見出し画像

デモで機能や利点ばかりを伝えていませんか?

プリセールスエンジニア向けのセールス入門、今回は、デモ、と言っても製品デモでのトークについてお話ししたいと思います。これまでの記事はこちらです。

プリセールスエンジニアとして、あなたが製品のデモを行う時、あるいは製品の説明をする時、どのような観点で話をしますか?

例えばあなたが問い合わせ管理システム製品の担当だとして、次のような説明をどう思われますでしょうか。普通ですかね?

「弊社の問い合わせ管理システムは、このようにユーザー登録を一人一人画面から登録することもできますし、ファイルから一括で行うこともできます。」
「弊社のダッシュボードは、このように、管理者や上司が設定した条件で問い合わせ一覧を表示できます。更に、こちらのボタンをクリックして、それぞれのユーザーが表示をカスタマイズすることもできます。」

これだけではいまいちだと答えた方、正解です。以前の「ドリルを売る?穴を売る?それとも…」という記事で、このように、製品の機能(フィーチャー)の説明を行って販売を試みる手法はプロダクトセリングと呼ばれ好ましくない、とお話ししました。まだ読んでいない方はこちらをお読みください。

では、次のような説明だとどうでしょうか。

「弊社の問い合わせ管理システムは、このようにユーザー登録を一人一人画面から登録することもできますし、ファイルから一括で行うこともできます。ですから、新規導入時や年度替わりでも簡単かつ間違いなく実施できますし、人事異動への対応にも柔軟に対応できます。」
「弊社のダッシュボードは、このように、管理者や上司が設定した条件で問い合わせ一覧を表示できますので、担当者が優先して対応すべき問い合わせをわかりやすく表示することが可能です。」

機能を説明する時、それに合わせて、販売するお客様視点での利点(アドバンテージ)を説明しています。これは、機能だけを説明するよりも良いのですが、実はこれでもいまいちです。「別にそこは求めていないけど?」となる恐れがあります。

もっとどのような点を説明すると好ましいのでしょうか。次の例を見る前に少し考えてみてください。


こちらが、より好ましい説明です。

「ユーザー登録は、このようにを一人一人画面から登録することもできますし、ファイルから一括で行うこともできます。ですから、新規導入時や年度替わりでも簡単かつ間違いなく実施できますし、人事異動への対応にも柔軟に対応できます。年度替わりの処理の容易さや柔軟な登録方法は現状のシステムの課題になっていた点でしたね。」
「ダッシュボードでは、このように、管理者や上司が設定した条件で問い合わせ一覧を表示できます。今は担当者が優先して対応すべき問い合わせがわかりにくい、とおっしゃっていたと思いますが、この機能を活用いただくことで、優先対応すべき問い合わせをわかりやすく表示することが可能になります。」

前後の話の流れがないので、一つの発言としては長くなってしまいましたが、ポイントがわかりますでしょうか。

ポイントは、お客様がこれまでの打ち合わせで仰っていた課題に触れた上で、この製品によりそれを解決するという利益(ベネフィット)が得られる、と明言していることです。

仮に、お客様からこのような課題を聞いていたとしたら、利点に触れた一つ前の例でも、何なら機能を説明した最初の例でも同じことではないか、と思われたかも知れませんが、決してそんなことはありません

説明する側は、製品の様々な機能やそれを活用したお客様のことをよく覚えているので、ある機能を説明した時に、これにはこんな利点があるから、先日このお客様から聞いたこの内容に繋がるな、とわかりやすいですが、初めて説明を受けるお客様の立場からすると、必ずしも自明ではないのです。

なので、お客様が課題感を感じていたり、製品導入によって改善したいと仰っていた点に関連する機能については、そうではないけどこれはこれで便利な機能とは明確に違うとわかる形で説明をすることが好ましいです。デモの結果としてお客様に感じてもらいたいことは「この製品は我々の課題を解決してくれる、更に我々があまり意識していなかったこんな利点もある」ということであって、「なんだか色々な機能があって便利そう」では不十分ということです。

一つ一つの説明に課題との関連を言い添えるのはさすがにくどいな、と思われる方向けに良い方法があります。デモを行う冒頭で「今回のデモでは、お客様が現状で実現できていない、会員登録の容易さや柔軟性、優先対応すべき問い合わせのわかりやすさなどを弊社ソリューションでどのように実現しているか、ご説明いたします。」と前置きし、さらにデモを行った後で「デモは以上になります。弊社ソリューションの、会員登録の容易さや柔軟性、優先対応すべき問い合わせのわかりやすさなどは伝わりましたでしょうか?」とお客様に確認しましょう。そして、お客様が聞き流しそうになっても、お客様が回答するまで数秒待って、必ずお客様の回答と温度感を確認するようにしましょう。

お客様の課題感をこのソリューションで解決できそう、ということをお客様の口から言っていただくことは非常に重要です。もし念を押しても言っていただけないようならばデモが響いていない可能性が高いので、気になるところを聞いて再度デモの機会をうかがっても良いかと思います。

響くデモを行うためには、前回までの打ち合わせにて、お客様が新システム導入で実現したいことは何なのか、いま何にどのくらい困っているのか、ということをしっかりヒアリングしておく、ということが大事になります。

まずはお金の話は抜きにして、製品としてご担当者に気に入っていただく、その後、費用のお話や社内稟議を通すための相談をお客様と一緒に行う、というのが理想的な商談の進め方です。

さて、今回の記事は以上です。記事のわかりにくいところや誤字などあればご指摘ください。「スキ♥」を押してくださったり、私をフォローしてくださると励みになります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?