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『片桐仁(と太朗)のおしえて何故ならしりたがりだから』 ☞ しりたいテーマ「PADICO」

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この記事は、現在発売中のTV Bros.10月号に掲載されている連載「おしえて何故ならしりたがりだから」をもとに、誌面には未掲載のテキストや写真を加えた完全版となります。

撮影/石垣星児  編集/小倉隆司

もう紙の誌面に書くだけじゃ満足できない!
これからはウェブと動画の3方向で発信します!!

 どうも、久しぶりに「おしる(取材する)」ことになった、片桐仁です。3月の取材を最後に、テレビブロスが不定期号になっちゃったので(ていうか、もし連載が続いていたとしても、コロナの影響で行けなかったでしょうけどね…)、5カ月ぶりの復活となりました。今後は分かりませんが…。

 初めて読む方のために説明させていただきますと、この連載は“おしり”こと『おしえて何故ならしりたがりだから』と言いまして、僕が気になっていた場所へ取材に行ったり(例:屋内スカイダイビングなど)、工場見学をしたり(例:コリスのフエラムネ工場など)、アーティストや職人さんのアトリエで制作体験したり(例:塩水アートなど)といった内容なのですが、連載がスタートした2003年頃は、ブロスの誌面に記事を書いて、取材先を紹介することで満足できました。でも、紙の雑誌は文字数の制限もあるし、書ききれないことが多いな〜と思うようになっていったんです。自然な流れで。

 いまや(というか数年前から)誰もが自由に動画を公開出来る時代。何故雑誌の限られたページだけでそれを伝えようとしてるのか? 時代と合ってないぞ! と。工場の独特の機械が動いているところを見せたいじゃない! アーティストの超絶技巧(例えばこの前『情熱大陸』に出てた自在置物作家の満田晴穂さんだって10年前におしってたし)をムービーで見せたいじゃない!

 でもどうしたら…? どこかの制作会社にお願いする予算はないし…。そうだ! 俺にはステイホーム時に始めた家族でやってる片桐仁公式YouTubeチャンネル『ギリちゃんねる』があるじゃないか! つうことで、今回はブロスの誌面と、このnote版、そして『ギリちゃんねる』の3大メディアで、国内最大の粘土企業『PADICO=パジコ』さんの粘土工場に行きたいと思います!

 いや〜楽しみ。いつも子供向けのワークショップで使ってるハーティ粘土とか、どうやってあの発色とフワフワ感を出してるのか気になってたんです! そういうのは映像で見てもらいたいもの! どんな機械でハーティやモデナ(樹脂粘土)や、ラドール(石粉粘土)を作っているのかしら? 今度こそ分かりやすく伝えられそうだぜ!

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★ 今回おじゃましたのは、静岡県にある株式会社パジコの御殿場工場です。粘土やUVレジンを中心に、ニスや絵の具、造形素材の開発から販売までを行っています。片桐さんとは一緒に粘土のワークショップを開催したり、粘土作品を作るための材料を提供したりと、何かと縁の深い素敵な会社です。

長男・太朗も一緒に!
愛用している粘土の工場へ

 朝7時30分。向かったメンバーは、僕とテスト休み中だった長男・太朗16歳、ブロス編集担当の小倉、本気の取材の時にだけ登場するカメラマン石垣、そして『ギリちゃんねる』を編集している映像ディレクターの菊池(今回は映像用カメラマンとして)、運転手にマネージャー白石という、かつてない大所帯の男6人! 朝イチで”芸能事務所のタレント移動車として一番人気”こと、夢の高級ワゴン車アルファードのレンタカーに乗って、パジコの粘土工場がある御殿場へ。途中、待ち合わせで寄ったコンビニで、すでにテンションが上がっていた片桐父子&カメラマン石垣が「変な味だ!」とか言いながら、種類も量も多過ぎのエナジードリンクMonsterをがぶ飲み!

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 高速に乗る前から猛烈な尿意に見舞われるアクシデントもありましたが(モンスター級の利尿作用。遠出する時は飲むべからず!)、久々の連載再開でワーワーしゃべってるうちに、あっという間にパジコ御殿場工場に到着!

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画像5粘土で作られた富士山がお出迎え

 この工場では、様々な粘土の生産や、造形素材の研究開発、配送までを行っている、正にパジコの心臓部。入口には粘土で飾られた「片桐仁様 ご一行様」の黒板が! さすが粘土の会社! 駐車場で荷物を降ろしていると、「晴れていればすぐそこにでっかく富士山が見えるんですけど、今日は曇りで見えないな〜。いや〜残念」と、優しそうなおじいさん登場。…あれ? この『釣りバカ日誌』みたいな感じは、もしかして偉い人? 「社長の木村です」やっぱり! 社長の木村進さんでした!

画像5『釣りバカ』の”スーさん”のように気さくな木村社長

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 さっそく検温と消毒をして、建物の中へ。会議室に行くと『パジコ御殿場工場取材』と書かれた1日の行程表まで用意されているじゃありませんか!! こんなこと今までありました? いや、ない!

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 この日の大まかな行程としては、〈工場見学〉と〈作品制作〉。お弁当や休憩の時間まで細かくスケジュールが設定してあります。行程表に従って、まずは工場見学から。用意された白衣を着て、キャップをかぶり、作業靴(ちなみに『ミドリ安全』と『Z-DRAGON』という2種類の作業靴があって、太朗には『Z-DRAGON』が用意されていた…)を履いて、さっそく工場に向かいます。

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【工場見学 〜午前の部〜】

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 最初に見学したのは〈仕込工程〉。材料をかき回すための機械『混錬機(こんれんき)』に粘土(いつも粘土ワークショップで使っている、軽量樹脂粘土『ハーティ』のマゼンタを作る日でした!)の材料を加えてかき混ぜます! その量、なんと1トン! すると「片桐さん、上から見て下さい!」と木村社長。階段を上がるとドサ〜っと大量の粉が、巨大なかき混ぜ機に投入されます。そこにマゼンタの液体顔料が混ざっていって、どんどん粘土っぽくなってくる様は大迫力! 餅みたい! こういうの男子は好きよ〜! 当然太朗も大興奮! ハーティはこのマゼンタとイエロー、ブルーの3原色の発色が素晴らしいんです!

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 原料にはどんなものが入ってるんですか? 「樹脂、つまりプラスチックの粉が何種類かと、つなぎに使う天然パルプが主な原料で、全部で10種類ぐらい入ってます」と、社長が見せてくれたのが厚紙みたいなもの。これ何ですか? 「これがパルプです。もともとのバージンパルプは製紙会社と取引があったから、そこはずっと変わってないんです」あ、そうなんですか。

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画像88原料と顔料が混ぜられた粘土の途中段階

 ちなみに“パジコ“って、どういう意味なんですか? 「パジコは、僕が兄とやっていたパッケージデザインの会社『Packaging Direction Company』の頭文字をとってPADICOにしたんです」え? デザイン会社? 粘土関係なかったの? 「いえ、パッケージデザインの試作やモデルは、木型や粘土などで作ってたんですが、木型は費用が高いし、粘土はすぐに割れちゃう。それなら『自分たちで作っちゃおう』って、そこから粘土の開発を始めたんです」いやいやいや、普通始めませんって! スゲーな! 社長! 「でも粘土に関しては素人だったので、本業であるパッケージデザインの仕事が終わったあと、夜中に台所にあるサラダボウルを使っていろいろ混ぜたり実験してましたね〜」いや、誰かに頼むでしょ? 忙しいんだし…。すごいエネルギ〜。 

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 そして1970年、それまでの粘土といえば「割れる」「芯が入れられない」「重い」だったのが、この3つを解消した、モデリング用の石粉粘土『フォルモ』を発売。すると、デザイン関係の会社だけでなく、図工や美術の教育現場からの反響が大きく、全国の学校で採用されるようになったそうな…。もうまんま『プロジェクトX』じゃん!

 その後、プロ用の粘土『La Doll (ラドール)』も発売され、1980年代に人形創作ブームも起こり、人形の学校まで作ることになったらしいんですが、「社長、その辺で一旦お話を止めていただかないと、スケジュールが進みませんので」と、今回の行程表を作った宣伝部の村田さん。確かにまだ粘土の原料を混ぜてるところしか見てない! 粘土の柔らかさを測定する機械や高級樹脂粘土『MODENA(モデナ)』を作る時に原料を真空にする機械など、世界中でここにしかなさそうな機械も見せていただきました。

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【粘土制作 〜午前の部〜】

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 会議室に戻り、パジコさんの新商品「ふうりん&ねんどセット」で粘土風鈴を制作することに。このキットは、新型コロナウイルスの影響で外出自粛モードになり、自宅で過ごす時間が増えた子どもや大人たちに向けて、粘土の楽しさや作る喜びを届けるための『ねんどでスマイルプロジェクト』のために開発された新商品。セットの中身は、ハーティクレイホワイト50g×2個、ドーム芯材(風鈴のボディ)、ウィンドチャイム、吊り下げひも、という一式。これでお値段650円(税別)。これ、めちゃくちゃお得よ! だってハーティ粘土1個で250円するんだから!

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 いつもワークショップでやっているように、風鈴の枠に粘土を盛る前に両面テープを貼っていきます(粘土を剥がれにくくするため。このキットの場合は風鈴のドーム型芯材が網目になっているので、やらなくても大丈夫です)。続いて、風鈴の芯材に粘土を盛っていくんですが、普段ならカラフルなハーティ粘土を混ぜて、色の違いで見せる方法を使うのですが、今回のキットは白一色で作って、乾燥後、着色という流れ。いろんな色の粘土を作りながら考えていくいつもの方法が使えないので、太朗には結構難しいかな〜?

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 案の定「あ〜全然思いつかない」と、ため息。まぁいつものことなので無視して、自分の作品を作ります。数日前ロケに行った釣り番組で、フグを釣った時に思いついた、フグ形風鈴『ふぐりん』をね! いつもこのダジャレが思いつかないんだ。事前に思いついてよかった〜。

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 迷いなくフグのお腹の膨らみや特徴的な顔、各種ヒレなどを作っていて、「我ながら上手くて早いな〜」と悦に入っていると、みんなの目が僕を見ていない? あれ? 横の太朗を見てる? え? お前、何作ってんの?

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 太「いや、何も思いつかなかったから、とりあえず粘土盛ってたら、長い首と尻尾みたくなったから、あ〜ドラゴンかな〜?って思って」マジか!? 風鈴の形を生かした尻尾と首の配置! しかも俺より先に完成してるじゃん! 

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 これなんですよ皆さん! 粘土のいいところは! 直接指を使って形を作るので、作りながら考えることができるんです! 絵だと、頭の中で想像して、手を通じて筆を使ってキャンバスにのせていかないといけない。この段取りが面倒。にしても太朗、天才か? 俺が親バカなのか? あ、ちなみに風鈴に粘土を盛る作品、僕は12年前に作ってます!

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【昼食タイム】

 昼食は「政治家が食べるの?」というぐらいの、ま〜豪華なお弁当。社長や副社長も同じの食べてました。お肉、海老、天ぷら、お吸い物など。全員ペロリと平らげました。

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 午後、粘土を乾かしている間に再び〈工場見学〉へ。


【工場見学 〜午後の部〜】

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 『ニス』や『リキッドねんど』を製造しているのが〈液体工程〉。ここでは創業当時、50年前から使っているという御影石の擂潰機(らいかいき。深い碗形のすり鉢の中を、電動で駆動される3本のすり棒が旋転しつつ回転し、粗粒の鉱石などを摩砕して微粉とする電動乳鉢装置のこと)が今も現役で使われていました。他にも液体と固体を均一に混ぜ合わせるときに用いられる「撹拌機(かくはんき)」アナログなメカがいい!

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 続いてやって来たのは<包装工程>。

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 ここでは〈仕込み工程〉で出来上がった粘土を機械の中に入れて、きれいに伸ばす→伸びて成形された粘土を商品サイズにカットして、そのまま包装→ピッタリ包装されたパッケージの重さを計り、製造年月日をレーザーで印字→金属探知機で不良品がないかチェック→ダンボールへの箱詰め、という品質を保つための重要なラインに人の手が触れるのが、最初の機械に粘土の塊を供給する1人と、箱詰めの時に検品をするベテランのスタッフ2人という、計3人のみ。そのすべてが1本のベルトコンベアでつながっている。これぞメイド・イン・ジャパン! 粘土を投入するのも、高速で品質チェックをするのも、季節や湿度によって、投入の位置を変えるという話も、プロの技でした。

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 お次は、開発の部署へ。試作や研究をするだけあって、実験室のような佇まい。

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 ここには粘土を製造する機械の小型版があって、どんな粘土でも作れるようになっています。そして『マイセラ』という陶芸用粘土があり、世界で唯一、手で自由に制作した作品をそのまま焼成することにより、本格的な西洋陶芸作品に仕上げることの出来る白磁粘土があります。
 また、どこからか球体関節人形を持って来て「これ、うちが開発したモデリングキャスト。石膏の型に流し込むだけで、まるで焼き物のような仕上がりになるんです」と木村社長。え? どう見ても素焼きの人形にしか見えないんですが、これ焼いてないんですか?

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 木「焼いてないんです! これもいい粘土なんだけど、石膏の型があれば同じものを何個も作れるから、片桐さんも作ってみませんか?」と、売り込んでいただきました! それこそ、12年前に作った粘土の風鈴とか、これで複製できれば、粘土と違っていい音が鳴りそうですし、ものすごく興味ありますよ! というか、マイセラやモデリングキャストも含めて、使ったことない粘土がいっぱいあるので、“パジコの色んな製品を使って、片桐家で作品を作る番組“やりませんか? 相性がいいと思います! と、こちらも負けじと売り込んできました! ええ、またしても開発室の皆さん置いてきぼりでしたけれど!

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画像59宇宙へ行った粘土こと『ハーティソフト』は、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の船内で、宇宙飛行士が初めて人形(ひとがた)作りに挑戦した時に使用された


【粘土制作 〜午後の部〜】

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 会議室へ戻り、午前中に形を作った粘土が乾いたので、パジコのアクリル絵の具『プロアクリックス』で色塗り。…の前に、「これが兄の、パッケージデザイン」と持ってきてくれたのが、社長のお兄さん、木村勝さんのパッケージデザインが収められた作品集。デザイナーを志すきっかけとなった、進駐軍が捨てたタバコ『ラッキーストライク』のパッケージを模したブックケースといい、木村社長がベルコモンズにオープンした日本初のギフトパッケージ専門店の話、ラドールを使った人形コンテストの審査委員長をしていた話。それをニコニコ顔で話す木村社長。いいな〜。すごいバイタリティーだな〜。と、貴重なお話に感心しきり。

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 「片桐さん、手を動かして下さい。塗りましょう!」と、またしても広報の村田さんに促され、『ふぐりん』を塗ります。さすがにアクリル絵の具の塗りは、太朗より一日の長がある僕のほうが上手かった。実際に見たフグのクリーム色のお腹から、だんだん深緑や紺色になっていく背中の部分と、あっという間に終わってしまったので、色数を増やしてポップにしよう! と、原色で点描を始めたのが失敗だったのか…?

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「片桐さん、せっかく形はかわいかったのに、また気持ち悪い感じになってますよ」と、編集の小倉に指摘された頃には毒々しいフグがそこにありました。いいんだよ、これで! フグには毒があるんだから! 

画像85かわいかった頃の『ふぐりん』

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 一方、マイペースな太朗は、

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