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静岡近代美術館「シャガール・ピカソ(リトグラフ)展」

先日、私のお気に入りの美術館である静岡近代美術館で開催している「シャガール・ピカソ(リトグラフ)展」に行ってきました。


はじめに

静岡近代美術館は、私と同じ世代の静岡県人なら誰でも知っている「大村洋品店」の社長で、この美術館の館長でもある大村明氏の個人コレクションを広く一般に公開する目的で静岡市に開設した私設美術館です。
JR静岡駅からは徒歩で20分程かかりますが、散歩と思えばちょうどよい距離です。

美術館外観
(静岡近代美術館HPより)

私は社会人になってから静岡を離れてしまったため、普段はなかなか行くことが出来ないのですが、正月休みで帰省した際に、ここぞとばかりに足を延ばしてみました。

展示概要

今回の「シャガール・ピカソ(リトグラフ)展」は、いつものように1階展示室の左半分を使って、シャガール7点、ピカソ6点のリトグラフが、シャガールの油彩画1点とともに展示されていますが、これといって特筆することはありません。

それよりも、1階右半分と2階展示室の壁を埋めている常設展示が相変わらず魅力に溢れていて、近代日本洋画好きにとっては本当にたまらない空間です。

お気に入りの作品

前回訪れた時から全体の3割程度が入れ替わっている印象を受けましたが、今回特に目を惹いたのは、荻須高徳の《ヴァンヴ通り》でした。

荻須高徳《ヴァンヴ通り》左から3枚目
(静岡近代美術館HPより)

荻須は1927年に当時パリにいた佐伯祐三を頼って横手貞美らと渡仏し、佐伯と制作活動を共にしますが、この作品はその翌年の1928年に描かれたもので、佐伯の影響を色濃く感じる一枚です。

1930年代に入ると徐々に佐伯色は薄まり、より造形的で温かなタッチに変化していくのですが、ちょうど前回の記事で横手貞美を取り上げたタイミングで、パリで活動を共にした仲間の当時の作品に出会えたのは、ちょっとした驚きでした。

また、もうひとつ目を惹いたのは、「モリカズ様式」で描かれた熊谷守一の作品です。
この美術館で、熊谷の油彩画が4枚並んで展示されているところに出会うのは初めてでしたが、単純な作品なのについ足をを止めて見たくなります。

熊谷守一《猫》右、《向日葵》中央
(静岡近代美術館HPより)

中でも《猫》は、大村館長の著者「静岡に名画を」の表紙にも登場し、この美術館のシンボル的な存在ですが、かつて、梅原龍三郎が自ら購入し、長いこと自宅の居間に飾っていたというエピソードを持つ作品です。

あと、これは本当に偶然ですが、「GQ」という雑誌のウェブサイトで日動画廊の長谷川社長と秋元康氏の対談記事(2014年)を見つけたのですが、そこで長谷川社長が秋元氏にしきりに薦めている作品がこの《向日葵》なのです。

美術鑑賞は、美術館に出向いて実際の作品と触れ合うことだけでなく、こういったエピソードとの出合いや発見も面白さのひとつなんだと改めて感じました。

あとがき

この美術館では、帰りがけに「どこから来ましたか?」と「どの作品が気に入りましたか?」と必ず聞かれるのですが、今回初めてお気に入りの作品を聞かれませんでした。

いつものことなので、ちゃんと答えを準備していたのですが、翠富士関の出身県だけに「肩透かし」を食らった格好です。(このネタで笑ってくれる人は何人いるでしょうか)

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