目からハム
「目からハム」である。一体どういう発想で出てきた言葉なの?としか思えなかったが、これはイタリアの諺だそうな。日本人からするとどこからどう生まれたのか疑問に思うが、日本語でも似た言葉に、「目から鱗」があることを思い出すと、国は違えど似た言葉はあるのだな、と思う。
この本は長年イタリア語通訳をされている田丸公美子さんが書かれた本。ロシア語通訳をされていた米原万里さんに触発されて読んでみた。こちらも同時通訳の大変さ、難しさをさまざまなシーンを取り上げて紹介されている。記憶力、語彙力、瞬発力だけでなく、双方の歴史・文化、類似言語の慣用句、翻訳する仕事の専門用語、発言者の過去のスピーチ内容を頭に入れかつ場にあった言葉を選択する適応力と、どれだけのスキルを持ち合わせているのかと感心する。それだけでなく、数日に及ぶ、視察や国際会議では同行しつつの体力が必要で、政治的な会議では誤訳は国際問題に発展する可能性もあるので、神経を使う。
翻訳を通じてイタリアのさまざまな文化を紹介されている。情熱的な人柄で有名な国だが、それを言語という切り口からさまざま説明されている。感情を表すための単語の豊富さと相対して、それをうまく表現する言葉を持たない日本語についても多数書かれている。言葉は文化と歴史を表すものであり、何が優れている、劣っているはないが、それを橋渡しする仕事は難しいと思う。
翻訳する人も、扱う言語によって性格が異なるというのも面白いけれど納得してしまうところ。そう考えると、次はどの言葉を翻訳されている方の本を読もうか悩んでしまう。
街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな