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しりあがり寿監修!『はなくそ時評 読者版』1コマイラスト・コンテスト 結果発表!

TV Bros. note版連載陣・しりあがり寿監修!
『はなくそ時評 読者版』1コマイラスト・コンテスト
結果発表!

1コマ漫画で世相を風刺する、しりあがり寿さんの連載『はなくそ時評 電子版』のコンセプトをそのままに、作品を読者のみなさまから募集いたしました当コンテストに、たくさんの応募、ありがとうございました! どれもいい味を出した作品ばかりで、選考委員長のしりあがり寿さんも、「選ぶの、本当に苦労した!」そうです。

そこで、選考結果の受賞作品発表とともに、選考の決め手になった部分や、今回惜しくも漏れてしまったいくつかの作品についての感想などを、しりあがり寿さんを担当する編集(浅)がインタビュー。しりあがり寿さんによると、本当は「どの作品もいいところがあって、全部にいろんな賞をあげたい気持ち」だそう。「じわじわくるで賞」とか「笑いは遅れてやってくるで賞」とか?

取材・文/浅井加枝子

1コマ漫画は、どこに目をつけるか、何を言いたいかを絵で説明することが大切

――今回のコンテストには、いろいろな雰囲気の作品が集まりましたね。

そうだね。タッチが手慣れた作品、そうじゃないけどなんだか気になる作品、じわじわくる作品、いろいろあって楽しめた! 1コマ漫画は限られたスペースで、言いたいことを文字だけでなく、絵でも表現できるのが楽しいよね。絵はうまいに越したことはないけど、うまいヘタに関係なく、印象に残ることが大切。そこでなんだか、見るたびに気になった作品『新しいフェチ』が金賞!

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金賞作品『新しいフェチ』
作/武智則浩さん

――これ、私もなんだか気になっちゃうんですよ。応募作品をまとめたファイルをモニターでスクロールしながら見ていると、なんとなくここで止めて何度か見ちゃうんですよね。通り過ぎたのに、振り返って2度見する感じ。

そうそう(笑)。何だろうね。絵がうまいというわけではないんだけど、なんだか見てしまう。1番「こういうことあるだろうな」っていうリアル感がストレートに表現されているよね。マウスガードをしていると、口元は見えているんだけど隠されているような、妙な気持ちになるのかな。

――シースルーの服みたいなドキドキ感ですかね。

この口元のボツボツが汗かヒゲかなあと。もしヒゲなら、マスクで隠しているようだけど、実はバッチリ見えているという妙な気持ち。これぞ“フェチ”でしょう(笑)。そういえば(浅)さんもマスクの下で、密かにヒゲを伸ばしていたんでしょ?

――ええ。人前でマスクを外してはいけないという、「新しい日常」を利用して、「女の人は放置するとどれくらいヒゲが伸びるものなのか」という実験をしました。とりあえず5カ月放置したんですけど、1番長いので約6ミリでした。

意外と伸びないもんだね。

――期待はずれでした。ヒゲを蓄えてみたかったんですけど。でも、一旦伸ばし始めると、ついクセでヒゲの辺りを手でソリソリしちゃうんですよ。これって…。

“フェチ”だろうね(笑)。そんなありそうだなーというリアル感と、真面目に考えはしない「ヌケ」感が、この『新しいフェチ』に入っているんだよね。社会のできごとを風刺しているんだけど、パターンに陥らないところがいい。大体、風刺をしようとすると、政治家とか大きな力に対してチクリと針を刺す、みたいなパターンが多いんだけど、これは誰にも刺してない。だけど今までありえなかったことが日常になっているという、風刺が効いているよね。なんかオリジナリティーがあって、そこがいいなということで、金賞!

――パチパチパチ。そして銀賞は『かつて炎上をおこしたおじさんたちのさらし場』なんですね。

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銀賞作品『かつて炎上をおこしたおじさんたちのさらし場』
作/たべあずちゃん

そうそう。分かりやすい題材だよね。罪を犯したわけじゃないけど、どーしようもない人たちを、晒し首のように公開してしまえという風刺に、思わず「うん、そうそう」とうなずいてしまう

――政治がらみじゃないところもいいですね。

そうなんだよ。政治がらみの内容だと普通になっちゃう。「からあげを手抜きと言ったヤツ」とか「母親ならポテトサラダくらい自分で作れと言ったヤツ」という、生活感あふれるクレーム野郎を晒したい、という感覚がいいよね。

――「ポテトサラダくらい」って言ったジジイは許せん! ポテトサラダって、サラダの中で1番手がかかるのに。作ったことないから言えるんだろ!

そうそう、そういう罪には問われないけど腹が立つ、ということが、この1コマでちょっと発散できるんだよね。

――晒し首にして(笑)。同じ作者の『コロナ禍のアマビエラプンツェル』も好きなんですけど。

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『コロナ禍のアマビエラプンツェル』
作/たべあずちゃん

うん。きれいにまとまっているけど、ちょっと情報を詰め過ぎかな。アマビエの立ち位置も分かりにくいね。アマビエじゃなくてもいいじゃん、という感じもする。

――なるほど。そして銅賞は『new normal』。これ、なんとなく1980年代ポップアートっぽい。

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銅賞作品『new normal』
作/のしお

トーンの使い方がそれっぽいのかな。この作品を見たとき、「いやこれ、リアル。さりげなさがステキ。ていうかこの漫画を機にリアルになるかも」って思った。

――食事するときとか、外したマスクの置き場に困るけど、こうすればいいんだ!って思いました。衛生面を考えなければ、ちょっとやってみたい。

一瞬オシャレに見えそうだよね。ポケットから折ったマスクがはみ出ているよりずっとカッコイイ。そういう風に、一瞬で納得させることも1コマ漫画では大切なんだよ。ということで銅賞。描き込み具合もちょうどいいかな。あまり描き込むと肝心のマスクが目立たなくなっちゃうから。

――そうですね。絵とタイトルだけでシンプルな構成もいいですよね。ところで、今回は残念ながら選から漏れたけど、気になったって作品はありますか?

どれも気になったんだけど、アマビエの微妙な立場がうまく描けている『自分の第二波が来てほしい人』はちょっと面白いなと思った。万年床のアマビエ(笑)。

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『自分の第二波が来てほしい人』
作/電柱治(でんちゅうおさむ)

――コンセントのひとつはテレビ、もうひとつはスマホ充電とか、芸が細かい! このアマビエ、ギターも弾くんですね。アンプもあるし、アマチュアのロックミュージシャンみたいな生活感。四畳半的な(笑)。

髪の毛がただのロン毛に見えて笑えた。ただ、もう現実では3波、4波になってきてしまったので、そこが残念だなと。「自分のパンデミックが~」とかにすれば良かったかな。

――タイトルも重要なんですね。1番『はなくそ時評』っぽかったのは『アメリカ大統領選』。トランプが金正恩に「こいつんち、ミサイル撃ってくれる?」とスマホで頼む1コマ。バイデンの顔がただの生気の無いおじいさん(笑)。

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『アメリカ大統領選』
作/バクダン

首までしか描いてないからなおさら生気が無いように見えて(笑)。もはや死相が出ている! 漫画としては面白いよね。こんな裏取引がリアルにあったらヤバイ。ただ、もう少し顔を似せて欲しいかな。政治がらみの風刺の場合、その政治家の顔がある程度似ていないと、意味が伝わりにくい。そこが残念だなと。

――確かに、バイデン単独で見ると、本当に誰だか分からないですね。営業時間短縮で「勘弁してほしいですよー」と言っている居酒屋の店長かもしれない。

いそう(笑)。本当に今回、みんな違う味を出していて、選ぶのに苦労したよ。このご時世なので、題材が「新型コロナウィルス」についてが圧倒的に多かったね。実は僕も京都国際マンガミュージアムで『マンガ・パンデミックWeb展』という、世界中から「コロナ」を扱ったマンガを集めた展示のアドバイザーを、安斎肇さんと一緒にしているので、よかったら見てください。Webなので京都まで行かなくても見ることができます。12/25(金)までだった予定が、期間延長になりました。いつまでかはちょっと未定ですけど。ところで、(浅)さんが気になった作品は?

――唯一、郵送で届いた作品なんですが、1枚の紙にぎっしりと描かれた「コロナ」の日常の絵です。タイトルが無いけど。これ、水彩ペンかな? 細かく彩色されていて圧巻でした。ただ、「1コマ漫画」ではないですね。「1枚画」です。

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『無題』
作/ツッキー

絵で表現する良さって、それぞれの関係性を俯瞰で見ることができるってことだと思うんだけど、これはそれを100点じゃないけど活かしているよね。ひとつひとつを見る楽しさは十分あると思います。挑戦しているよね。ただ、ちょっと詰め込み過ぎかな。

――たしかに。では最後に今回のコンテストへの感想などをお願いします。

僕はTV Bros.の創刊初期から連載させてもらっているけど、その長い歴史の中で、読者の作品を見るって初めてだったから、とても楽しかった。1コマ漫画は、うまいヘタじゃなくて、どこに目をつけるか、何を言いたいかを絵で説明することが大切なので、あまりパターンにとらわれないで、自由な感性で描くと、見る方も描く方も楽しいと思います。このコンテスト、第2回もあるかな?

――目指します! 


ということで、第1回『しりあがり寿監修!はなくそ時評 読者版 1コマイラスト・コンテスト』の受賞作は以下の作品に決定しました!

金賞作品『新しいフェチ』
作/武智則浩さん

銀賞作品『かつて炎上をおこしたおじさんたちのさらし場』
作/たべあずちゃん

銅賞作品『new normal』
作/のしお

編集(浅)特別賞『無題』
作/ツッキー

受賞された方には副賞を進呈いたします。また、応募作品は弊社に帰属いたしませんので、当コンテストでの受賞や受賞作品を周囲やSNSで大いにご紹介いただければと思います。惜しくも受賞には至らなかったものの、ほかにも多数の素晴らしい作品をご応募いただき、ありがとうございました。秀作の数々に、しりあがり寿さんも本当に選考に苦慮しておられました。

『はなくそ時評 読者版』1コマイラスト・コンテストの第2回、そしてTV Bros. note版連載陣監修のそのほかのコンテストもこうご期待です。

そして現在、TV Bros. note版では「あなたが選んだ2020年最高のカルチャー」を募集するコンテスト「マイベストカルチャー to 2021」を開催中!

コラム、エッセイ、マンガなど、作品の形態は問いません。募集内容の詳細や募集期間などは上記の記事に記載しています。こちらもぜひご参加ください!

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