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学齢期/青年期ASDの姿勢制御機能と日常生活技能(DLS:Daily Living Skills)

学齢期/青年期ASDの姿勢制御機能と日常生活技能(DLS:Daily Living Skills)

ASD児/者のDLSには微細運動と協調運動の困難さが関係していると考えられますが、先行研究として重心移動、立位、歩行課題などが多く、姿勢制御機能の役割/影響について報告した論文は少ないです。

そんなわけで以下の論文を読んでみました。

Postural Balance and Daily Living Skills in Children and Adolescents with Autism
Aubrey Fisher, Courtney Engel, Robyn Geist, Kristin Lillie, Sagui Lutman,and Brittany G. Travers : J Autism Dev Disord. 2018 Sep; 48(9): 3210–3215.
doi: 10.1007/s10803-018-3558-1

この研究のポイントは、
年齢やIQを補正/調整しても姿勢制御機能が低いとDLSの困難さも強いのではないか…という仮説に基づいて実施されています。

対象は
学齢期/青年期のASD児 52名です(年齢範囲;6~17歳、男性90.4%)。

評価は
運動機能/姿勢制御機能について
Bruininks–Oseretsky Test of Motor Proficiency– 2nd Edition (BOT-2) (Bruininks and Bruininks 2005)

日常生活技能(DLS:Daily Living Skills)について
Vineland Adaptive Behavior Scale, Second edition (VABS-II) (Sparrow et al. 2005)のDaily Living Scale

知的機能(IQ)について
Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence-2nd edition (WASI-II) (Wechsler and Hsiao-pin 2011)

結果

中央値以上のIQ(IQs105-135)児/者では、姿勢制御機能とDLSの困難さと関連は見られませんでした。しかし、中央値以下のIQ(IQs 67-104)児/者においてのみ、姿勢制御機能の低さがDLSの困難さと関連することが示唆されました(年齢補正あり)。

しかしながら、姿勢制御機能(BOT-2)を基に中央値以上/以下のIQ群で比較すると、IQに関わらず両群共に姿勢制御機能の低さを有していました(有意差なし)。

IQの低さはDLSと関連するが、姿勢制御機能はIQの有無に関わらず「低い」ことがわかりました。要するに「バランスは悪いが、IQが高ければ日常生活スキルはまずまずできる」ということです。

考察には、
IQの高い群は、DLS中の姿勢制御を補う戦略やルーチンを発達させてきたかもしれないと…記述しています。

例えば、服を着るときに座っている、作業時に壁面等の構造的支え/環境を用いて寄りかかる等です。

IQが低い場合には、DLSの評価/アセスメントを行う上で運動機能/姿勢制御機能を考慮することが重要であり、それらの介入により双方的に改善する可能性を示唆しています。

またIQが高い場合には、運動機能/姿勢制御機能に直接的に介入していくよりも認知・環境要因を考慮した戦略的な方法等を教示していくことが、DLS向上に寄与するかもしれません。

あくまで「IQ」ですからね…IQ高くてもVABS-Ⅱの他の領域が低い場合や凸凹が大きいこともありますから判断は難しいです。

個人的には、できることや強み(視覚支援、スケジュールや構造化/手順化等)を活かしてDLSが向上すれば良いやんとも思ってしまいますね笑。
けど、やっぱり最後の最後?でもうちょい「上着の袖を手や袖口の方向へ持ってくるための力、協調性、空間認知、四肢・体幹の位置関係/協調性とかあれば…」と思ってしまうのも事実であり、何事もバランスよく療育支援/介入していくことが大事です。

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