見出し画像

ASDとTDの個人間差異は時代の変化と共に減少している

自閉症(Autism)を持つ個人とそうでない個人(いわゆる、定型発達:Typical Development)との差異が時間の経過と共に減少していることが示唆されています。

これは、「症状などがあいまいな境界をもって連続している(spectrum:連続帯)として捉えていく」ことの認識が広まっているとも考えられます。

まぁそんな論文を読んでみました。

Etiology of Autism Spectrum Disorders and Autistic Traits Over Time
Mark J. Taylor, Mina A. Rosenqvist, Henrik Larsson, et al : JAMA Psychiatry. 2020;77(9):936-943. doi:10.1001/jamapsychiatry.2020.0680

メタアナリシス(meta-analysis)を用いて、時間的経過と共に統計学的な効果量(effect size)に変化があるのか調査しています。

どのような項目(neurocognitive constructs)を用いて比較しているか?
以下の3領域・7つが挙げられています。

<Social> 
emotion recognition(感情認識)
theory of mind(心の理論)
<executive>
cognitive flexibility(認知的柔軟性)
planning(計画)
inhibition(抑制)
<neurologic>
event-related potential P3b(事象関連電位)
brain size(脳の大きさ)

その内、5つの構成要素に有意差がありました。

emotion recognition (slope: –0.028 [95% CI, –0.048 to –0.007])
theory of mind (–0.045 [95% CI, –0.066 to –0.024])
planning (–0.067 [95% CI, –0.125 to –0.009])
P3b amplitude (–0.048 [95% CI, –0.093 to –0.004])
brain size (–0.047 [95% CI, –0.077 to –0.016])

ポイントとして、効果量の減少は段階的ではなく緩やかであり、DSM-IV(1994年~2013年)に多く見られたことから、診断基準の変更だけではこのような傾向を説明することはできないと考えられます。

また、研究に参加する自閉症者が定型的なcotrol群との区別がつきにくくなっていることも要因の一つかもしれません。

そのため、 ASD phenotypeとしてサブグループや層別化して考えていくことも必要である…みたいな解釈ですかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?