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UXのマクドナルド化

文章を書く練習を兼ねて、主に英語で書かれたデザイン・アート関連の記事を紹介します。

今日はMediumで見つけたUXのマクドナルド化(The McDonaldization of UX)という記事です。

ヘルスケア部門のUXの電話面接を受けた筆者のChrisは2分もしないうちに飽きてしまいます(It only took her less than two minutes to lose me)。

Lose は相手の言っていることについていけない時に "You've lost me." のように使えますが、この場合は興味を失ったという感じでしょう。

It only took her less than two minutes to lose me. There was no discussion concerning the impact I would make on patients lives or the lives of clinicians. She asked all the right questions about my process, background and work history. She proceeded to describe the same position I work at in nearly every corporation — design systems, agile, wireframes and all the usual suspects. But it was the same shit, same position, different corporation. I pictured myself toiling away to make hospitals and this corporation more money while patients continued to shoulder the high cost of healthcare. It felt a little bit like Bizarro Robin Hood.

患者の命や医師の毎日にどんなインパクトがあるかと言った話はなく、デザインシステム、アジャイル、ワイヤーフレームと言ったどこでも聞く話(usual suspects)ばかり。病院と会社を儲けさせて、患者は高額なヘルスケアを背負ったままな状態を想像すると逆ロビンフッド(Bizarro Robin Hood)になった気分です。

Usual suspectsは映画のタイトルですが日常会話では「お馴染みのやつ」くらいの意味で使います。"The breakfast menu had all the usual suspects—eggs, pancakes, waffles, and French toast" と言った感じです。Bizarro Robin Hood は貧乏人から奪って金持ちに分け与える悪いやつ。たぶんスーパーマンの悪役版クローン、ビザロに由来してるのだと思いますがよくわかりません。

クリスは最近UX関連の職が「マクドナルド化」してるのではないかという疑いを持っています。

Good is a subjective word, so let me be specific here. Good at a very basic level means the job title and description actually match what you will be doing, the position is one in which the candidate will grow (or at the very least not dread going to out of boredom after the first month) and it is a position devoid of the assembly line nature of many UX positions. This last one is of special concern to me.

いちばん基本的な意味で「良い」職業には、タイトルとやることが一致していて、成長することができ、多くのUXポジションにありがちな組み立てライン感がない(devoid of the assembly line nature of many UX positions)ことが必要だと考える筆者は、この最後の点が特に気になると言います。
Devoid of は〜がない、欠けているという意味、void of(〜がない)、avoid of(〜を避ける)とセットでどうぞ。

マクドナルド化とは社会学者のGeorge Ritzerが The McDonaldization of Society で使った現象で、下記の5つが要因として挙げられています。

Efficiency — 効率性。目的達成の為に無駄をなくして最適化すること。

Calculability — 計測可能性。測ることのできる結果が質よりも優先される事。Calculability — 計測可能性。測ることのできる結果が質よりも優先される事。

Standardization —標準化。毎回変わらず同じものを提供する事。

Social Control — 社会統制(もっといい役がある気がする)標準化された従業員たち。

Irrationality of Rationality — 合理性の非合理性。合理性のためのシステムが従業員を蝕み人間性を奪う事で、結果として非合理になってしまう事。

その昔、UXがまだ一般的でなかった頃は(組織が自分たちのしていることを理解せてくれなかった代わりに)自分たちでプロセスがコントロールできていたが、最近は標準化が進みすぎて型で抜いたような(cookie-cutter)仕事が増えているのではないか、というのがこの記事の論旨です。

実際どうなの?

もちろん現場によって状況は異なるので一概には言えませんが、この記事で書かれているような状況はある程度実際に起きている様に思います。業界が成熟して良くも悪くも教科書的なデザインのプロセスが情報として手に入りやすくなり、期待される成果がテンプレート化している部分もあるかもしれません。

プロセスの最適化や効率化は自体は悪いことではなく、むしろ重要なことに時間を咲く為に大切な事です。一方で、マクドナルドのハンバーガーと違いUXの案件に全く同じものは1つもありませんし、何年も同じハンバーガーを出し続ければ良いものでもありません。常にゴールが変わるので、デザインの手法自体をデザインして更新できることが重要な資質になります。思考を止めると作り手余生が短くなってしまうので、自分の仕事の仕方は自分で考えるようにする、考えられる場所に身を置くのが大事かもしれません。


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