ナウなヤングだったあなたに贈る…「令和」の時代に「昭和」を感じられるラジオ『大人のラジオバラエティ ご昭和ください』
『大人のラジオバラエティ ご昭和ください』(山口・KRYラジオ)は、その名の通り昭和の香りを漂わせている、知る人ぞ知る人気番組だ。「TV Bros.2月号 ラジオ特集号」では西日本のオススメ番組として解説記事を掲載したが、それだけでは番組の魅力を伝えられないということで、パーソナリティーの山根由紀夫と高橋裕アナウンサーに取材を敢行。令和の時代にありながら、心地よい昭和臭が駄々洩れのトークをどうぞ。
取材・文/やきそばかおる
<プロフィール>
山根由紀夫(やまね・ゆきお)●昭和34年山口県生まれ。昭和の事象はもちろん、音楽、映画などのカルチャーにも幅広く精通。本番組のほか、『大人の音楽堂~ういろう、ひねってみました』(山口・KRYラジオ 毎週土曜 後9・30~10・00)などに出演。
高橋裕(たかはし・ゆたか)●昭和46年東京都生まれ。平成6年にKRY山口放送に入社。かつて『ズームイン!!朝!』(日本テレビ系)ではリポーターとして山口の情報を全国に発信し、プロレス好きが高じて『全日本プロレス中継』(同系)で実況を担当するなど活躍。現在は夕方のワイド番組『熱血テレビ』(KRY山口放送 毎週月~金曜 後4・50~5・53)を担当。
<番組情報>
『大人のラジオバラエティ ご昭和ください』
山口・KRYラジオ 毎週日曜 前11・30~後0・00
出演 山根由紀夫(かぐせん) 高橋裕(KRYアナウンサー)
●古き良き「昭和」にスポットを当て、昭和を彩った事象を振り返り、その良さを改めて感じる番組。昭和生まれならさながらタイムスリップを、平成生まれなら今も生きる昭和の発見を、令和生まれなら情操教育として楽しめる。
「昭和の“ばね”」「昭和の門限」「昭和のかまぼこ板の再利用」…ニッチすぎるテーマこそ番組の魅力
懐かしい話が満載の『大人のラジオバラエティ ご昭和ください』(山口・KRYラジオ)は2012年4月スタート。オープニングの「昭和生まれのあなた、平成生まれの『ヤング』なあなたも、どうぞ、ご昭和下さい!!」という決まり文句で昭和にタイムスリップ。音楽、映画など、さまざまなカルチャーに詳しい山根由紀夫(通称“かぐせん”)は昭和34年生まれの61歳。高橋裕アナウンサーは東京都東村山市出身で昭和46年生まれの49歳。メールを紹介する時はリスナーが昭和何年に生まれたのかも、あわせて紹介している。
注目したいのはこの番組のテーマのニッチ性だ。ラジオ番組の投稿テーマといえば「好きなおでんの具」「最近買ったもの」などの定番モノがあるが、この番組は全てが“昭和くくり”だ。「昭和のジュース」「昭和の自動販売機」から「昭和の“ばね”」「昭和の門限」「昭和の金網」と、午後のワイド番組では採用されないようなテーマも選ばれる。「さすがにこのテーマではメールが来ないのではないか?」と思うような内容でもたくさんのメールが届くという。
高橋 番組の開始当初は「昭和の遠足」とか「昭和の給食」みたいに書きやすい内容のものが多かったですよね。
かぐせん いや、2回目の放送のテーマからして「忍者」でしたよ(笑)。
高橋 あ、そうそう!「仮面の忍者 赤影」もあったから!
ニッチといえば「昭和のかまぼこ板の再利用」というテーマで募集したこともあった。
かぐせん 高橋くんは東京の人だから、このテーマだとメールが来ないんじゃないかと言ったんですけど、山口県はかまぼこ文化です。それでたくさんのメールが届いて3週連続で放送しました(笑)。
高橋 リスナーさんからは「タンスの下に挟んで傾きを直す」とか「モールス信号を打つスイッチとして使う」とか「虫のお墓の墓標」とかいろいろと寄せられました。学校によっては海の授業があって「命札」としても使われるらしいです。かまぼこ板に自分の名前や住所、クラスなどを書いておいて、海に入る時に先生に預けます。海から上がって札を受け取るんだけど、その札が残っていたら一大事というわけです。そんな話が出てくるんです。それでそのあと、長門市で行われた公開生放送でも再び「かまぼこ板の再利用」で盛り上がったんです。長門市はかまぼこの産地ということもありまして……。
意外なテーマで盛り上がった例といえば「昭和の豪華・ゴージャス」をテーマにした時もたくさんのメールが届き、3週にわたって放送された。
高橋 「豪華」と言っても、自分の家が金持ちだというよりは、金持ちの知り合いのエピソードとか、金持ちの人への嫉妬がほとんど(笑)。そもそも僕らも裕福というほどではなかったし……。例えば、金持ちの由美ちゃんに招待されて家に行ったら、ホテルのようなドアの玄関があって、中に入ると大きな卓球台があって驚いた……という話など、いろいろな内容のものが届きました。
かぐせんの昭和の記憶と瞬発力
2人とも“昭和生まれ”だが、12歳離れている。しかし、その差があるおかげで話の守備範囲が広がるそうだ。
高橋 かぐせんさんが“僕が好きな時代”を経験しているのも大きいです。あと、出身地が違うことも大きいですね。僕は東京の出身でかぐせんさんは山口県出身。文化の違いもあるし、経験してきたことが違うからいろいろな話を膨らませることができます。
さらに特筆すべきは、かぐせんの記憶の良さ。高橋アナがメールを紹介する度に、メッセージに書かれている内容に反応してかぐせんの記憶の扉が開かれる。
高橋 「昭和の氷」をテーマにした時は井上陽水の『氷の世界』をかけたんですけど、事前に知らせているわけではないのに、かぐせんさんの記憶の扉が一気に開いて、陽水さんに関するとっておきの話が繰り広げられました。
かぐせん ジャンルは違うけど、アントニオ猪木が初めて「卍固め」をやった瞬間をテレビで観たのも覚えてます。当時は銭湯に行ってたので、子供が集まってみんなで再現してたんですよ(笑)。まだビデオが発売されるずっと前だったから「ああでもない。こうでもない」と思い出しながら技を再現してました。(編集部注:卍固めの初公開は昭和43年頃とされている)
――かぐせんは、なぜそんなに色々なことを覚えてるんですか?
かぐせん 僕は高度成長期のあとに生まれたから、毎日が新鮮だったんです。いつも面白いことが起きていたから覚えてるのかもしれませんね。
高橋 収録時、かぐせんさんは出たとこ勝負ですが、僕はメールの下読みをして出来事の事実関係だけはリサーチします。例えば、何年にそれが起きたとか。
かぐせん 僕は記憶だけでしゃべってます(笑)。
高橋 僕はその瞬発力を求めてます。
「おじいちゃん達が中学生みたいに笑っている笑い声にひかれて、自分も聴くように」
いろいろな人の懐かしいエピソードが次々と飛び出す番組だ。ある人はこの番組のことを「公開タイムマシン」と表現した。「番組を聴くとあの時代に帰ることができる。今、つらい日々を送っている方々にとって唯一の光明である」と絶賛したそうだ。
高橋 訪問介護の仕事をしている人からは「移動中におじいちゃん達が聴いていて、中学生みたいに笑っている笑い声にひかれて、自分も聴くようになった」というメールが届きした。
かぐせん この番組を聴くと現実逃避できるという方もいらっしゃるのかもしれませんね。
高橋 また、話のタネにもなるようで、親子で聴いている方からは、こたつが赤外線の光で赤かったことを子供が知ってビックリしていたというエピソードも届きました。ラジオの向こうでそんな光景が広がっているんだと思いました。
radikoの登場で近年は全国どこからでもラジオ番組を聴くことができるようになった。2020年12月には嬉しい出来事があったそうだ。
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