見出し画像

田村ゆかり『I love it♡』を聴いてみて

くろです。
引っ越しをしたり、最近はコロナになったりで、なかなかnoteにまで気が回らずにいる、そんな人間です。
発症して3週間経ってますが、味覚はまだ消えてます。怖い話です。

そんなことは遠くに置いておき、今回は田村ゆかりさんのミニアルバム『I love it♡』が発売されたということで、感想を書こうと思いました。
そんな、深い解釈を出来る身ではありませんが、備忘録として、特に気になった曲を長めに書きつつ。

・「Poppin` Magic」
まず、入りが好きなんですよね。タイトルからの連想でもありますが、イントロが魔法をかけてくるような、流れるような音を浴びせてくれる感じです。
その上で、想像したより1小節早く歌声が聞こえてきたので、すっとアルバムの中に入れたような気がしました。何より、ポップで軽やかでありつつ、ゆかりさんの声で綺麗な雰囲気をまとわせていて……良いとこ取り、という印象を強く抱いたり。

好きな歌詞としては、「こんなに私のほんと 好きでいてくれてありがとう」ですね。”笑顔で魔法にかけてくれる、そんな貴方が好き” というだけでなく、"貴方からの好きが嬉しい"という、相互的な関係。

自分自身に対する自信が、決して100%じゃないからこそ……なんて思ったりしました。

・「Sweet alert」
端的に言ってしまえば "浮気は許さないよ" なのでしょうが、それを可愛らしい歌声で、しかし歌詞にちょっとの重みを込めて、歌い込んでいるのがゆかりさんの上手さなんだろうなと思います。

ちょっと「私だけmissing」を思い出したりもしましたが、個人的に、バラードでなくこういう曲調で、ともすれば軽やかさに騙されかねないような雰囲気で「黙ってるままだったら ピリオドだってありえるわ」なんて歌うところが、良いなと思うのですよ。

こういう、明るさの中に重さを混ぜる歌、彼女の真骨頂だと思っています。作詞が松井五郎さんというのを知って、納得したり。

・「トーキョーキャンディーガール」
頭の中で "煌々と光る街の明かりを、少し離れた橋の上から眺めつつ、この歌を歌う田村ゆかりさん” の姿が浮かぶような、そんな歌だなと。
今まで、あんまり地名を使ったタイトルって無かったような気がしたので(歌詞としてなら、御幸通りとかありましたが)、珍しいなとも。

電子的というか、言葉遊びというか。
その中でも「ビルはスペクトラム うるさいばっか」という歌詞、今までにない感じがして印象に残りました。世界は嫌なこともあるけど君がいるから最愛の世界という、どこか終末思想的というか。
明るい曲なんですけど、そういうところが混じってくるんですよね(同じことしか書けてない自分)

・「あれもこれもFlexibility」
「トーキョーキャンディーガール」と、どこか似たところがあるなぁと思うのは、電子的に思ったからでしょうか。電子音って感じでは無いのに、不思議です(個人の感想)

太陽と月の対比って、歌に限らず色んな創作でテーマとして扱われているものだと思っていて、「□□は太陽のよう」「○○は月みたい」みたいなのが多いと思います。

その上で、この歌の場合はflexibility、柔軟性を持って解決しようとしている……何が正しいか白黒つけるかはせず、色んな私がいるけど全貌は内緒のまま、これから2人で形作りましょう、という意図があるなぁと。
小悪魔っぽさはちょっとだけありつつも、根底はやはり、未来は2人で作ろうねという優しさなんだと思いました。

・「Paradoxx.」
ナタリーのインタビュー記事でも書かれていましたが、この曲が唯一、少しナーバス気味な曲というか。でもバラードというわけではなくて、疾走感を残しつつ不安を表現してるのが、面白いなぁと素直に思いました。

かつ、ナタリーの記事で書かれていた、「あれもこれもFlexibility」と対になる部分があるという話。自分が思ったのは、「あれもこれも」は、"自分の本当は全ては明らかにしないよ?" という内容があり、一方でこちらが、"あなたのことを全て知りたいのに知ることが出来ない" という内容だというものです。

非対称性というか、矛盾があるんですよね。
私のことはちょっと秘密にするよ、これから作っていこうね、でもあなたのことはもっと知りたい……一歩間違えばワガママに見えそうです。

でも、個人的にはこれ自体が、完璧に割り切ることが出来ない恋というものを表してるような気がします。白か黒かで決められない、曖昧なところもあるよねという、「あれもこれも」で提示したテーマが見え隠れするような。

深読みマンという自負はありますが、少しばかりの矛盾があると思えるのは、それが恋だからなのかなと思ったのです。理屈じゃない部分はありつつも、でも結局、一緒に歩きたいという思いは変わらないということで……

・「Vanilla Lover」
まぁ、可愛いですよね(語彙力消失)。これで「バニラバ」って読むのも面白いというか、公式なタイトルでそういうのをやるのが珍しいと感じつつ。

とにかく甘さに満ちてます。イントロはノイズっぽくして、少しお洒落さに振っている気がするのに、中身は甘い歌詞が詰まっているという(この曲のテーマであろう)パフェそのものだなと思えました。「アイスクリーム」かと思ったら「I scream」だったのは、歌詞カードを見て少し笑みがこぼれてしまったりも。

過去曲で捉えるなら「お気に召すまま」を思い出しもします。晴れた昼下がりに聴きたい曲ですし、心をスキップさせてくれるような甘い時間でした。
あと、百回くらい言われてるでしょうけど、好きの連呼するところはずっと聞いてれば万病に効きそうです。

・「Wonder habit」
不思議な習慣、というのが直訳になるんでしょうか。そして歌詞としては、habitとrabbit、うさぎで韻を踏んでいるのでしょう。歌詞中にも、rabbitとか"耳を立てる"とか出てきますから。

「バニラバ」が甘さに満ちているとしたら、こちらは可愛さに満ちていて。こういう曲、生で聴いたら蕩けちゃいそうだなぁと思いました。

それに、ウサギみたいな女の子というのはイメージがつきやすく。ウサギを飼っているゆかりさんが、自分で書いたのかなと錯覚しそうなほどの歌詞……松井五郎さん、やはり凄いなぁと感じもします。

・「好きしかありえない」
自分にとっては、このミニアルバムの中では一番、ぐっと来た曲です(今の時点で)。

まず、自分はブラス、いわゆる金管楽器(で合ってるはず)が入ってくる曲が、壮大になる感じがして好きです。曲によって使うべき/そうじゃないってあるとは思いますが、この曲はそれがバチッとハマっていて、まさに大団円という印象を持ちました。

サビ部分、一気に音程やボリュームを上げるんじゃなくて、ゆっくりと溜めるように歌っていて、なのに強い感じに受け取れるのが、歌の面白いところですし、ゆかりさんのパワーなのだと思います。

歌詞も凄い好きで、「ふたりディスタンス」みたいなワードや、「恋のオルゴール ネジを巻いたら聞こえてくるメロディ」という、2人の思い出を表してるような言葉の連ね方とか、本当に良いなぁと思えて。

そして個人的に、「心はひとつしかないもの 好きしかありえない」というのは、この歌のテーマであると同時に、アルバム全体にも関わってくるような気がしました。

「あれもこれも」や「Paradoxx.」の時に、色んな私はいるけど全部はまだ内緒、という意図があるのかもなんて書きましたが、それでも結局は、心はひとつしかない、というのも間違いなく。
たとえ内緒があっても、相手のことを知りたいと思い続けても、根底には「好き」という気持ちがあるんだろうなと思います。

紆余曲折、というと一言でまとまってしまいますが、恋を表現する時に、一本道であると書くことは(ゆかりさんに限らず)少ないはず。
だからこそ、感情のブレは色々とあるし、色んな曲で色んなものが表現されるけど、結局は「好きしかありえない」という思いが由来になる……そんなことを、この最後の曲から思ったりしました。


・全部をひっくるめてみて
深読みマンですみません(2度目)。
ともかく、このミニアルバムは、ポップで可愛らしい部分が前面に押し出されつつも、歌詞は決して「底抜けに明るいだけの曲はあまり」という(ナタリーの記事でゆかりさんが書いたような)感覚なのだと思います。

少し心の奥底で引っかかる部分を、歌詞とか歌い方に散りばめつつも、でも「好き」という感情が前提にある。
そういうの、自分は大好きですし、常に完璧な恋とかは無いっていうのも、これまでの歌で聴いてきたことに通じてるかなと。

自分が思ったのは、そんなところです。
とはいえ、まだまだ聞き込むことで、心に引っ掛かる新しい部分があるでしょうから、もう少しだけ、たんと召し上がってみようかなと思います。

長文を失礼しました。ちょっと曲の感想からズレた感がありつつも。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?