BOOK DIGGER #006 有坂塁
006. 有坂塁
Thema 映画をDIGる
『ウディ・オン・アレン: 全自作を語る』
スティーグ・ビョークマン 大森さわこ(訳)
(キネマ旬報社)
『STUDIO VOICE VOL.252 -特集:CUT UP CINEMA! 90年代東京の映画環境はどうなっているのか』
(INFASパブリケーションズ)
『80sグラフィティ』
長谷川町蔵、山崎まどか ほか
(ブルース・インターアクションズ)
昔、僕はレンタルビデオ屋で働きながら、映画館でも映画を観て、映画の本も読んでいました。今思うと、そういった映画がたくさん載っている本を持ってレンタルショップをうろうろしていた時間が、自分にとって肥やしになっています。そんな自分の映画体験と繋がっている3冊をご紹介します。
ウディ・アレンは、初めて好きになった映画監督です。彼は、本当は我が強いのにそれを消そうと屈折していた時期の自分を肯定してくれる存在でした。この本はデビュー作から当時の最新作『マンハッタン殺人ミステリー』まで1本ずつ本人がインタビューで答えていて、彼が影響を受けたフェリーニやベルイマンといった監督の名前や作品名が出てきます。こんなに面白い映画を作る人が過去にどんな影響を受けてきたのか興味があり、古典と呼ばれるような名作を知ることができました。
スタジオボイスのこの号は映画のパンフレット特集(1996年)。ジャック・タチやゴダール、当時知らなかった『黄金の七人』もビジュアルに惹かれて観たいと思いました。今のように配信で探していたら出会えないような映画がいっぱい載っています。90年代の音楽やファッションも含めたカルチャーとも繋がっていく中で、たいせつな映画と出会えました。
『80sグラフィティ』が出版されたのは2002年。僕が一番頭でっかちに映画を観ていた頃です。シネマテーク・フランセーズ(註1)の創設者アンリ・ラングロワの『映画愛: アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ』(リチャード ラウド著:1985年リブロポート刊)やトリュフォーの本などを読んでヌーベルバーグへの憧れが強かった時で。当時は音楽もカフェミュージックが流行っていて、染まっていました。あの時の自分にとって一番距離のあった映画が80年代の映画でした。1975年生まれで思春期に映画を観ていなくて、90年代に入ってから洗練されたものにワクワクしていた自分からすると、ダサい、恥ずかしいという印象。この本は最初、ジョン・ヒューズやアメリカの学園ものに寄った本だと思ったんです。でも中身を開くとタビアーニやブレッソンまで網羅しているじゃないですか。僕が苦手だと勝手に感じていたアメリカの80年代映画と自分の憧れていたヨーロッパの難解な映画がこの本の中ではフラットに紹介されていたことが衝撃でした。80年代映画への偏見を取り払ってくれた1冊。しかも星取表がついているから星が高いものから観ていくのが楽しかった。レンタルショップで働いていた時期だったので、いろんな作品を観ることができたんです。本とレンタルショップがセットになって映画をDIGる楽しさが、自分にとっては原体験になっています。
映画を探したり、何を観るか考えることの楽しさを教えてくれたのが、この3冊なのです。
註1:1936年に作品の保存、修復、上映によって後世へ映画を伝える目的で設立された、いわば映画の博物館。
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