食物のある風景
読みやすさで、このところエッセイ続き。今回は池波志乃さん。女優さんとしてテレビや、映画で拝見する姿は、和服、江戸っ子できっぷの良さが印象に強い。知らなかったが、お父さん、お爺さんと有名な古典落語家さんとのこと。
入り口は、町の記憶。
子供の頃は日暮里、谷中、上野と東京、というよりも江戸という風情を残す町で過ごされている。そこで培われたものが自然と出ているように思う。再開発で次々と高い建物が立ち並ぶようなエリアではなく、皆が思うイメージがまだ残るというものの、逆にそれを売り物にして騒がしくなっていることを残念に思っていることが出ている。大人になり、アトリエを木更津につくり、近年は沖縄が大好きになり、そちらで活動をされているとのことを知りました。
中盤から食べ物を題材にしたお話になる。
旅とグルメを合わせた番組にも夫婦で多数出演されているが、話に出てくるのはそういうものはなく、むしろ美味しいものばかりを立て続けに5食も食べるのは体を壊すと辛口のご意見。そりゃそうだ。
素朴な食材での話題が多い中に出てくるすき焼きの話。
本当に美味しい食べ方を若い頃に先輩から教わった。美味しい肉を皆に振る舞まうが自分はまだ食べない。皆が食べ終わった頃そこから出た旨みをたっぷりと吸った焼き豆腐、葱、白滝を摘んで一献、そしてごはんを少し茶碗によそい、ぶっかけを食べる。
なるほど、これは贅沢で、粋な食べ方だと感心した。
題字は旦那さんが書かれており、挿絵は全てご自身が描かれている。紅玉、椎茸、糸瓜、茄子、蓮根、栗、茗荷とどれも本にぴったりの画風で話を盛り上げているもの良い。
最初は作家さんのエッセイばかりだったが、こうして物書きではないけれど、表現者として、また、仕事柄さまざまな場所に行き、色々な人を見てきた人のエッセイも読むと楽しい。さて、次はどれにしようかな。
街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな