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【無料記事】 TV Bros.総集編特大号 「ブロスは何を取り上げてきたのか?」 編集部員・前田隆弘 セレクト

※この記事は現在発売中の『TV Bros.6月号 総集編特大号』で掲載している記事を転載したものです。

TVBros.編集部員
前田隆弘 セレクト

’09年より、モバイルブロスのディレクターになったのをきっかけに、編集部員じゃないのに編集会議に参加。’11年より編集部に在籍。’11~’17年まで、ライターとして「ネット探偵団」を連載。



あまちゃんの夏が、もうすぐ終わる。

(2013年9月14日号)

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 ずっと思っていたことがある。新ドラマが始まるときはどのテレビ誌もこぞって取り上げるのに、なぜそのドラマが盛り上がってきたタイミングで特集しないのかと。スタート時はテレビ局も宣伝したいから、取材を取りやすい。でも語れる要素はとても少ない。本当にあれこれ語りたいのはドラマの終盤タイミングなのだ。
 それをやれたのが、最終回直前での『あまちゃん』特集だった。札幌滞在中、編集長から電話が来て「カラー化最初の号で17Pでやってほしい。ただし、もうキャスト取材や脚本家取材はできない」と言われたときは、むしろ「これで自由にやれる!」と小躍りした。電話を切ってそのままニコーリフレの居酒屋で全ページのラフを一気に描いた。内容は「連載陣が選ぶ名場面」「演出家インタビュー」「あま絵で振り返るあらすじ」「ドラマ史の観点からのレビュー」「音楽を語る対談」「小ネタ集」「コラム」、ラストは天久聖一さんによる「まだまだまだまだあまちゃんですが…」。制作者の視点も外部の視点もあり、ドラマ論もあればおもしろ企画もあるという、1つのドラマを多角的に掘り下げる特集になった。17Pどこを開いても記事がぎっしりで、編集長から「またすぐぎっしりにしてー」と言われたのだが、「他の雑誌で30P使う内容を17Pでやるのがブロスなのだ」という強い気持ちがあった。そして特にダメ出しもなく通してくれた。歴代の編集長によってグラデーションはあるけれど、特集の内容についてあまり口出しをせず、編集部員の「こういうふうにやりたい」という意思を尊重してくれるのがブロスなのだと思う(他の雑誌は全然そうじゃないと後で知った)。
 発売後。「好評でかなり売れているらしい」との話を聞いて、新宿の紀伊國屋書店に行ってみたら、立ち読みされまくってシワッシワのブロスが1冊だけ置いてあった。あれ、うれしかったなー。

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日焼けでなぜ悪い

(2013年11月23日号)

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 ブロスはサブカル雑誌だとよく言われる。しかし自分も含め、ほとんどの編集部員はそこまでサブカルを意識してはいないように感じる。実際は、自分が興味を持った対象について掘り下げていく…というのを各自やっているだけなのだと思う。そうやって生まれた特集の中には、ジャンル分け不可能なものも多く存在する。
 その1つが「日焼けでなぜ悪い」。「日焼けタレント、最近多いなあ」という日常の関心をきっかけに企画したこの特集は、天然派の宍戸開、日サロ派の名越稔洋に話を聞きつつ、インパクトのある日焼けタレントを独自に選出した「この日焼けがスゴい!2013」を掲載。写真が使えないのでイラストにしたのだが、結果的にめちゃくちゃインパクトのあるページになったと自負している。

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「『北斗の拳』や『聖闘士星矢』なんかでよく見るあの肩パッド、いったい何なんだ」という疑問から生まれた特集が「男達の肩パッド」。バトルマンガ、ロボットアニメに登場する肩パッドを紹介しつつ、その源流について考察する意欲的な内容になったと自負している。ちょうど肩パッドマンガの金字塔『北斗の拳(究極版)』が刊行されていたタイミングだったので、本の紹介を兼ねてケンシロウの画像が使用できたのも良かった。
「なんで俺ばっかり職質されるんだ」という日頃の憤りを込めて作った特集が「職質はつらいよ」。職質経験100回超えの達人・森翔太氏の職質史をひもとくインタビュー、警察向けの職質テキストを紹介するなど、職質に悩む全国民に有益な情報を提供する特集になったと自負している(ちなみに森氏は、のちに「テレビパン」という動画で「見た目が怪しくて逮捕される男」を演じた)。
 当時は「巻頭特集よりも話題になってやる」という気概を持って、こういうインパクトのあるノンジャンル系をやっていたのだが、価格の上昇に伴い「価格に見合う確かな価値を提供する」という方向に暗黙裡にシフトしていき、この路線は事実上の終焉を迎えることとなった。


金八から贈る言葉、金八に贈る言葉

(2011年3月19日号)

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 金八ファンの自分としては、「一度、武田鉄矢(以下敬称略)に取材してみたい」という思いがあった。だから、武田鉄矢が坂本龍馬を演じる『幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬』がDVD化されると聞いたときはもちろん取材を申し込んだ。いろいろ質問を考えて取材に臨んだのだが、彼は最初の質問で「いい質問! それを話したかったの!」と上機嫌になり、そこから30分、間断なく「坂本という男は…」としゃべり続け、そのまま取材時間が終わった。「すごい、『武田鉄矢』って感じがする」と感動したのを覚えている。
 それから数カ月後。武田鉄矢作品の本丸中の本丸、『3年B組金八先生ファイナル』が製作されると聞き、再び取材。マスコミ各社による合同取材の後、個別の取材だったのだが、ブロスの取材順は最後。つまり自分が「金八最後のインタビュアー」となったのだった。取材部屋に入ると「また君か!」と言われて感激。その後、緑山スタジオで撮影を見学し、休憩時間中に3年B組の教卓でこっそり記念撮影をした。そのインタビューが掲載されたのは、東日本大震災直後の号。雑誌の流通が大混乱し、販売不可能な地域が出たのはもちろん、肝心の『金八ファイナル』も延期に。報道と励まし番組しかない状況が続く中、震災後に初めて見た娯楽がその『金八ファイナル』。前半は爆笑し、後半は号泣しながら見入った。
『101回目のプロポーズ』が舞台化されたときは、編集部内で当然のように「前田さんが行くしかない」という空気になり、みたび取材の機会を得た。武田鉄矢&浅野温子というレジェンドコンビに取材できるのは、それまでとはまた違った感慨があった。時間をオーバーして打ち切られそうになると、武田さんが「もうちょっといいだろ」と言って続けてくれた。なぜか最後に3人で記念撮影することになったのだが、並んでいるときにヒソヒソ声で、浅野「今日の取材…良かったよ。ね?」武田「うん、うん」という会話をしたのは美しい思い出。

(了)

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