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観る者の心を打つフットボールで江戸川区を沸かす、東京23FCの挑戦

 プロサッカー選手。Jリーグ加盟。J1昇格。これはサッカーを志す者やクラブ全ての目標だろう。毎年昇降格がある日本サッカーのシステム上、この可能性は全てのクラブに開かれている。


 2023年、プロリーグにあたるJリーグはJ1、J2、J3の階層構造で、合わせて58クラブで構成される。そんなプロの世界を目指す挑戦者はさまざまで、高校やユース、大学といった学生年代で学業と両立しながらプロをめざす者もいれば、大人=社会人になっても他の仕事と両立しながら “アマチュア”としてサッカーに取り組む者もいる。


 ここで注目したいのが“社会人サッカー”である。ここで言う社会人サッカーとは、“プロではない”、つまり“J3未満”で、年齢制限のない第1種競技においてのサッカーを指す。社会人サッカーは、アマチュアで唯一の全国規模のリーグ“JFL=J4”と、東北や関東などの“地域、都道府県リーグ=J5以下”から構成される。普段Jリーグや海外などプロのサッカーを観る人からすればそれはかけ離れた世界であり、競技レベルも差があるかもしれない。しかし、社会人として働きながらプロを目指すという高い壁に挑戦している選手たちは情熱と野心を持っており、その挑戦を応援することは他の何にも代え難い面白さがある。
 今回この記事で紹介したいのが、J5に相当する「関東サッカーリーグ1部」、そしてその中で今最もアツい「東京23FC」だ。

ホーム:江戸川区陸上競技場


地域リーグ史上最高レベル「関東サッカーリーグ1部」

 と、昨季開幕前から話題になっていた。火付け役になったのが南葛SCだ。今季開幕前、“南葛”と言う名前と、元日本代表など有名選手の補強が大バズりした。他にも元アルゼンチン代表でマラドーナともプレーした経験がある指揮官が率いる神奈川県のエスペランサSCや、JFLの経験がある栃木シティFCなど、非常にハイレベルなクラブがJFL昇格を賭けて戦っている。


 その中でも特に盛り上がりを見せ、現在首位に立つ実力と人気を備えているのが、東京都江戸川区に拠点を置く「東京23FC」だ。2003年に設立されたこのクラブは、日本を象徴する日の丸と同じ白と赤をクラブカラーとしている。今最もアツいと記したが、サッカークラブにおいて人気を測る最もわかりやすい指標が観客動員数だ。東京23FCのホームスタジアムである「江戸川区陸上競技場」で開催された試合全てで1000人越えを達成している。この数字は昨季のJ F Lを超えており、J3にも匹敵している。これは地域リーグ規模、しかも有料試合では大記録を打ち立てていると言うことになり、クラブの人気が窺える。


 ここまでファンを惹きつける根底にあるのが、「観る者の心を打つフットボール」を標榜したスペクタクルで見応えのある超攻撃型サッカー、そしてJリーグの理念でもある”地域密着”に基づいた戦略だ。


観る者の心を打つフットボール

 東京23FCが目指すのは、この言葉を体現した超攻撃型サッカーだ。基本システムは3-4-3(3-4-2-1)で、ワイドからも中央からも常に前にボールを進めてゴールを狙う。このサッカーを体現する上で欠かすことのできない注目選手を3名紹介する。


No.21 大石文弥(GK)

 チームの守護神で、主将も務める。セービングだけでなく、コーチングで守備を安定させ、後方からチームをまとめる。


No.10 若杉好輝(MF)

 ヴァンフォーレ甲府出身。主に左のウイングバックやシャドーを務めるドリブラーだが、サイドだけでなく中央からの攻めも鋭い。得点やアシスト感覚に優れ、昨季リーグ3ゴール11アシストで、アシスト王に輝く。5-2と大勝を収めたブリオベッカ浦安戦では2ゴール2アシストでMOMに選出。

No.9 清水光(FW)

 2021シーズンの関東リーグ得点王。チームを勝利に導く得点に期待。


都民の、都民による、都民のためのフットボールクラブ

 ところで、Jリーグには首都クラブが無いことをご存知だろうか。FC東京、東京ヴェルディ1969、FC町田ゼルビアと東京都内に拠点を持つクラブはあるが、いずれも23区外に拠点がある。東京23FCは、23区に拠点を構える初のJクラブを目指している。江戸川区にスタジアムがあるものの、クラブの名前には”23”の文字が入っており、東京23区と言う都市全体に貢献することを念頭に活動を行なっている。メインで行っている地域貢献活動を二つ紹介しよう。


 一つ目は、毎月”23”日に行っている、「23クリーンプロジェクト」と呼ばれる街の清掃活動だ。この活動は選手やスタッフ、サポーターをはじめとした地域の人々が一体となって取り組んでいる。選手とファン、サポーターの距離感が近いこともこのクラブの特徴であり、実際に触れ合った選手が試合で活躍すればサポーターも嬉しいはずだ。

23クリーンプロジェクト


 二つ目は、江戸川区陸上競技場でのゲーム開催時に行われる「23キッズフェスタ」だ。この活動は試合前に開催される、選手たちがコーチとなったサッカースクールだ。子供たちにとっては、実際に試合が行われるピッチで選手に教えてもらえる絶好の機会である。そのまま試合を観戦して帰ることができるため、子供たちにサッカーをプレーするだけでなく、観戦する面白さを伝えると言う意味でも素晴らしいイベントだ。実際に観客席に行くと、1000人を超える観客動員を生み出す大きな要因はキッズフェスタに参加した子供たちであるということが見て取れる。地域にとっても、クラブにとってもWin-Winの関係が構築されていることこそ、東京23FCが好調をキープできている秘訣なのだ。

23キッズフェスタ


Jリーグ百年構想クラブ

 とは、「将来Jリーグへの入会を目指すクラブ」のことである。とは言えこれは全てのクラブが目指す目標でありながら、全てのクラブが認定されるわけではない。着実な経営基盤の強化を行い、競技において実績を出すことによってJリーグへ参加する。それに値する資格を有しているかどうかを、一定の審査を経て、Jリーグが公式に認定したクラブにのみ与えられる称号なのだ。


 Jリーグはより上位のリーグを目指す百年構想クラブの取り組みをサポートし、サポートを受けたクラブはより一層地域に根差したスポーツ文化の振興活動に取り組む。J3の発足以降、Jリーグの拡大を目標に設置されたこの「Jリーグ百年構想クラブ」に、2022年2月28日、東京23FCが認定された。


 クラブ設立から19年の歳月が流れた。そしてようやく目標だったJリーグへの道が鮮明に見えてきた。新型コロナウイルスで試合が中止になるなど、苦しいシーズンはまだ続くだろう。それでも「観る者の心を打つフットボール」は、江戸川区のサッカー少年を巻き込み、クラブの実力、人気は大きく膨れ上がっている。「このまちに東京23FCがあってよかった」と思ってもらえるクラブへ。そしてその”まち”の規模は、江戸川区から23区、東京都、そしてクラブカラーの”日の丸”を心に秘めるこの国全体へと拡がっていくことだろう。

最新ホーム試合勝利後


参考動画:https://twitter.com/tokyo23official/status/1498279095938928640?s=20&t=vm5zTXO4A9U4Kp2NxEyzKg


実習で作成したマッチデープログラム


これまでの実習を振り返って

 私は昨季のホームゲーム運営に携わらせていただいた。関東リーグという未知の現場で一番驚いたことは、ホームゲームのスタジアムが毎回違うと言うことだ。Jリーグでは普通一つの定まったスタジアムで開催されるが、社会人サッカーではホームゲームと言っても毎回違ったスタジアムで行われる。移動が多いのは勿論だが、スタジアムの設営はホームチームが行うため、毎回クラブハウスから遠方まで大量の備品を運ばなければならない。人手も時間もかかるし、朝は早いし。。
 しかし、毎回遠くまで足を運んでくれる熱心なサポーターの方々がいる。早くからスタジアム入りして横断幕を張って、暑い中応援して、試合後選手たちと一緒に写真を撮っているのをよく見かける。そんな皆さんの喜ぶ顔を観れるならいくらでも頑張れる。
 プロにはない良さだと感じたのは、良い意味で選手との距離感の近いということだ。ボールパーソンをしていたら「暑い中お疲れ様」と声をかけてくれたことがあった。Jリーグや海外のサッカーしか観たことが無かった僕は驚いたが、良い気分になった。この経験は、全員で試合を作っていると言う感覚をより味わえる社会人サッカーに実習で来れて良かったと感じた瞬間だった。





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