Hidizs MP145 イヤホンレビュー
久々のイヤホンレビューです。今回は Hidizs MP145 です。
14.5mm の平面駆動ドライバを一つ搭載した、いわゆる中華イヤホンです。
結論から言うと、個性は強いもののかなり好みで、性能の高いと思えるイヤホンでした。オススメです。
レビュー内容は、エージングを 100 時間程度の後になります。購入は Amazon で、時期は 2024 年 4 月のもの、ステムのフィルタはローズゴールド(ピンク)、イヤーピースは Balanced ear tips を使用して確認しました。
音質
かなり低音寄りのドン(シャリは薄め)。 50 Hz 近くの超低音の量が多く、全体に支配的であるのが強い特徴かつ、減衰にやや時間がかかる印象。
一聴すると全体的にすっきりとしておらず締まりがないように思えるものの、低音から高音にかけて粗のない性能と鳴らしかたであり、時間が経てば個性であると感じられる。この超低音により、全体的にダークでウォームな印象がもたらされている。
全体的なアタック感もやや弱め。明瞭さは十分にあるものの、硬質さは感じない。聴き疲れしない音作りになっている。
支配的な超低音の中でも、低音から高音においては各音の配置が明確で明瞭。
音場は超低音の量と減衰具合からかなり広く感じる。ただ、明確に広いというわけではなく、霧がかかったような広さ。音が配置されている場所という見通しとしては、超低音を加味しない横(左右)への奥行はやや広めというところ。前後への奥行はそれなりにあり明確。立体感がある。
恐らくだが、これ以上に音場が狭かった場合、超低音と他の音のバッティングがしやすく評価は下がったかもしれない。
いつもの課題曲としている Dua Lipa の Levitating であるが、ベースが見事。ファットであり程よくソリッドと万人に受ける音作りになっている。フェイザーのかかったパッドのゆらぎ具合も表現できている。超低音と低音の領域が分離できているからか低音の輪郭が分かるものの、超低音がよい味付けになっている。
音も団子に全くなっておらず、綺麗にさばけている。見事。なお、適度に艶の乗ったボーカルであるものの、派手さはない。
全体を見ると、音の分離・分解は良く、音楽を楽しむという表現ができているのではないかと思った。
ファッティなシンセベースとサックスが特徴の曲である The Comet Is Coming の Summon The Fire で試聴した。
元々ファットなベースに艶が乗った感じの低音。大変見事。中盤の音が重なる場面も綺麗にさばけており、サックスの音も決して派手ではないが、きちんと音の太さを感じられる。
バスドラもベースに混じりきらずきちんと表現できており、とてもよい。
やはりダークな表現が合う。
序盤からのバスドラとベースの太さと存在感に驚かされる。イコライザをかけたかと思ったほど。中盤の疾走感のあるシーンは支配的な超低音の存在感が強いものの、表現としてアリ。一方、特徴的な電子音のリードはあまり存在感を感じない。
クリーントーン調のリードギターをどう表現するか確認したいがために聴いた。エッジは明確であるものの、尖りすぎていることはなく明瞭ながらも聴き疲れしないをしない音作り。音の輪郭も明瞭なのもさることながら、音場の広さや配置も適度で、リアルさも表現できている。
シンバルやハイハットも明瞭ながらも目立つことはない。適度。
低音
前述通り、50 Hz 近くの超低音の量が多く、それに引きずられて量がそれなりに出ている。重低音というよりは「霧が深い」という感覚。ただ、低音の輪郭は明瞭で、超低音の中で綺麗に低音が浮き出ている。明瞭であるものの柔らかめ。減衰はやや遅く余韻は多めであり、アタック感は弱めである。そのため、テンポの速い曲においてはバスドラやベースが気になるときがある。
曲によっては、喉の奥に響くような感覚が強い。ブーミーという感じではないので、上品さは感じられる。
バランスが良いとは決して言えず個性が強めであるが、性能の高さもあり、音楽を聴くという行為においては良い。
中音
明瞭であるが量や厚みは普通。アタック感はやはり弱め。音の分離や輪郭の表現は繊細で、細かく表現ができている。ギターのカッティングやノイズもつぶさに捉える性能の良さはあるものの、聴き疲れはしない程度。モニターライクではなく自然。
低音によりボーカルが引っ込む可能性があるかと思ったが、今のところそのような音源はない。
ボーカル・バイオリンなどの弦楽器には適度に艶はのっている感じはあるものの、厚味は普通程度なので、そこまで目立って際立つ感じではない。
金管楽器の厚みは普通。鮮かさは感じるものの、超低音にやや埋もれる。
高音
明瞭であり、量は普通。中音同様、分離や輪郭の明確さも良く、自然。歯擦音などの不快になる音も抑えられており、キンキンと鳴るわけでもないので聴きやすく疲れにくい。
低音と比較すると余韻は大人しく、適度に減衰する。
作りと装着感
20 グラム近いアルミ製の筐体であり、ずっしりと重い。デザインはかなりよく重量感もあることもあり、高級感がある。比較的大きめであるが、カラーは全体一色であるためそこまで目立たない外観である。金属の加工も特に問題はなさそう。外装の品質は十分にある。
筐体は重いが装着感はかなり良く、意外にも圧迫感も少なく耳への収まりも良い。金属であるため冬はヒンヤリするが、不快感を感じるとしたらそれくらい。
0.78 2Pin(非 qdc タイプ)のケーブルが利用できる。デフォルトのケーブルも良好。タッチノイズなどもなく、からまりづらく使いやすい。やや細さを感じるものの、色の感じもよく高級感がある。プラグも高級感があっていいのだが、付属のマジックテープのケーブルまとめがチープに見える。よくあるケーブルまとめに "HIDIZS" とセリフ体で記載されている。「ちょっと……、ちょっとな……」って感じだ。
付属品はイヤーピースとステムのフィルタ、イヤーピースと遊べるものが付属している。プラスで剛性のない合皮のポーチ。
箱は高級感のあるプラスチック製であったが、微妙に箱の外装が欠けてた。シリアルナンバーのカードも付属していたが、番号の記載は無し。残念。
遮音性と音洩れ
遮音性は良い。重量があるからか、普通のカナル型イヤホンよりも良く感じる。
音洩れも電車内でも通常の音量であれば全く問題なし。筐体外側にベント穴はあるものの、特に音洩れの原因にはならないようだ。
総評
性能のよいイヤホンということで非常に満足でした。値段なりの性能は十分ありつつも、他のイヤホンとも違う個性があるということでよかったです。ダークでウォームなイヤホンが欲しい場合、間違いなくオススメできます。ジャンルは電子音が強めの曲以外は何でも合う気がしますが、味付けは強めなので原音忠実を求める場合は微妙です。
個人的にかなりオススメできるイヤホンですが、上述通り超低音の量が多く、これ一本で何でも聴くというよりは他にも BA15 のようなスッキリ系のイヤホンと併用して使うのがより楽しめるかと思います。