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DCDとASDの併存をどのように解釈するか

DCDとASDの併存をどのように解釈するか

Overlapping Phenotypes in Autism Spectrum Disorder and Developmental Coordination Disorder: A Cross-Syndrome Comparison of Motor and Social Skills
Emma Sumner, Hayley C. Leonard, and Elisabeth L. Hill : J Autism Dev Disord. 2016; 46: 2609–2620. doi: 10.1007/s10803-016-2794-5

この研究では…

1. ASD/DCD児 vs TD児のマイルストーンによる運動発達の遅れ
2a. 学齢期ASD/DCD児は運動能力及び社会的スキルの共に障害があるのか
2b. その能力は、3群(ASD/DCD/TD)を区別することができるか
3. 運動能力と社会性の関係は、3群で異なるか…を調査しています。

対象は、

ASD児30名(男児25名)、DCD児30名(男児21名)、TD児35名(男児26名)であり、全グループとも年齢範囲は7~10歳で基本情報に有意差はありませんでした。

評価指標に関しては、

臨床徴候/特異性について
MABC-2 (Movement Assessment Battery for Children, Standard scores) 10, SD SCQ (Social Communication Questionnaire)
WISC-IV (Wechsler Intelligence Scale for Children)

乳幼児期の運動能力について
Motor milestones questionnaire (adapted from Brouwer et al. 2006)

現在の運動/生活等について
Vineland Adaptive Behavior Scales (VABS-II; Sparrow et al. 2005)

社会的機能について
顔照合、表情認識、発話音/唇の読み、視線検出課題等として
Benton Test of Facial Recognition (Benton et al. 1983)
Face processing task (Bruce et al. 2000)
…が用いられました。

結果

1. ASD/DCD児 vs TD児のマイルストーンによる運動発達の遅れ

下図を参照↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4938850/figure/Fig1/?report=objectonly

Overlapping Phenotypes in Autism Spectrum Disorder and Developmental Coordination Disorder: A Cross-Syndrome Comparison of Motor and Social Skills
Emma Sumner, Hayley C. Leonard, and Elisabeth L. Hill : J Autism Dev Disord. 2016; 46: 2609–2620. doi: 10.1007/s10803-016-2794-5

運動発達のマイルストーンでは、
ASD=DCD、ASD=TDであったが、DCD>TDでのみ有意差があり、「ハイハイ、立位保持、独歩」で遅れを認めました(交互作用はなし)。

さらにポイントとして、DCD児の23%、ASD児の7%はハイハイを習得していませんでした。

2a. 学齢期ASD/DCD児は運動能力及び社会的スキルの共に障害があるのか
2b. その能力は、3群(ASD/DCD/TD)を区別することができるか

いっぱいあるので、上記のURLから参照してください。

まぁかなりASD=DCDの要素があるということです。「社会的機能」の項目に関しては、ASD=DCD>TDみたいな感じです。
勿論、M-ABC2やSCQなど臨床徴候を反映しやすい結果もありますが…。
特にVABS Gross motor / Fine motor ScoreにおいてASD=DCD>TDという点に関しては、ASDとDCDの併存例が多く存在することを意味していると思います。

加えて、Benton Test of Facial Recognition (Benton et al. 1983)とFace processing task (Bruce et al. 2000)の全ての指標においてDCDとASDは同様の成績を示したことは、DCDの社会的機能の困難さを示唆しています。

3. 運動能力(VABS Motor Composite)と社会性の関係は、3群で異なるか

運動能力を3つの社会的機能(Bruce Expression Match, Bruce Gaze Match, VABS Socialisation scale)の予測因子として説明できるか解析しています。

まず3群の特徴について
下表を参照↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4938850/table/Tab3/?report=objectonly

回帰式について
詳細は下表を参照↓↓
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4938850/table/Tab4/?report=objectonly

社会的機能との関係として、3群との違いを捉えているのですが…なんとも解釈が難しいですね。

とりあえず、Benton Test of Facial Recognition (Benton et al. 1983)とFace processing task (Bruce et al. 2000)よりも「VABS Socialisation scale」の方が説明する精度は高い(27-49%)ようです。

まぁVABSの社会性には「対人関係/遊びと余暇/コーピングスキル」とか総合的にアセスメントできる点で、他の機能評価?に近いような指標と比べると信頼性や妥当性が高いんでしょうかね。

しっかりとASD/DCD/TDを年齢やFSIQとかの説明変数で組み合わせてもASD=DCDの類似性が高いことは、早期発見/介入の手がかりとなるかもしれません。

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