あなたはわたし(18)【ナツキの記憶】
僕は清水の舞台から飛び降りる覚悟で、
メイの唇に自らの唇を優しく重ねました。
メイの小さな薄い唇は、予想以上に柔らかく、僕を受け止めてくれました。
僕が重ねに行ったのか?それも磁力のような力でお互いが引き寄せ合ったのか?
どちらとも分からなくなるような、優しい唇による抱擁のようなキスでした。
最初はおずおずと僕に応えていたメイの舌も、次第に情熱的になっていきます。
それは、言葉を使わない、コミュニケーションのようなキスでした。
緩やかな、リズミカルな、時に激しく、時に静かなさざ波のようなキス。
永遠とも思える時間を過ごしました。
もしかしたら、
もしかしたら無かったかもしれない
6年間という空白の時間を埋め合わせていたのか?
それともただの情欲だったのか?
それはわかりません。
でも、それは素敵な、時が止まる時間でした。
その時、僕には時間がありませんでした。
そして、僕は、大きな衝動に襲われていました。
手を合わせるだけで、あれだけの融合感を感じ、
唇を重ねるだけで、これだけの陶酔感を感じるなら、
もし肌を重ねたら、それ以上の世界を感じられるのだろうか?
メイが欲しい。
でも、小心者の僕は、縛られたように、言えません。
ここまで来ても、恐怖がよぎります。
あまりにも早すぎではないか?
ここまで感じられる人に嫌われたくない。
怖い。
でも、欲しい。
僕は。
僕は、愚かな男でした。
カラカラの口をやっとの思いでひらき、かすれながらメイにささやきました。
「きみが欲しい・・・」
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