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【5日連続!佐野元春40周年記念特集】 DAY1:1992年TV Bros.掲載・アルバム『スウィート16』発売記念インタビュー再掲

1980年の鮮烈なデビューから今日まで、しなやかな感性と強靭な意志から生み出される瑞々しいロックンロールで日本のロックを更新し続けてきた佐野元春。
デビュー40周年を迎え、10月7日にはこれまでのキャリアを総括するベスト・アルバム2作品『MOTOHARU SANO GREATEST SONGS COLLECTION 1980-2004』、『THE ESSENTIAL TRACKS MOTOHARU SANO & THE COYOTE BAND 2005 - 2020』をリリースする佐野元春を、TV Bros. note版では5日連続で大特集する。

【佐野元春40周年記念 ベスト盤2パッケージ 2020年10月7日 同時発売】

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第1回の今日は、今から28年前の1992年、アルバム『スウィート16』発売時にTV Bros.が行なったインタビューを、さらに明日からは最新インタビューを連続でお届けする。脂の乗り切った状態だった1992年、そして円熟期を迎えた現在の佐野元春へのインタビューから一体何が浮かび上がるだろうか。
さぁ、“佐野元春ウィーク”のスタートだ!

【佐野元春ウィーク:DAY1】

佐野元春インタビュー(TV Bros.1992年8月1日号掲載)
取材・文/染野芳輝
(当時掲載したインタビュー記事を本人の監修の元、加筆修正しています)

1日目_Sweet16ジャケ写

『スウィート16』1992年発売

“僕の曲作りはパイ作りと同じ、
幾重にもいろいろなイメージが重なっている”

佐野元春が久々のオリジナル・アルバム『スウィート16』を出した。久々といっても前作からは約1年8ヶ月ぶり。大した時間じゃない。しかし去年1年間、彼は表立った活動を休んでいた。その空自期間に届けられたのが再録音を含むバラード集『スロー・ソングス』だったというのも、なにやら不在証明を突きつけられたようで……。ライオンの牙は欠けてしまったのか? そんな穿った見方だってできたのだ。

「プライベートで曲を書いていたけれど、父親を亡くして約6ヶ月間、音楽の現場から離れていた。その後、ツアーに出て身体と心が回復した。ツアーから戻って1ヶ月でアルバムを完成させた」

このライヴは、彼が背景に抱えているものを含め、今、何をどう表現するかが明確にされたものだった。それは、こういうことだ。

「今まで様々なサウンド・スタイルを試してきたけれど、自分のルーツは60年代、70年代のロック音楽だ。ライブではそこに正直な演奏をするのが潔いことだと気づいた」

新旧の楽曲に施された変化に富んだアレンジメント、そして全体に満ち溢れた勢い。これはニュー・アルバムに繋がるものなのか? 以下、このアルバムを中心に話を聞く。

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――『スウィート16』は、いきなり1曲目の「ミスター・アウトサイド」から勢いに満ちた激しいビート! ちょっと驚いたんですよね。ある意味ではマンチェスター一派に代表されるような今の時代感覚を取り入れたビートとも言えるような気がするんですが。

「何故このビートを使うのか、自分の中でははっきりしていた」

――ビートについての考え方ですけど、取り入れるかどうかはともかく、最新のビートを常に意識してはいるんでしょう?

「意識している。メロディーは普遍だけどリズムは流行がある。前のアルバム『タイム・アウト!』で僕は完壁にアナログのレイドバック人間になってしまっていた。あまりにも気持ちがいいから陥ってしまう罠なんだな。でもやはり、いつもモダンなビートに注意を払わなければいけない」

――取り入れるのではなく、料理する?

「うん。うまく料理しないといけない」

――ところで今回のアルバムでは、ビジュアル的にチェリーパイがこれでもかというくらい使われてる。これの意味するものは?

「僕の曲作りはパイ作りと同じ。幾重にもいろいろなイメージが重なっている。みんなが美味しがって食べてくれればいいんだけど……」

――では、アルバム・タイトル曲でもある「スウィート16」のパイ皮をめくってみると?

「あの曲は簡単に言えばバディ・ホリー。僕の大好きなバディ・ホリー。シンプルなロックンロール。16歳から現在まで、その間に失ったことについて書いてみたいと思ったんだ。美味しいチェリーパイのような形で。この曲が出来た時はとても嬉しかったよ」

――なるほど。幾重にも重なったパイ皮と甘いチェリーで出来たパイ自体を味わうべきなんだろうけど、僕のような立場の人間は、パイをガブッとやった後に、そのパイ皮の一枚一枚をめくって確かめようとする。そんなことしてくれるな、なんて思いません?

「(笑)。いや、そんなことはないよ。直感ですべてが分かってしまうような作品はつまらない。どんなに単純な歌でも、想像力を働かせると、物凄く深い意味を発するポップ・ソングというのがある。そのほうが魅力的だよ」

“クリスマス・プレゼントにリボンをかけるように、
僕は自分で書いた曲を美味しいチェリーパイの形にしてみんなに渡す”

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