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今日こそ二人で(4)【ナツキの視点】

「手が、動かない・・・」

なんとも間抜けな、でも正直な言葉をメイにつぶやきました。


間違いなく、僕にはメイを求める欲望がありました。

でも、それを上回る陶酔感が、それをフリーズさせていました。

それは求める先が爆発的な快楽だとすれば、今は、溶けるような安心感と満足感を味わっているからでした。

とろけるようなではなく、溶けるようなというのが、
そもそもの戸惑いだったのでしょう。

それは、全く違う種類の感覚で、多分比べるものでもないのだと、今は思います。

でも、その時には、欲望を上回る未体験の安心感に、
ただ喜びながらも戸惑うしかない僕がいました。


愛し愛され。

愛撫し、愛撫され。

感じさせ、感じさせられる。


そんなこれまでの体験とは違う喜びは、もはや戸惑いでしかありませんでした。


初めての相手との愛し合う時には、もちろん緊張はあります。
しかし、百戦錬磨とはいえませんが、それなりの経験をもつ僕が、
戸惑いから凍り付くなど、ありえないことでした。


動かない身体をだましだまし。
僕は、ゆっくりと、メイの頬に、額に、唇に、
柔らかな挨拶を自らの唇でしました。

ようやく僕は、自らを取り戻し、
ゆっくりと愛の行為を始めました。


今日こそ、二人で。

あの世界へ行くのです。


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