R.I.P. Denny Laineーポールの相棒
ビートルズ後追い世代の私にとって、リアルタイムできいたウイングスは宝物であった。
小学生の頃からビートルズをきいていた私は1975年春、中学生になり、ポール率いるウイングスの存在を知った。
(そうか、今はウイングスっていうバンドをやってるんだ。)
すぐにでもレコードを買って聴きたかったけれど、何せお金がない。それにまだビートルズのアルバムで聴いてないものが多すぎて追いつかない。
そんなわけで中1の夏はまだビートルズ一色、夏休み中は毎日Abbey Roadをきいていた。
やがて2年になり、行きつけの近所のレコード屋さんに行ったところ、新発売のレコードに目を奪われた。
Wings At the Speed of Sound
おお、ウイングスの新譜かぁ。ジャケット表年は文字だけでなんか意味深だけど、シンプルでいいな。
ちょっと見に行っただけで購入目的はなかったのだけど、何かに取り憑かれたようにスルスルと購入してしまった。
家に帰って聴いてみると、驚くことにメンバー全員がリードヴォーカルをとっている。雑誌によると「バンドによるアルバム」がポールのコンセプトらしい。
全11曲中ポールのヴォーカル曲は6曲のみ。それが理由ではないと思うが、メディアの評価は低かった。
しかし私はこのアルバム大層気に入り、夜な夜なきいては一字違わず歌詞を覚え、歌いまくっていた。
ビートルズやチューリップで育った私は、全員がリードヴォーカルをとり、コーラスや掛け合いを交代でこなすバンドが大好きなのだ。
ポール以外の曲も大変よく、特に好きだったのがデニー・レインが歌うThe Note You Never Wrote と Time to Hide。
そのデニーの訃報をきいた。
デニーはポールにとってビートルズのジョンのような立ち位置で(ジョンほど世界的な評価はないとしても)傍らで「この曲どう思う?」と訊いたとき、掛け値なしの正直な意見を述べてくれる相棒だったのではなかろうか?
「良い」でも「ダメ」でも横で頷いてくれる男、それがデニーだった、と。ウイングスのメンバーは変わりまくっても、結成から解散まで一緒にいたのはリンダとデニーだけ。
このアルバムを皮切りに、ウイングス全アルバムをきくことになるのだが、要所要所でデニーのいぶし銀のような仕事ぶりが大好きだった。
久しぶりにこのアルバムをきいたが、瞬間に中学生に戻ってしまった。
デニー、たくさんの思い出をありがとう。