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ホワイトカラーの就労ビザ 技人国ビザのポイント解説

ホワイトカラー職に従事する外国人は、原則として、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格(通称、技人国ビザ)を取ることになります。日本の大学や専門学校を卒業した外国人のほとんどは、この技人国ビザを取って就職することになります。技人国ビザのポイントと意外と知られていない申請ノウハウを紹介します。

技人国ビザとは

技人国ビザを一言で説明すると、ホワイトカラーの仕事に従事する時に必要な就労ビザです。ただ、最近では、どんな職種がホワイトカラーに該当するのか、その基準が難しくなっています。入管法令でも、その基準について、ある程度記載されているのですが、分かりやすさを優先して説明すると、以下になります。

①システムエンジニア、設計、デザイナー、営業などは該当します。営業については、海外営業、法人営業、不動産営業は該当しますが、店舗での販売職は原則として該当しません。
②オフィスではなく、建築事務所や工場で働く場合であっても、施工管理、生産管理、機械オペレーター等も該当性は高いです。
③建設現場、製造工場などの現場で作業員として働く場合は、技人国ビザは取れません。他のビザを取って働くことになります。

最近申請が多い機械オペレーターについて少し補足します。技人国ビザが許可される典型的なケースとしては、半導体製造工場で働くケースです。半導体工場での機械オペレーターの仕事は、製造機械を動かすプログラミングを入力したり、パソコンを使ってシミュレーションしたい、測定データを取ったりします。こうした業務は、技術ビザに該当する可能性が高いといえます。他の工場の場合、例えば、材料工学や熱力学等の専門知識がないとできない業務であることが求められます。普通の溶接や、部品加工の技術者としての技術ビザ取得は難しいです。

技人国ビザの典型的な職種

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代表的な職種を整理すると、図3のようになります。技術・人文知識・国際業務の3つに分けて書いてありますが、この違いは意外と大きいです。大きな違いが2つあります。
①転職の場合、同じ分野で転職する場合、それほど審査は厳しくないですが、異なる分野での転職の場合、厳しく審査されます。
②技術と人文知識に該当する場合、高度専門職ビザに変更できる可能性があります。国際業務ビザは変更できる可能性がありません。たとえ、博士号を持っていて、年収1000万円あっても、国際業務ビザであれば、高度専門職ビザは取れないという仕組みになっています。
ですから、はじめて就労ビザを取るときは、できるだけ、人文知識で申請するようにしてください。通訳の仕事であっても、実際は営業だったり、マーケティングだったりしますので、人文知識で申請できることが多いです。なぜ、国際業務の仕事だと高度専門職ビザを取れないのかについては、所説ありますが、分かりやすく説明すると、技術や人文知識は専門知識に戻づく就労ビザであるのに対し、国際業務ビザは専門知識というよりは外国人であるという特性に基づくビザだからとされています。


技人国ビザの要件とは

技人国ビザを取得するための大きな要件は4つあります(図参照)。以下、補足します。

①職務内容が技人国に該当するか。これは、仕事の内容だけでなく、業務量も審査されます。例えば、飲食店を複数運営する本部で経理の仕事をする場合を考えてみましょう。複数店舗といっても30席のお店が2店舗しかない場合、専従者を置くほど経理の業務量はないと判断され、不許可になる可能性が高いです。

②学歴要件については、博士、修士、学士、準学士であれば問題ありません。高度専門士と専門士は日本の専門学校を卒業した時に付与される学位です。海外の専門学校を卒業していても、学歴要件は満たしませんので注意してください。

③日本人社員と同等報酬以上。この点については、審査官から、同職種の日本人社員の給与証明書も出してくださいと言われることがあります。

④学校で学んだ内容と職務内容との関連性について。大学卒業者は、緩やかな関連性を満たせば足ります。一方、専門学校卒業者については、「密接な関連性」が求められます。通常、技人国ビザの申請時には、専門学校の成績証明書を出すのですが、職務内容説明書で、「この科目はこういうことを学んでおり、こういう職務との密接な関連性があります。なぜなら〇〇」といったように関連性の根拠まで説明する必要があります。

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技人国ビザの審査基準とは

技人国ビザの審査については、審査官の裁量で決まる、東京入国管理局よりも地方入国管理局のほうが厳しく審査されるといった噂が流れています。現場感覚として、当たっている部分もなきにしもあらずですが、図のような明文化された基準が存在します。
①②は、出入国管理に関する法令です。③は、具体的な許可基準が詳細に書かれた文書です。全体でキングファイル5冊分くらいになります。④が一番分かりやすい審査基準です。出入国在留管理局のホームページで公開されています。
留意すべきことは、実質的に審査の根幹をなす③④は随時変更になるため、過去に許可になったからといって今回も大丈夫という保証はどこにもないということです。当然、逆もしかりです。具体例として、コンビニエンスストアの店長職の事例を紹介します。数年前、コンビニ店長として働く場合、技人国ビザがほぼ許可される時代がありました。コンビニ店長の仕事は、アルバイトの採用管理、仕入管理、発注、本部との連絡調整、売上分析など、ホワイトカラー職が強いと判断され、技人国ビザが許可になっていたようです。しかし、ある時期から一切許可にならなくなりました。おそらく、内部基準が変更になったのだと思われます。

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技人国ビザの裁量とは

技人国ビザは、審査官の裁量で決まるとか、東京入管よりも地方入管のほうが厳しく審査されるといった噂があります。現場感覚として、当たっている部分もなきにしもあらずですが、裁量の根拠としては、本人の在留状況、学業成績、資格外活動違反の有無と程度、企業の経営状態などです。これらを総合的に審査されて、許可、不許可が決まります。
最近、多いのは、資格外活動違反による就労ビザ不許可です。留学生の場合、週に28時間までアルバイトが認められていますが、それを超過していると資格外活動違反となります。おおよそ年収で200万円を超えていると、その根拠を求められます。(給与明細、通帳コピーなど)
最近、この審査が非常に厳しいですので、必ず、採用前に確認するようにしてください。資格外活動違反が理由で不許可になると、再申請はできないと考えたほうがよいです。「職務内容が技人国ビザに該当しません」といった理由であれば、職務内容を変更するなどして再申請すれば、許可可能性はありますが、資格外活動違反が理由であれば、リカバリは、ほぼできません。内定を出して、ビザ申請して、数可決後に不許可になると、採用計画が大きく崩れますので、十分注意するようにしてください。

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企業カテゴリとは

ある意味、理不尽な話なのですが、技人国ビザの審査では、企業の規模によって、カテゴリ1~4に分けられます。ものすごく簡単に言うと、大きい会社ほどビザが取りやすいということです。勿論、例外はあります。
私も、行政書士になったばかりの頃、この事実を知って、びっくりしました。ただ、上場企業等であれば、審査官から見た時に、仕事内容等が分かりやすい、イメージしやすいという理由から、こうなっているようです。あと、上場企業等であれば、外国人就労に関するコンプラアンスを守る仕組みができているからというのも理由のようです。

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上位カテゴリになる方法

企業カテゴリを変更することは、かなり大変です。カテゴリ1は上場企業に相当する企業となっていますが、上場しなくてもカテゴリ1になる方法があります。図のマークをご覧になったことがある方もおられると思います。要は、優良企業だということです。例えば、右上のマークは育休制度が充実している会社が取得できます。就業規則の改定や育休取得者の退職率が一定以下であるという要件はありますが、上場するよりははるかに低い要件ですので、検討してみてもよいかと思います。ちなみに、こうしたマークをとっておくと、補助金の対象となったり、日本人社員含めた採用に有利に働いたりすることがあります。

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最近の審査傾向

最近の技人国の審査では、職務内容に関する追加説明、追加証拠を求められるケースが増えてきました。職務内容については、従来150字程度の説明で十分だったのですが、最近では800字程度の説明が求められるようになってきました。また、就業場所の写真や、業務で作成した書類のサンプルを求められることもあります。書類審査ではありますが、より実態を審査するという方針が強まっているようです。



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