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ドリルを売る?穴を売る?それとも…

プリセールスエンジニアとしての経験をもとに、プリセールスエンジニア向けのセールス入門を書き始めました。

プリセールスエンジニアも営業活動にもっと積極的に関わるべき、というのが趣旨なのですが、そのためにも、今回は営業手法の例を少しご紹介したいと思います。

まず、大本のところから考えますが、もしあなたが、何かを売りなさい、と言われた時、お客さんに何を伝えて売りますか?

一番単純なとこでは、まず、その売り物がどんな物なのか(例えば木材などに穴を開けることができるドリル)、価格は幾らなのか(例えば3万円)、どうしたら手に入るのか(例えば現金かクレジットカードで今払えばすぐ渡す)ということになると思います。

製品について詳しくない販売員は、詳しいことはこちらのカタログに書いてあるのでこれを読んで検討してくださいね、買うことを決めたら声を掛けてください、と伝えるかも知れませんし、詳しい販売員は、他社よりもパワフルで高品質、更に他の工具とバッテリーが使い回せます、のような製品説明を口頭でできるかも知れません。

このように、製品の説明を行って販売を試みる手法は、プロダクトセリングと呼ばれています。

製品の内容を何も伝えずに販売することはさすがに難しいですし、また営業担当と共に営業活動をする時、プリセールスにはプロダクトの説明を行う役割が期待されることも多いので誤解されている人もいるかも知れませんが、実はプロダクトセリングは良い営業手法ではないと言われています。

ではどうするか、という点において一つヒントになるのが、「ドリルではなく穴を売れ」という台詞です。かなり昔の本で私も原著は読んでいないのですが、レビット氏の「マーケティング発想法」という本に書かれているそうで、例えばホームセンターでドリルはありますか、と聞いてきたお客さんがいたとしたとして、その人はそもそもは穴をあけたいわけなので、ドリルでなくてキリでも良いだろう、そのように買い手の視点を持とう、という趣旨のようです。これは、言われてみればその通りですよね。

なおかつ、マーケティングの場合、大抵のお客はキリでも良いだろう、とある程度買い手の気持ちを想定する必要があるかと思いますが、営業の場合はもっと有利な部分があります。

それは、商談の中で、お客様に直接質問できるということです。例えば「ドリルをお求めとのことですが、どんな物に穴を開けるご予定なのですか」などと聞いて、その答えにあわせて、一番適切なドリル(場合によってはキリ)を薦めることができる、ということになります。
ホームセンターの店員ですと、一人一人のお客様にそれほど時間を掛けることは難しいかも知れませんが、営業担当とプリセールスとで営業活動を行っているような会社においては、契約に至ればそれなりの売上が見込めるわけなので、そういった質問を行って一人のお客様に時間を掛ける価値があるわけです。

お客様の求める物、特に現状の課題となっているところを深くヒアリング(ディスカバリーとも呼ばれます)し、それを応じた解決策(ソリューション)としての製品をお薦めする営業手法を、ソリューションセリングと言います。

ソリューションセリングは、特に、お客様の問い合わせがきっかけで商談に結びついた場合のような、インバウンドの商談時に大きな効果を発揮します。私の昔の上司はソリューションセリングで20年以上売ってきた、と聞きました。

優秀な営業担当者は強力なヒアリングスキルを持っているものですが、ソリューションセリングは、特にプリセールスエンジニアが習得しやすい営業手法だと考えています。

今後の記事で、ソリューションセリングについて、さらに具体的な例などを交えながらお話しし、プロダクトの説明だけができるプリセールスから一歩前進する助けになればと思います。ご期待いただけるようなら、「スキ♥」を押してくださると励みになります。


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