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ああ、自己嫌悪

※約1900文字、『便』に関するお話があります


事は昨日起こったばかり。自己嫌悪から反省へ、そしてやり場のない怒りへと気持ちが揺れていたが、姉と話して一晩寝たらモヤが消化されていた。


さて骨折の件はあるものの、足は元気なので実家や母のいる施設には前と変わらず行っている。

昨日も午前から母の施設を訪ねていた。
普段から昼の食堂へ向かう前に、母には早めにトイレへの声掛けをするのだが、昨日はそのタイミングで便をもよおしたと自ら言い、トイレに籠もってしまった。

※現在母はゆっくりだが排尿排便は通常自分でする


排便行為はいのちに関わると聞いたから


さて母は昔から便が出にくい体質で(便秘ではない)、認知症高齢者ではなかった頃から“長便”であった。
最近は疲れて、ペーパーホルダーに頭をもたげて休憩する程トイレに長居する。血圧に配慮要でもあるのだ。

これについては「排便行為は人によっては命に関わるのよ」とケアマネさんや看護師さんから時間をかけるよう指導を受けてきた

まあ、これは母だけでなく多くの高齢者の一般論だとは思うし、トイレ横には洗面台に椅子も備えてある。

実際これまで排便の後、洗面台の椅子で、脱力からの居眠りをしている母を何度も見てきた。


カーテン奥のトイレに籠もる母に迷った私

そんなこともあって母が排便に入る時、私はカーテンの外から母にばれないよう随時チェックしている。


しかし昨日の母は様子が少し違った。
なぜかカーテン越しにペラペラしゃべる。何かをごまかしている様に。
失敗したのだと思い何度も「入っていいかな?きれいにするよ。出ちゃってない?」と声をかけたがひどく拒否された。

つまり、失敗していても、私には処理されたくないということだ。私はどうしたら母の気持ちが楽か迷ってしまった。


結局全く使えない自分

結局のところ私が躊躇している間に、昼の声掛けにきてくれた職員さんによって解決された。
便が少々紙パンツに残っていたのだという。

物理的に手の使えなかった私以上に使えない自分がいた。

母はカーテンの中で何度も詫びていた。
職員さんはその言葉をさえぎるように

「手を洗って」と何度も繰り返した。
「ご飯冷めちゃったからね。早く来てね」
「長時間座ってておしりに傷がついちゃうね」

彼女は母にそう言葉をかけていた。

私は出ていく彼女に慌てて詫びて連れて行くことを伝えた。


食堂に向かう廊下で母は私の手をギュッと握ってきた。
「ごめんね。私のせいだ」と話しかけたら「ううん?ごめんね。あんたに言いたくなかったの」と返してきた。
どうしてここはボケてないんだろ。
わずかばかりの“お母さんの名残り”なんだろうか。


食堂で母を椅子に座らせると、すでに食事をしていた皆さんの視線が一斉に向けられた。 
汁椀をあけて、まだ温かいから食べてねと声をかけると母は不思議そうに「ええ?」と言っただけだった。


たった今の出来事を忘れたみたいだった。私にしてみたら、母はまるで給食を食べるのが遅くて注目されている子どもの様に見えた。

先ほどの職員さんはこちらに視線を向けることなく、声をかけてくれることもなく通り過ぎていった。相当怒っている様子が明らかだった。


さて何がいいたいかと言うと 

グダグダとまるで職員さんを悪者のように匂わせているが、この職員さんは母に怒っているのではないのだ。
母を介して私に怒っており厳しい言葉をかけたのだ。たぶん彼女は間違ってない。


彼らも仕事だ。私がいなければ怒りもわかなかっただろう。ぼおっとしていた家族が怒りスイッチを押したのだ。

それだけ圧倒的に忙しいのだ。


皆さん忙しそうだから、危なくないことは来てる家族がやってもいいと私は常々思っていた。
そもそもそれ自体がそれも上から目線だったかもしれない。早めにヘルプを呼ぶとか、できた普通の対処さえしなかった。 


昨日、私は何で何にもできなかったのだろう。
便ぐらい本当はいくらだって処理できる。


なるべく急がせたくない

人を呼びに言ったら母の信頼を損ねる

色んな言い訳が頭をよぎった。情けなくて仕方がなかった。



そして職員を怒らせたうんぬんより、何より母を排便後休ませず、急がせ食事をさせることになった原因はたぶん私にあった。


結局逃げるようにして施設を出てきた。

母は今忘れてても、心の、頭のどこかで傷ついたかもしれない。


母は今自分がなぜどこにいるのかわからなくなった。自分が誰なのかさえもわからなくなっているかもしれない。
母にとって私達家族はもはや
『“大事な人たち”に分類される誰か』である


実は父も私も最近母に会いに行くのが辛くなっていた。そんな母を見るのが辛いのだ。
素直じゃない父さえそう言うのだから。

この気持ちこそが今回のことに繋がったんだ。



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