2020 ガンバ大阪シーズンプレビュー

 皆様こんにちはちくわです!

 久しぶりのガンバ関連記事です。今回は「ガンバ大阪シーズンプレビュー」と題しまして、今期のガンバ大阪の展望についてまとめていきたいと思います。

 大体開幕節が始まるまでに記事上げればいっかぁ……と思ってたんですけど、今期はルヴァンカップがJ1リーグ開幕よりも早いんですね。もう今週末じゃん!というわけで慌てて筆を執っている次第です。

 昨シーズンの振り返りはこちら。

 詳しくは上記の記事をご確認いただくとして、昨年は前半の低空飛行を経て試行錯誤を繰り返しながら終盤は調子を上げ、結果はリーグ7位という着地、主要タイトル無冠、といった寂しいシーズンでした。

 ここからは、スカッド・戦術・チームマネジメントという3つの観点から2020シーズンのガンバについて確認していきましょう。

スカッド:「豪華補強」の名実は伴うか

 まずはスカッドから。

 最終節の出場メンバーは全員残留。昨シーズン主力のほとんどが2020シーズンも引き続きガンバを戦いの舞台に選んでくれました。2年連続残留争いという苦しい状況にいながら、ガンバを選んでくれるということに改めて感謝したいと思います。

画像1

 昨年の夏に冬の移籍に近い選手の大移動が起こったため、今期のオフシーズンはある意味で例年の夏移籍のような位置づけと捉えてもいいかもしれません。現状の3-5-2をアップデートするような補強方針を感じます。

 目玉補強は小野裕二。強化部はサイドの選手として獲得したそうですが、宮本監督はインサイドハーフ、FWでの起用を想定しているとの報道。豪快なドリブル突破を武器にしつつ、鳥栖での終盤はボランチで新境地を開拓するなど複数ポジションをこなせる器用さと経験に基づいたプレービジョンが魅力の選手。システムの成熟度を底上げする活躍が期待されます。

 加えて新里亮。磐田からのレンタル移籍での獲得です。右利きでありながら、左サイドへのボール配球を苦にしない選手。ガンバの左CBはキムヨングォンが絶対的な存在として君臨しているので彼が万全の場合にはなかなかスタメンを奪えないかもしれませんが、右も遜色なくこなせるとのことで激しいスタメン争いを演じてもらいたいです。

 そしてなんといっても2月に入り突如発表された昌子源の獲得。現在は怪我のリハビリ中ですが、ロシアW杯日本代表スタメンという疑いようのない実績を持った選手です。スカッドのレベルを押し上げる補強になっていると思いますが、この選手に期待したいのは単なる戦力以上の部分です。それについては後述します。

 一森純も見逃せない補強。GKからのビルドアップで違いを見せてくれそうです。J2で複数シーズンにわたって正GKの座を確保しており実績充分。ここ数年ポジション争いが起きていなかったGKに新たな風を持ち込み、切磋琢磨によってレベルが上がっていくことを期待したいです。

 山本悠樹、黒川圭介の大卒新人にも期待です。山本悠樹は一昨年の天皇杯でガンバを破った選手。大学No.1MFとの呼び声も高く、1年目からのブレイクを期待したいです。黒川圭介は昨年既にデビュー済みの左サイドバック。ルヴァンカップでのデビュー戦ではインテリジェンス溢れるプレーでサポーターを魅了しました。

 ほぼ全てのポジションで計算できる選手を2人以上用意でき、陣容はかなり厚くなったと思います。

 一方で、昨年から補強ポイントと明示していたアンカーの補強がなかったのはネガティブ要因。韓国代表のチュ・セジョンにオファーを出していたようですが、今冬はまとまらず。「豪華補強」と言われるオフシーズンのガンバですが、やや話題先行の感が否めず、スカッド上の弱点と認めていたポジションを放置しているのは少し気になるところです。

 キャンプレポートによると、井手口をアンカーで使っているとの情報も。小野がインサイドハーフで使える目途が立ったことで、中盤の3枚をうまく入れ替えながらやりくりしていく腹積もりがあるようです。

 他にも、高尾を右ウイングバックで使う、倉田を右インサイドハーフで使う、小野瀬をFWで使うなど、「1人で複数のポジションをこなす」ことを求めている節のあるキャンプでの宮本監督。その狙いがどこにあるのか、もう少し別の視点から掘り下げていきたいと思います。


戦術:「守備が弱点」とは。ビッグワードの解像度を上げる

 さて、次は戦術的な側面から2020シーズンのガンバを考えてみます。その準備として、ガンバの昨シーズンのサッカーをデータで振り返ってみましょう。使うのはFootball LABさんの「チャンス構築率」のデータ。

 まずガンバの攻撃側面についての数字を拾ってみましょう。

攻撃回数リーグ14位(1試合平均:111.4)
シュート本数リーグ2位(1試合平均:14.6)
チャンス構築率(シュート数/攻撃回数)はリーグ1位(13.1%)
ゴール数リーグ4位タイ(54得点)
シュート成功率リーグ8位(10.5%)

 攻撃回数はリーグ14位。「攻撃回数が少ない」ということは、「攻撃的ではない」という意味ではないのに注意が必要です。サッカーは常に攻撃と守備が入れ替わるスポーツなので、「攻撃回数=攻撃と守備のサイクルをどれだけ短い時間で回しているのか」という考え方が正しいです。つまり、リーグ14位という攻撃回数の低さは「攻守が激しく入れ替わるオープンな展開を好まず、じっくり攻める展開を好む」ことになります。

 それでいて、シュート本数はリーグ2位、シュート本数を攻撃回数で割ったチャンス構築率はリーグ1位。「じっくり攻めつつ、シュートまでしっかり持ち込めている」ということで、ある程度狙い通りの形は出せていると言えるのではないでしょうか。

 一方で、ゴール数はリーグ4位シュート成功率はリーグ8位です。つまりは「ゴールの可能性が高いシュートを打てていない」、もしくは「シューターの精度に課題がある」、場合によってはそのどちらも、という解釈ができるでしょう。

 そのため、攻撃における今期の課題は「いかに"最後の質"を上げていくか?」ということになってくると思います。「1人で複数のポジションをこなせるようになる」の1つ目の目的がここで出てきます。

 ガンバは、終盤戦でインサイドハーフが得点機に顔を出したように、アタッキングサードではポジションを入れ替わりながら(いわゆる「ローテーション」しながら)チャンスメイクを行っています。

 「1人で複数のポジションをこなせる」ということは、「ポジションを入れ替わったときでもそれぞれのポジションでやるべきことが分かる」⇒「より質の高いチャンスが作れる可能性が高くなる」ことに繋がるはずです。


 次は守備についての指標を引っ張ってみます。

被攻撃回数リーグ3位(1試合平均:110.4)
被シュート本数リーグ15位(1試合平均:14.1)
被チャンス構築率(シュート数/攻撃回数)はリーグ15位(12.8%)
被ゴール数リーグ10位(48失点)
被シュート成功率リーグ8位(9.8%)

 ガンバは「守備が弱点」と言われますが、守備の「何が」弱点なのかということを考える必要があります。

 被シュート数は15位ながら被ゴール数は10位、被シュート成功率はリーグ8位ということで被シュート数に比べると高い順位となっており、「最後の質」は、それほど優先順位の高い課題ではないということになります。

 では課題はどこなのか。注目したいのは「被攻撃回数」の少なさに対する「被シュート本数」の多さですね。言い換えれば「相手に簡単に前進を許してしまい、狙いとする形を出させてしまっている」ということです。

 つまり攻撃で改善するのが「最後の質」とするなら、あれば、守備で改善するのは「途中の質」ということになるわけですね。

 今期のガンバは「ハイプレス」に取り組むという報道が出ていますが、それはこの「途中の質」を改善しようという試みに他ならないでしょう。守備陣形をセットした際に、いかに相手の前進を阻むか。ボールを失った際に、いかに即時奪回するか。

 ここでも、「複数のポジションをこなせる」意味が出てきます。ガンバがローテーションで前進するということを裏返せば、攻撃が成功せずボールを失ってしまった際は当初のポジションとは別の場所にいる可能性が高いということ。

 そこで正しい判断を行い、すぐにボールを奪い返すのか・後退してブロックを組むのかなど、チームとしての共通認識を作っていく際に、複数ポジションをこなせることが意味をなしてくると思います。


 さて、ここまでスカッド・戦術という観点で振り返ってきましたが、漏れ聞こえてくる情報からだと方向性は概ねポジティブだと思います。

 ただ、いくらスカッドが豪華でも、緻密な戦術を構築しても、それを正しく機能させられるかどうかは別の話です。最後にチームマネジメントという観点からもう少し考察を進めていきたいと思います。


チームマネジメント:「課題はメンタル」。あるべきタスクをあるべき場所に

 チームマネジメントについて論じる上で参考にしたいのが、昨年のロッカールーム映像をまとめた「ガンバ大阪 宮本恒靖 激動の1年に完全密着~プロのロッカールームを400時間撮り続けたら…~」というムービーです。

 (購入先へのリンク貼ろうとしたんですが、受注生産品なんですね。。観たい人はうちに遊びに来てください。笑)

 内容に関して詳しくは割愛しますが、とにかくロッカールームにおける宮本監督の「孤軍奮闘」が目立つムービーでした。

 編集方針としてそうなっている可能性もありますが、宮本監督がよく喋っていて、選手との温度差がすごい。「選手」と「監督」の関係性というよりは、「先生」と「生徒」に近いものを感じました。

 これはムービーを観た自分の仮説ですが、宮本監督に仕事が集まりすぎているのが今のガンバなのではないかと思っています。「監督」でもあり「キャプテン」でもあり「作戦参謀」でもあり……と、さまざまなタスクが宮本監督の肩に乗っかっていて、キャパオーバーしているように見えます。

 今までのガンバでそれが成り立ってきたのはヤットの存在が大きかったと考えています。ピッチに対する絶大な影響力、超然とした姿勢が選手たちのロールモデルとして機能してきたことで、選手は自立し、監督がロッカールームのマネジメントに困ることはなかったのではないでしょうか。

 そのヤットのピッチ内での存在感が少しずつ小さくなってきたことで、新たなキャプテンシーの在り方が求められるようになってきた。現在のチームキャプテンは三浦ですが、ヤットと同じようなロールモデルの作り方はできないはず。彼の試行錯誤が、結果として宮本監督にキャプテンシーを求める結果になったのが昨シーズンではないかと思います。

 新加入の昌子源に単なる戦力以上に期待したいのは、この「キャプテンシー」の部分。鹿島で長くシーズンを過ごし、「キャプテンシー」についての引き出しを多く持っているのが彼だと思います。その一端は加入会見からも感じることができました。

 もちろん今期のキャプテンは三浦です。昨シーズンの反省をもとに彼なりの「キャプテンシー」を見出していくと思いますが、様々なシチュエーションにおいて昌子がもたらしてくれる刺激は大きいと思います。


 宮本監督は昨シーズンのホーム最終戦スピーチで課題を「メンタル」と言いましたが、「メンタルを改善しよう!」と言って簡単に改善するのであればマネジメントの仕事は要りません。

 「仕事をあるべき形に割り振り、各々が各々の仕事に没頭できるような体制を作り上げる」ことがメンタルの改善に繋がっていくと思います。

 U-23の宮原コーチがトップチーム専任となるなど、宮本監督に集まっていたタスクを分散しようとするクラブの意図は見えます。正しい役割分担が、ピッチ上での選手の躍動にも繋がってくるはずです。


まとめ:「結果」を動力に。

 ここまで、スカッド・戦術・チームマネジメントというそれぞれの側面から考察を進めてきました。

 僅かな情報からの推察というエクスキューズは付きますが、クラブとして変化のために色々と手を打っていることは伝わってきます。

 あとは結果が伴ってくるかどうか。もちろん、目先の結果に一喜一憂せず、ブレずにやっていくことも重要ですが、結果がチームの取り組みをドライブしていくという側面は間違いなくあると思います。

 開幕戦は、昨年シーズンダブルを食らったディフェンディングチャンピオンの横浜F・マリノスのホームに乗り込みます。

 「苦手のアウェイ日産スタジアム」×「苦手の開幕戦」×「相手は優勝チーム」と厳しい条件がいくつも重なっています。普通に考えれば、勝ち点を計算するのは難しいでしょう。が、逆に言えばここで勝てれば全てが好転するかもしれない。


 発言について慎重に慎重を期する宮本監督が、ついに「タイトル」を口にしたのが今シーズン。これを意気に感じずにいられましょうや。

 ピッチ内外から発せられるメッセージをできるだけ読み取って形にすることで、少しでもチームのサポートになればと信じて、今シーズンも情報発信を続けていきたいと思います。


ちくわ(@ckwisb

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?