、海も荒れていないのだが、湖とは話が違った。スケールも違った。目の前の海は、果てしなく開けている。
ガイドさんを船長としたもう一艘がどんどん先を進んでいく。速い。
ついていけるのか。
 
海は美しく、よーく見ればウミガメもいたかもしれない。
しかし下をあまり見ていると酔う。てかもう酔い始めている。
 
――我々は再び大地を両足で踏めるのだろうか。
そんな思いがふっと心中をよぎった。
 
「茶ぶどうさん無理しないで! 私がこぐ!」とRが騎士道精神を発揮する。
何を。私だってこげるのだ。さあゆくぞ、沖へこぎだせ!
 
右へ、左へ。声をかけあいながら(というかRに声をかけられながら)、私たちは進んだ。
波の力はすごかったが、恐らくそれが助けてもくれていたのだろう、全く進めないなんてことはなく、なんとかガイドさんたちの船に近づいていった(というかあちらが待っていてくれた)。
 
沖に少しこぎだし、左へいくと、海に滝が注ぎ込んでいた。
「滝が海に直接注いでいるのは日本で2か所だけ」(あとは知床)
「ふはー!」こんな景色は初めて。

すごい! すごーい!

「もっと滝に近づいて!」
そう言われても、滝の近くは水の流れが逆なのだ。なかなか厳しかった。
体力ゲージも底をつきかけたところで、近くの浜に上陸した。
 
砂浜は広くなくて、岩がち。
ガイドさんがあったかい飲み物とクッキーをくれた。ふう。
岩場でトドのごとく転がって休むなどして回復した。RはRで重要な休憩をとった。

秘密のビーチにて。見つけたシーグラスはお土産に

さて少し元気になると、いやまあ見事な水辺である。これは見逃せない。
カヤック用スカートを外して海にざばざば入る。おお、すばらしく美しい海!
「ここあったかい! ここ冷たい!」
山の水が注ぐ汽水域で、海水(黒潮)はあたたかく、川や滝の水は冷たい。楽しい!
テンションの上がった私はついに肩までつかって泳ぎだしてしまった。
やあ、満足満足!

Rといっしょにきれいな水の中

思い思いに上陸時間を楽しみ、もう一度カヤックに乗船、滝に近づく。
「マイナスイオン!」(←理系のRはこのアホ丸出しな語を看過できないらしい)
滝の近くで写真を撮りあうなどし、帰途につく。

大冒険!

ここからがまた大変だった。
少し休んだとはいえ消耗度は二人ともかなりのもの。あっというまに疲弊。
私は両手がしびれてパドルを持つのがやっとというありさまに。
「私がこぐから大丈夫、休んでて!」健気なR。
「ふぃー、うぃー」気絶寸前の茶ぶどう。もう半分も目が開かない……ただでさえ糸目なのに!
 
Rの懸命なパドル操作でカヤックは船着き場へ近づいていった。
いよいよ陸地が迫ると、茶ぶどうもにわかに元気づいた。パドルを手に取り、気合を入れ直す。
するとそれを見て安心して気が抜けたのか、今度はRの具合が悪くなってしまった。
残りは私に任せろ……! の思いでこいでいく。
(あとでRが撮った動画を見ると 驚くほど弱々しいこぎっぷり よくこれで生還できたな)
 
交替でグロッキーになりながらも、我々はなんとか陸に打ちあがった。
ああ、地面がかたい! 揺れてない! 助かった!

二人とも限界です

3泊4日の一大旅行の最終日、最後のイベントとしての海カヤック。
心底、大変だった……
でも、二人でカヤックをこいで、誰もいない浜辺に上陸したり、海にそそぐ滝のしぶきを浴びたりしたのは、とてもとてもよい思い出になった。
 
その後、へろへろになりながらもRが近くの尾之間温泉まで運転してくれて、二人で温泉に入れた。けっこう高温で、「あっち!」「あつっ!」となったけども、すっかり気分が変わったのはよかった。海で濡れて冷えてたからね。

あっつかったけどよかった~

「すぐにもう一回やりたいとは思わないけど、嫌な思い出とかじゃなくて、楽しかったよ」とR。
うんうん。そう言ってもらえるならありがたい。
「すぐにまたやりたいとは思わないけど」とRは数回言った。釘をさしておかねば、茶ぶどうが即、次回の海カヤックを計画してしまうと恐れているのかもしれなかった。私もさすがに懲りたので、次回はもっと穏やかな海でやろうと思う(?)
 
 
 
屋久島には山も川も海もある。豊富なツアーがある。
我々も計4つのツアー・観察会に参加しておおいに楽しんだ。
その経験から言えるのは、
「海カヤック」はけっこう大変ですよ
ということである。
体力と絆が試されるので要注意。

楽しかったねえ

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