見出し画像

子どもの実行機能を評価するためのBADS-C (Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome for Children)とは??

前回の続きを書いていきましょう。

子どもの実行機能(Executive Function:EF)を評価できる指標は、まだまだ少ないのが現状です。

以下のような論文を見つけたので、読んでみました。

Assessing Children’s Executive Function: BADS-C Validity
Jessica Fish and F. Colin Wilson2 : Front. Psychol., 19 February 2021 | https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.626291

Emslieら(2003)は、子どもの実行機能を評価するためにBADS-C (Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome for Children)を開発しています。

BADS-Cは、以下の6つのサブテストから構成されています。
1. Playing Cards Test
2. Water Test
3. Key Search Test
4. Zoo Map Tests 1
5. Zoo Map Tests 2
6. Six Part Test

*基本的に内容はBADSの評価に似ています。

この論文では、BADS-Cの構成概念妥当性等を検討しています。

対象は、8歳0カ月から15歳11カ月までの8つの年齢帯の256人の子どもたち(男性114人、女性142人)で構成されました。

方法
対象児の保護者や教師は、DEX-C (Emslie et al., 2003) とSDQ (Goodman, 1997) の2つの質問紙に回答しました。対象児には、BADS-C (Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome for Children)に加えて、言語性の評価に、asic Reading Test From WORD (Wechsler, 1993)、日常生活における遂行機能の問題を把握するためにThe Dysexecutive Questionnaire for Children (Emslie et al., 2003)、子どもの情緒や行動についてStrengths and Difficulties Questionnaire (Goodman, 1997)が用いられました。

結果/考察

BADS-Cの主成分分析の結果から2因子構造が示され、
「monitoring」:Playing Cards , Zoo Map tasks
「abstraction」:Key Search , Water tasks

となりましたが、Six Parts taskは合成変数を認めませんでした。

DEX-Cは、dysexecutive症候群と考えられる3因子構造で「behavior」,「cognition」,「responsiveness」となりました。

BADS-C及びDEX-CとSDQには、低・中程度の相関パターンが観察されました。またSDQの総合的困難さを低(≦25パーセンタイル)または高(≧75パーセンタイル)に分類してBADS-Cの結果を比較するとKey Searchの効果量は小・中でした[F(1, 31)=7.4, p = 0. 007、ηp2 = 0.053)、Zoo Map Tests1[F(1,31) = 5.72、p = 0.018、ηp2 = 0.042]、Six Part Test[F (6,126) = 4.39, p < 0.001, ηp2 = 0.173]は中程度の大きさの効果があり、SDQ高群と低群の間に有意差がありました。両群間の推定IQ差が顕著であっても、有意差があることが確認されました。

BADS-Cを用いて、SDQの困難さを予測できるか回帰分析を行っています。SDQの総合的困難さ(従属変数)からBADS-Cサブテストの6つの尺度スコアを基に解析し、Six PartsとKey Searchのスコアが日常生活の問題を予測することがわかりましたが、このモデルは分散の8%しか説明しませんでした[R2 adj = 0.08, F(2,221) = 10.40, and p < 0.001; Six Parts β = -0.229, p < 0.001; Key Search β = -0.176, p = 0.007] 。
また、Abstraction,Monitoring,Six Partsの各スコアを用いて解析を繰り返した結果、AbstractionとSix Partsの変数からなる別の有意なモデルが得られ、分散の7.4%を占めました[R2 adj = 0.07, F(2,221) = 9.776, and p < 0.001; Six Parts β = -0.221, p < 0.001; and Abstraction β = -0.163, p = 0.013 ]。

加えて、BADS-C下位尺度スコアがDEX-Cスコアをどれくらい予測できるか調査するためにDEX-C合計スコアを従属変数とし解析しています。6つの下位尺度の内、Six PartsとKey Searchのスコアに基づくモデルは有意でしたが、分散の4%しか説明しませんでした[R2 adj = 0.04, F(2,222) = 6.08, and p = 0.003; Six Parts β = -0.158, p < 0.017; and Key Search β = -0.159, p = 0.016] 。因子分析で得られたスコアを用いた分析では、Six Partsスコアが分散の2%を占めることだけが有意でした[R2 adj = 0.02, F(1,222) = 6.15, and p = 0.014; β = -0.165, p < 0.014]。

BADS-Cと日常生活上の遂行機能による問題やSDQによる情緒や行動の困難さには強い関係性があることは示され、構成概念妥当性を持つことがわかりました。しかしながら、決定係数が低く、BADS-Cのみで日常生活上の遂行機能の障害や困難さを予測することは難しいため、同定された因子構造を基に詳細に評価/アセスメントしていく必要性があると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?