2019 ガンバ大阪シーズンプレビュー

 みなさまこんにちは。ちくわと申します。

 普段は @ckwisb というツイッターアカウントでしょーもないことをつぶやいている一般的なサラリーマンですが、今回は私の応援するガンバ大阪というJリーグクラブの今期展望についてまとめていきたいと思います。

 昨年から今年にかけて、twitter周辺でいろいろとサッカーに詳しい人、俗に戦術クラスタと呼ばれる人たちをフォローする機会が増えてきました。せっかくなので、インプットしたものをアウトプットできる機会を作ろう、ということでリーグ戦を中心に試合のレビューなんかもしようと思っています。観測範囲内にガンバサポーターの戦術クラスタは少ない気がしているので、そういったニーズに対してコメ1粒ぶんぐらい貢献できればいいかなと思っています。

 前置きはこのぐらいにして。本日は以下の2点からガンバ大阪の今期展望について語っていきたいと思います。

・宮本監督の真価が問われる2年目
・戦力の充実度、オフシーズンの準備

宮本監督の真価が問われる2年目

 1年目の宮本監督について簡単にまとめます。前任監督の成績不振からシーズン途中に就任。序盤は苦しむも、後半戦にチームの立て直しに成功しクラブ記録に並ぶ9連勝。就任してからの成績のみに絞ればリーグ2位の好成績でチームのJ1残留を達成した。ということで、就任後半年は完璧に近い成果を残している監督です。
 とはいえ、シーズン途中での就任。それも「残留争い」という特殊なシチュエーション下で、という留保がつくのは否めません。

 昨シーズンの宮本ガンバの戦い方は、一言でいえば「対処療法的」でした。自分たちのやり方ではなく、とことん相手への対応にこだわる。相手の攻撃を耐え忍び、ワンチャンスをものにして苦しみながら勝ち点を拾う。それを顕著に示すスタッツがシュート数です。なんとガンバ大阪、9連勝のうちシュート数が相手を上回った試合は1試合もありません。
 この「対処療法的」戦い方が、そもそも宮本監督の哲学に基づいたものなのか、残留争いという特殊なシチュエーション下で導かれた一過性のものなのかが、序盤の数試合における1つのアジェンダになるでしょう。
 長いシーズンを戦う上で常にこうした戦いを志向するのは難しいと思うので、今年はある程度自分たちのやり方というところも整理してくるのではと思います。ただ宮本監督自体まだ監督になってからのキャリアは短いですので、理想と現実のバランスに苦心する1年になりそうです。

戦力の充実度、オフシーズンの準備

 今期のガンバ大阪ですが、近年稀に見る堅実な補強を進めているな、というのが率直な感想です。主力の離脱はCBのファビオのみでそれ以外は残留。空いたファビオの穴にも韓国代表キャプテンのキム・ヨングォン、タイの強豪から日本へ戻ってきた青山という即戦力を確保しており、戦力の底上げに成功しています。
 また、1年を戦う上で懸念だったサイドハーフの層の薄さも解決されています。J2ベストイレブンに数えられる田中達也の獲得に成功したことをはじめ(ここはSBで使う噂も出ていますが)、元スペインU19代表のダビド・コンチャの獲得も噂されており、充実度合いは高まっています。
 今期の補強で感じるのはスピードを武器にする選手を多く集めていること。田中達也は言わずもがな、キム・ヨングォンもディフェンダーでは水準以上のスピードを持つ選手です。またコンチャも動画を見る限りではトラップからの加速、ドリブルをこなしながらのトップスピード維持に特徴があるように感じます。トランジション(攻守の切り替え)に強みを持たせる設計にしたい、という宮本監督の思惑が見えなくもありません。
 そんな中、課題となるのはボランチです。仙台にレンタル移籍させていた矢島を戻したもののそれ以外で目ぼしい補強はありません。遠藤・今野は未だ一線級の選手ではありますが、キャリアの晩年を迎えており急激なパフォーマンス低下のリスクがあります。ここが宮本監督の志向するであろうトランジションの設計にどう影響するか。開幕から数試合、旗色が悪ければ選手の追加補強もありえるポジションです。
 合わせて、絶対的主力であるファン・ウィジョをはじめとしたアジアカップ組のコンディションがどうなっているかというのも序盤の課題のひとつです。所属クラブでの消耗がほぼなかったキム・ヨングォンはともかく、ファン・ウィジョの酷使ぶりは相当なので、彼がフォームを維持できるかどうかも重要になってきます。

 一方で、今シーズンのガンバは選手以外の補強も積極的でした。ここ数シーズン、外様である長谷川監督→クルピ監督という指揮官のもとで、フロントとコーチ陣の意思疎通が必ずしもできているとは言えない状況が続いていましたが、宮本監督-松波強化部長という体制の確立でその課題は解消されました。トニフィジカルコーチの招聘などもその結果の一つでしょう。
 しかし、短期的に見れば状況は改善しているものの、中長期的には内輪の論理に浸かってしまい、茹でガエルになりかねないリスクを孕んでいます。宮本監督はFIFAマスターを修了していることからも分かるように、サッカー界のトレンド、潮流を読む力とコネクションを備えていると思いますが、あくまで現行の体制は宮本監督の良心に頼っている状況だとも言えます。この体制が維持できなくなるような不測の事態に対してリスクマネジメントができるかどうかも、長い目で見れば課題かもしれません。

まとめ

 ここ数年のJリーグを見ていて、「当たり前のことを当たり前にやること」がいかに大事かということを感じます。リーグはフロントも含めた総合力が問われる時代になってきました。
 その点、ガンバ大阪は他クラブと比較して絶対的なアドバンテージがあります。言うまでもなく、日本最高のスタジアムであるパナソニックスタジアム吹田の存在です。普遍的な真理として、性能の限界はハードウェアによって規定されます。大阪府という豊富な人口基盤を持つ地域をホームタウンとし、日本最高のスタジアムを抱える。こうしたハードウェアの優位性は一朝一夕で埋められるものではありません。
 リーグ連覇を果たした川崎が獲得したDAZNマネーをハードウェア投資にも回しているのはこの「当たり前」の認識がフロントにもあることに他ならないでしょう。
 ここ数年のガンバはお世辞にもソフトウェアがハードウェアに追いついているとはいえない状況でした。優勝候補と目されるクラブとの彼我の差を見れば、この一年での復権は難しいかもしれません。
 しかし、ガンバがクラブの数年を(結果的に)犠牲にしてでも手塩にかけて育ててきた宮本監督とともに、確かな継続性を持ってソフトウェアのバージョンアップを図っていくことができれば、近い将来、再びの栄光がガンバに訪れると思います。期待を込めて、この項を終わります。

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