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BOOK DIGGER #005 大橋裕之

BOOK DIGGERってなに?
毎回、本好きクリエイターがリレー形式でつないでゆく、
プレイリスト感覚のブックレビューです。

さて今回ご登場いただくのは、漫画家の大橋裕之さん。
漫画の枠を飛び越えて、アニメーションや実写映画でも活躍されています。
大橋さんは、映画でも本でもその舞台となるロケ地が気になるそうで、今回のテーマもずばり「ロケ地が気になる本」。

実はこの企画のご相談で、大橋さんと打合せをしたのも新宿西口の純喫茶ピースで、そこは藤子・F・不二雄先生がよく通っていた店だと教えてくれました。

さて、どんな本をDIGってくれたのか。
リラックスして楽しんでいただければ幸いです。

005. 大橋裕之 

Thema ロケ地が気になる本

『はっぴいえんどの原像』
サエキけんぞう、篠原章
(リットーミュージック)

『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』
近田春夫、下井草秀
(リトル・モア)

『創作 1973年10月―1975年7月』
田口史人:編
(リクロ舎)

家でNetflixとかで映画を観ているとロケ地が気になり、一時停止して調べるのが好きで、今回選んだ本もそんな自分の嗜好が共通している。一昔前の、自分に馴染みのない場所も含め、気になる人たちが通っていた店を検索し、今は無くなった街並みや店に思いを馳せる。あの辺ってこんなだったんだという驚きとともに、もうないという寂しさも同時にある。

『はっぴいえんどの原像』は、18歳のころから彼らの音楽が好きだから一気に読めた。本に出てくる、例えば小劇場ジァン・ジァンは今はないからどの辺にあったのか調べたり。渋谷のB.Y.Gや、山下達郎が常連客で大貫妙子が当時アルバイトをしていた四谷のジャズ喫茶いーぐるはまだある、とか。細野晴臣が住んでいた狭山アメリカ村もGoogle マップのストリートビューで検索した。でもそれで満足して実際には行ったことがない。気になる場所が次々と出てきて調べるので全然読み進められなかったりする。

近田春夫は何枚かCDを持っていて、幼い頃はテレビでも観る顔だったけど正体不明だった。でも『調子悪くてあたりまえ』で色々知ることができた。とんねるずが出演していたチョコボールのCMソング、クエックエックエ〜って曲もこの人だった。はっぴいえんどとの共通点は東京生まれで、昔の話が興味深い。1950年代、等々力駅前辺りは未舗装の砂利道で、家の向かいに畑があって茄子や胡瓜が…とあるのを読むと妙な気分になる。近田はロックの場にも芸能界にもいたのが特殊。楳図かずおが作詞した「エレクトリック・ラブ・ストーリー」という曲のエピソードも面白い。

『創作』は東京・高円寺にあるお店、黒猫(元・円盤)の店長・田口史人が、数年前にリサイクルショップで見つけた、誰が書いたかわからない日記を出版したもの。地名はそのままで店名や個人名は特定されないように変えてある。主人公は小説家志望で、中身は読んだ本や酒、パチンコの記録。なぜこの流れに加えたかというと、読み進めていくと、あれ、これ俺の実家に近いぞということが判明したから。愛知県の蒲郡出身なのだが、主人公も蒲郡の飲み屋で飲んでいる。店名は変えてあるから検索しても出てこない。主人公は当時20代くらいで、今も生きているのか、今も残ってそうな店のお爺さんお婆さんに「こんな文学青年来てなかったか」と訊いたら何者か判明するんじゃないかと想像するのが楽しい。

前者2冊は彼らに興味があって読み始めたけれど、3冊目は知らない人の日記。だから、どんな人の人生や日記も面白いのだ。
こういうものを読むと運命ってあるのかなと思う。自分自身を振り返ってもそんなすごいことやってきていないけど、その時々の、人や店や街との出会いを考えると、不思議な気持ちになる。今自分が通っている店も何年後かにこんな風に感じるようになるのだろうか。

DIGGER’S PROFILE
大橋裕之 Hiroyuki Ohashi
漫画家。1980年生まれ。愛知県蒲郡市出身。代表作に『シティライツ』『音楽』『ゾッキ』などがある。2020年にアニメーション映画『音楽』、2021年に映画『ゾッキ』公開。現在「Tarzan WEB」「メンズノンノWEB」「EYESCREAM」などで連載中。


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